サムスンペイ対アップルペイ対グーグルウォレット: サムスンが決済サービスで有利な理由

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モバイル決済

モバイル決済には、アップル、サムスン、グーグルと各システムが入り乱れている。

ロイター

「好きな機種を選んでください」。1日、韓国のエレクトロニクスの巨人であるサムスン社が新型スマートフォン「ギャラクシーS6」と「ギャラクシーS6エッジ」を公開した。ギャラクシーS6はサムスン電子の主力スマホ「ギャラクシーS」シリーズの6番目のモデルである。両モデルには同社独自の決済サービス「サムスンペイ」が搭載されている。サムスンペイの開始により、同社はこれまでより簡単にスマートフォンで支払えるとして、アップル(Apple)とグーグル(Google)が競合する決済システムに参入する。
 
サムスンのギャラクシーS6には有利な点がある。その磁気送信技術で、携帯電話はクレジットカードのように使えることになる。つまり、より多くの取引が携帯電話による決済で行われることを意味する。
 
アップルペイはデジタル決済の1%を占め、幸先の良いスタートをきり、世界中にいる数百万人のアイフォーン(iPhone)ユーザーによって定着する利点があるとITGリサーチは報じた。グーグルが開発するモバイル向けOSであるアンドロイド(Android)にとっては厳しい。アンドロイド搭載の携帯電話の最大メーカーであるサムスンは、サムスンペイを同社のデバイスにプリインストールしている。ユーザーはグーグルが提供している電子決済サービスのグーグルウォレットを選ぶこともできる。
 
モバイル決済市場は2014年に500億ドル(約5兆9800億円)市場に成長し、2019年までに1,420億ドル(約17兆円)に到ると調査会社フォレスターは予想している。しかし、スマートフォンユーザーは何を使用するのか、どのようにして決めればよいのだろう? 以下に特長を挙げた。
 
■サムスンペイ
 
サムスンはギャラクシーS6とS6エッジを発表したが、両機が搭載するサムスンペイはNFC(近距離無線通信)だけでなくMST(磁気ストリップ保護送信)とバーコード方式に対応する。MSTは、まず韓国と米国で適用されるが、既存のクレジットカード端末でモバイル決済ができ、決済時に臨時の番号を使ううえ、取引情報が端末に残らない。MSTは先月サムスンがモバイル決済技術の米ループペイ(LoopPay)社を買収したことでも話題になった。
 
サムスンペイではNFC決済機能「Tap & Pay」が可能になる。また、サムスンペイは型落ち品でも、従来の磁気ストライプによるクレジットカードの読み取りを行うため、MSTが使用可能である。これにより全世界で3,000万人がユーザーとなる可能性があると同社は述べている。
 
2015年10月1日より米国内外の偽造カードが米国内のPOS端末で使用された取引についての「ライアビリティーシフト」(債務責任の移行)が施行される予定である。ライアビリティーシフトが施行されると、EMV準拠の接触型ICカード(チップ)に対応する決済端末を設置していない加盟店で同接触型ICカードが使用された場合に、偽造カード不正による債務責任が、その加盟店と契約している加盟店契約会社(アクワイアラー)に課されることになる。現在はその大半をカード発行会社(イシュアー)が吸収しており、その責任が移行する(シフト)ことからライアビリティーシフトと呼ばれる。
 
米国や日本で、現在、「Square」「PayPal Here」など、スマートフォンのイヤフォンジャック端子に、小型カードリーダーを接続するソリューションが話題であるが、2015年10月以降、米国ではスマートフォンに接続するカードリーダーを無償で配布するソリューションは通用しなくなる可能性もある。「ライアビリティーシフト」が実施されるためだ。
 
サムスンペイがアップルペイより有利な点は、幅広く決済カードをサポートしている点である。発表時点で、マスターカード、ビザの他に、チェース、バンク・オブ・アメリカ、シティバンク、USバンクをサポートする。加えて、サムスンペイは、米複合企業ゼネラル・エレクトリック(GE)の個人向け金融サービス部門のシンクロニー・ファイナンシャル(Synchrony Financial)やファーストデータ社(First Data Corp)を介して、米カーショップのペップボーイズ社や米国のアイウェア小売店チェーンのレンズクラフター社など、プライベートラベルのクレジットカードもサポートする。
 
ギャラクシーS6およびS6エッジがリリースされるとともに、サムスンペイはまず、米国と韓国でサポートされ、その後、欧州や中国でもサポートが予定されている。しかしiOSデバイスにおいてNFCモバイル決済システムのみを搭載するアップルペイとは異なり、サムスンペイはグーグルや、2月23日にグーグルと新規提携を発表した通信業社ソフトカード(Softcard)とも競合しなければならない。
 
