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[コラム]産業のコメ、第2黄金期は到来するか―プリンテッド・エレクトロニクス分野の国家プロジェクト創出に期待―
2010年03月11日 15:42 更新
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出典:みずほ情報総研ホームページ(http://www.mizuho-ir.co.jp/)「コラム/みずほ情報総研(株) サイエンスソリューション部 佐藤 智彦 2010年3月9日付」より
産業のコメの不振
半導体産業が“産業のコメ”と呼ばれ日本の黄金産業であった1980年代から約30年、わが国半導体産業の置かれている状況は非常に厳しくなっている。
90年代以降、韓国、中国、台湾といったアジアの新興国にコスト競争で敗北し、そのシェアを大きく奪われてしまった。さらに言えば、これらの国々は、他国の技術やノウハウを急速に吸収するとともに、国家の戦略的な産業育成によって、もはや新興国と呼ぶべきではない技術水準に到達している。アジア諸国に対してコストでは対抗できず、技術優位性も薄れつつあるわが国の半導体産業においては、新たな高付加価値アプリケーションの創出が求められている。
なぜ半導体産業においてわが国はアジア諸国に対して技術優位性を失ったのであろうか。その一因には、技術の流出が挙げられる。
一般に半導体は、シリコン基板上に微細加工技術でトランジスタやダイオードなどを作り、それらの間を銅などの金属で配線することで、電子回路としての機能をもたせている。半導体の製造プロセスにおいては、微細加工を行う際の真空加工技術やシリコン基板上に均質な膜を形成する薄膜形成技術が必要となるが、製造技術の効率化が進み、技術やノウハウは製造装置にその多くが組み込まれているため、技術が流出しやすい状態になっている。
また、安価な人件費を求めてアジア諸国に先進国が製造の軸足を移したことも、製造装置に含まれていない技術やノウハウの流出に繋がっている。技術やノウハウの流出は、コスト競争力に劣るわが国では避けなければならない課題である。
打開策として注目される“プリンテッド・エレクトロニクス”
このような状況を打開するための術はあるのだろうか。先に述べた新たな高付加価値アプリケーションの創出、技術やノウハウの流出防止と並んで、有機半導体デバイスが今注目を集めている。有機半導体デバイスは「折り曲げられ」「薄く」「軽く」「割れにくい」という特徴を持ち、電子ペーパーや有機EL照明、有機ELディスプレイ等の研究開発や製品化が行われている。
そして、これらの製品を安価に製造する技術として“プリンテッド・エレクトロニクス”が注目されている。プリンテッド・エレクトロニクスは、プラスチックのような有機半導体基板に印刷によって半導体の回路形成を行う技術である。製造工程がこれまでのものと比較して大幅に減らせるため、人件費の安価なアジア諸国で生産するメリットが薄まり、輸送費等を勘案すれば、国内生産でも十分に競争できると考えられる。また、印刷での回路形成を行った後に行われる「焼成工程」において、絶縁膜材料の添加剤や配線の金属インクに含まれる分散材、保護膜を溶かし込んだ溶剤などが消失する。「国内で生産しやすいこと」と、「製品から製造ノウハウを特定しづらいこと」の2点により、印刷での回路形成を行うことが技術やノウハウの流出の防止に繋がる。
また、有機基板を用いることで、これまでにないシートデバイスを生み出すことが可能であり、ペンサイズに収納できるディスプレイやシート状のパソコンなど、各社ともに独自性を活かしたデバイスを模索している段階にある。
第2黄金期に向けて、国家プロジェクトの創出を
では、わが国のプリンテッド・エレクトロニクスに対する取り組み状況はどうなっているのであろうか。わが国は、材料技術においては現在も世界のトップシェアを誇っており、有機半導体材料や金属インクにおいても高い技術水準にある。また、ディスプレイ等のデバイスにおいても多数のグローバルカンパニーを有し、各社ごとに精力的な取り組みが行われている。しかしながら、これらの研究開発は企業レベルでの取り組みが中心であり、国家として当該技術で産業振興を行う状況にはない。
一方、欧米や韓国、台湾においては国家を巻き込んだ取り組みが多く見られる。軍事技術への適用も見据えて重点投資を行っているアメリカ、RFIDの実用化を国として推進しているドイツ、サムソンに重点投資を行い有機ELディスプレイの開発を狙う韓国、政府系研究機関ITRIを中心に他国企業と積極的に当該技術開発に取り組む台湾などが特徴的な事例である。
わが国が、企業レベルでの取り組みを脱却し、欧米やアジア諸国に対して優位性を見出すために取るべき対処は何であろうか。一つの方向性として、プリンテッド・エレクトロニクスの要素技術開発をターゲットとした国家プロジェクトの創出があると筆者は考える。要素技術がターゲットとなるのは、わが国がアメリカのように軍事に絡め莫大な投資を行うことも、韓国のように特定の企業に集中投資を行うことも困難であり、国家プロジェクトの成果は広く国内企業の便益となることが求められる社会であるためである。
世界的な不況が広範な産業に伝播しつつある現在、企業の研究開発投資意欲は停滞状況にある。されど、次世代デバイスで半導体産業の第2黄金期を迎えるためには開発の手を止めることはできない。環境技術に過度の注目が集まっている状況ではあるが、今こそ、国家が中心となってものづくり産業の復興に乗り出すべき時期であろう。
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