仏銃撃事件ブーメディエンヌ容疑者、どうやってシリアに入国したのか

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ブーメディエンヌ容疑者

アヤット・ブーメディエンヌ容疑者がトルコからシリアに1月8日入国したと見られると、トルコのメブリュト・チャブシオール外務大臣が声明を発表した。8日はブーメディエンヌ容疑者のパートナーのクリバリ容疑者(32歳)がパリ近郊で女性警官を射殺した日である。9日、クリバリ容疑者はパリ東部のユダヤ系食料品店で数人を人質に立てこもり事件を起こし、その後警官が突入しクリバリ容疑者は射殺された。

写真: ゲッティイメージズ

先週パリで発生した一連の銃撃事件に関与した容疑者の一人が、トルコのイスタンブール経由でシリアに入国したと、トルコの外相が12日に明らかにした。アヤット・ブーメディエンヌ(Hayat Boumeddiene)容疑者(26歳)は国際手配中である。ブーメディエンヌ容疑者がシリアに入国したとすると、シリアは当局の監視が行き届かず、隣国のイラク、ヨルダン、レバノン、トルコへの入国経路もあるため、同容疑者が捜査を逃れる選択肢を得たことになる。捜査当局にとってブーメディエンヌ容疑者逮捕は難しくなったと見られている。

メブリュト・チャブシオール(Mevlut Cavusoglu)トルコ外相の話によると、ブーメディエンヌ容疑者は8日、シリアに入国した。8日は、彼女のパートナーのアメディ・クリバリ(Amedy Coulibaly)容疑者(32歳)が、フランス、パリ近郊モンルージュで女性警官を射殺した日である。この事件は8日、仏風刺週刊紙シャルリー・エブド(Charlie Hebdo)本社が銃撃された事件に続き発生した一連の銃撃事件のうち、2番目の事件であった。9日、クリバリ容疑者はパリ東部のユダヤ系食料品店で数人を人質に立てこもり事件を発生させた後、警察の突入で射殺された。マニュエル・ヴァルス仏首相は「引き続き捜査する」とBFMTVに語ったが、ヴァルス首相がブーメディエンヌ容疑者やそれ以外の容疑者について言及したかどうかは明らかではない。

「携帯電話の通信記録により、この事実を知った」とトルコのチャブシオール外相はトルコ公式通信社のアナドル通信に語った。「求められていたわけではないが、われわれはこの情報を得ると直ちに仏当局にも知らせた」と述べた。しかしブーメディエンヌ容疑者の携帯電話の利用は、彼女がシリアに入った後は減った可能性が高い。

シリア入国後のブーメディエンヌ容疑者は、イスラム勢力の拠点に滞在している可能性が高いため、同容疑者のコミュニケーションを追跡することは困難であるとみられる。シリアにおけるアルカイダから分派したアル・ヌスラ戦線は、シリア北部の町アレッポ郊外に拠点を置く。また、イスラム過激派組織ISIS(またはISILとも呼ばれる)も、シリア北部に拠点を持ち、その本拠地はシリア北部の町でアレッポから東へ160kmのラッカの町にある。アレッポとラッカの町、双方ともに戦闘によって通信インフラが破壊された。このため携帯電話による通信は減少し、インターネットによるアクセスが所々で行われている。

トルコ当局は12日、ブーメディエンヌ容疑者が1月2日にスペインのマドリードからトルコのイスタンブールに飛行機で到着し、イスタンブールのホテルに宿泊した後、1月8日にシリアに入国したことを明らかにしたと米NBCニュースは報じた。同容疑者はイスタンブールのアジア側のサビハ・ギョクチェン国際空港に到着した。

ブーメディエンヌ容疑者がイスタンブール経由でシリアに入国するには複数の方法が考えられる。最も可能性の高いシナリオは、他のイスラム過激派の新兵がこれまでとってきた経路と同様にトルコを経由してシリアに入る方法である。シリアのイスラム組織に参加するために外人戦闘員はトルコを経由してきた。それはシリア紛争が発生した3年以上前から、多くのジャーナリスト、援助関係者、穏健派の反政府勢力と同様である。 ブーメディエンヌ容疑者は、トルコ東部の町まで車、あるいはバスで行き、トルコ南部の町、アンタキヤかガジアンテプでインターネットを介して知り合った人と会った可能性がある。この2つの都市はどちらもシリア国境に近く、ここには多くの難民が暮らしている。そこから、同容疑者は北部の反政府軍によって支配されているチェックポイントか、または警備が甘いチェックポイントを通ってシリアに入国したと思われる。

トルコとシリアの国境には2つの公式入国所がある。トルコ南東部のバブ・アル・サラマ(Bab al-Salam)国境検問所とバブ・アル・ハワ(Bab al-Hawa)国境検問所は難民と援助従事者の行き来が最も多い。

ブーメディエンヌ容疑者がバブ・アル・サラマ検問所を通過したとすると、ここは最大規模の反政府勢力である自由シリア軍によって統制されているため比較的容易であったはずだ。この検問所には、偽造パスポートを検査するスキャナやハイテク装置はない。ここでのチェックシステムは、反乱軍が検問所を通過する人々とコミュニケーションをとり、「危険」とみなされた者の名前を書き留めているだけである。

バブ・アル・ハワ検問所はアルカイダ系反政府武装組織アル・ヌスラ戦線によって支配されている。ブーメディエンヌ容疑者がこの検問所を通ってシリアに入国した場合、発覚することなくシリアに入国できただろう。

第三の選択肢がある。公式検問所を通らずに国境を通過する、つまりシリアへの違法入国である。これを実際に行う場合、ブーメディエンヌ容疑者は密入国の手配者を雇う必要がある。

一旦、ISIS戦闘員などがシリアに入国すれば、彼らはISISまたは他のイスラム過激派組織の拠点に配置される可能性が高い。戦闘員やその支援者が戦闘地域に配置された場合、その後どうなるのかは、あまり明らかにされていない。 ブーメディエンヌ容疑者がシリアに滞在することを決定した時点で、おそらく彼女は新たにSIMカードを購入した可能性が高い。SIMカードは携帯電話の契約情報が記録されたICカードで、SIMカードを携帯端末に差し込むことで端末を利用することができる。彼女はこれを使って複数の通信を行う可能性がある。米国やその同盟国はシリアでISISに関する情報を収集を行っており、ブーメディエンヌ容疑者の居場所についての情報を得る可能性はある。

しかし、もしブーメディエンヌ容疑者がシリアに入国したなら、彼女が再び移動するのは容易である。行き先はおそらくイラクである。シリアとイラクの国境の一部はISISが支配している。同容疑者がシリアからさらに別の国へと移動した場合、その国が彼女の入国を察知できるかどうかは治安部隊の活躍にかかってくる。しかしシリアと国境を接する殆どの国がISISから身を守るために既に超過勤務を行ってきており、彼らの力で同容疑者の捜査を開始する手段はない。

*この記事は、米国版 International Business Times の記事を日本向けに抄訳したものです。(原文: Erin Banco記者)「How Hayat Boumeddiene Entered Syria And Is Avoiding Detection」)