■アップルペイ
 
米アップルは2014年9月にアイフォーン(iPhone)の最新型機「iPhone6」を日米など各国で発売した。アップルペイは1か月後の10月からまずは米国のみということでアイフォーン、アイパッド(iPad)、アップルウォッチ(Apple Watch)でサービス開始が発表された。アップルペイはアイフォーンメーカーのアップルにとって初めての携帯決済システム進出だった。NFC技術を使用して、アップルペイは、既存のクレジットカードやデビットカードなどをアイフォーンのアプリ内に登録しておき、対応の読み取り端末を設置する店舗ではアイフォーンをかざすだけ、インターネット上でもクリック(タップ)するだけで支払いが完了する。
 
こうして、追加のアプリを開くこともディスプレイを起動することもなく、支払いのすべてが可能になった。加えて、このサービスはアプリを統合することも可能にしたため、ユーザーはiOS搭載機でのさまざまな買い物にアップルペイを使用できるようになった。
 
アップルペイ発表以来、サービスのサポートは着実に広がってきた。750の銀行と信用組合が現在、アップルのモバイル決済サービスとのパートナーに目を向けている。アップルのティム・クック(Tim Cook)CEOによると、昨年10月以降、3分の2がアメリカン・エキスプレス、ビザ、マスターカードなどの非接触型決済システムによって支払われたと述べている。
 
現在、アップルペイは米国で利用可能だが、今年後半に欧州、中国など海外展開が期待されている。しかし、そのためには、アップル社は中国の規制のハードルを超えなければならない。2014年11月にアップルは、中国で運営するアップルストアで中国銀聯(UnionPay)クレジット/デビットカードによる決済を認めると発表した。アップルにとって世界第2位の市場である中国での利便性向上につなげなければならない。
 
■グーグルウォレット、アンドロイドでの決済
 
2011年に導入されたグーグルウォレット(Google Wallet)は市場初のNFC決済システムの一つであった。しかし、その普及率は低く、理由の一部は通信会社からのサポートの欠如によるものとされてきた。
 
2011年ごろグーグルがNFCを活用したグーグルウォレットを発表した時は、米国通信キャリアのベライゾンらはグーグルウオレットへの協力を断って、米国通信キャリアのAT&T、ベライゾン、Tモバイルの連合がISIS(アイシス)というスマートフォン決済システムを立ち上げてグーグルウォレットを阻止した。このためグーグルウォレットは暗礁に乗り上げた。ISISは過激派組織と同様の名前であったため、テロ集団のモバイルウォレットというイメージを避けるため、2014年に「ソフトカード」に名称を変更した。しかし、それで売れることはなかった。

その後、昨年9月からサービスが始まったアップル社のアップルペイが好調となり、その結果、最近の大きな変化として、グーグルは2月23日(米国現地時間)にソフトカード買収合意を発表し、3社(AT&T、ベライゾン、Tモバイル)とグーグルウォレットの普及促進で提携したことも明らかにした。新たな契約で、携帯通信事業者3社が今後販売するすべてのアンドロイドスマートフォンにグーグルウォレットがプリインストールされることになる。ただし、グーグル側が携帯通信事業者に支払う見返りなど、詳しい契約内容については明らかにされていない。
 
また、グーグルはグーグルウォレット以外にも、アンドロイドでの決済を通じてモバイル決済でのプレゼンスを拡大しようとしている。グーグルのサンダー・ピチャイ(Sundar Pichai)シニアバイスプレジデント(SVP)は、2日からスペインのバルセロナで開催されているモバイル・ワールド・コングレス(Mobile World Congress)2015で、アンドロイドペイは必ずしもユーザーに向けた新製品ではなくて、むしろアプリケーション・プログラム・インターフェース(API)であると述べた。つまり、コンピュータプログラム(ソフトウェア)の機能や管理するデータなどを、外部の他のプログラムから呼び出して利用するための手順やデータ形式などを定めた規約であり、アップルペイと似ているということだ。
 
現時点でサービスについてすべてが明らかにされているわけではない。しかし、グーグルは今年の年次開発者会議である「Google I/O 2015」(サンフランシスコのモスコーニセンターで5月28日、29日の2日間開催される)で、その多くを発表することが期待されている。
 
*この記事は、米国版 International Business Times の記事を日本向けに抄訳したものです。(原文: Luke Villapaz 記者「Samsung Pay Vs. Apple Pay Vs. Google Wallet: Why Magnetic Tech Gives Samsung An Advantage」)