2010.07.12 「最大のデフレ要因」
―先進国と途上国との物価収斂―
OECDが発表する加盟国のCPIは、このところ極めて安定している。変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数は米国、欧州は1%を割り込み、日本は17カ月連続のマイナスである。財政赤字問題と絡む供給過剰状態が背景にある事は言うまでもないが、他方でグローバル化の進展による新興国との物価の収斂がある事を忘れてはならない。その証拠に物価の絶対水準が相対的に低いBRICsなどでは、逆にインフレが加速しているのである。
この価格収斂はモノやサービスに限らず、土地や賃金についても発生している。7月1日に相続税や贈与税の算定基準になる路線価格が発表された。7月1日付け日本経済新聞(夕刊)によれば、「全国約38万地点の標準宅地の平均額は(1平方メートル当たり)、前年比11,000円安い126,000円で2年連続の下落。下落率は8.0%で前年の5.5%から拡大した。圏域別の下落率は、東京圏で9.7%、大阪圏で8.3%、名古屋圏で7.6%と三大都市圏での下落率が拡大している。」と報道している。モノやカネと異なり、国境を越えての移動が不可能な「土地」についても、価格の収斂が発生する。土地が高すぎると、企業は資金と技術を土地の安い国に移動させ、生産活動を行うことになるからである。
他方、地価下落メリットも大きい。消費者の家賃や住宅価格が低下するからであり、賃借料が高すぎるため出店をためらっていた内外の進出が始まっている。ユニクロやABCなどの銀座進出はその好例である。
最も注意しなければならないのは、この平準化は賃金にも適用されることである。
デフレが問題になっているが、賃金の上昇が期待できない消費者にとっては、物価の下落は福音であり、海外製品や海外旅行の費用が安くなる円高も大歓迎なのである。
このような経済環境下で、従来と同様の財政支出を増加させたことが、各国が財政赤字を抱える最大の原因と考える。デフレが大きな問題になっているが、このような環境下での金利引き下げ効果は限定されている。家計も企業もそして国もこの世界的な潮流を十分認識して対応することが肝要である。
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真野 輝彦(まの てるひこ)
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株) 客員研究理事
1956年 東京銀行入行。
フランクフルト支店為替課長、本店為替部次長、スイス東京銀行総支配人、
丸の内支店副支店長、調査部長を歴任。
1985年東京銀行取締役、1987年東京銀行参与。
1996年合併に伴ない、東京三菱銀行参与。
1999年より現職
日本商工会議所・東京商工会議所 政策委員会委員
国策研究会 評議委員会議長
日本国際フォーラム 政策委員
読売国際経済懇話会 特別会員
International Club of Bank Economists会員
国際通貨研究所 評議員
聖学院大学・大学院 教授
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