ブラジル議会が緊縮策否決、ペトロブラス汚職疑惑の余波か

  on
ブラジル国営石油会社ペトロブラスの本社ビル

ブラジル国営石油会社ペトロブラスの本社ビル

ロイター

ブラジル上院は3日、ルセフ大統領が上程した緊縮財政策の大統領令を否決した。予想外の「謀反」に慌てた大統領は4日、連立与党の議会指導部と会談するなど対応に追われた。大統領に対しては、国営石油会社ペトロブラスをめぐる汚職疑惑への対処で非難する声も強く、経済に回復の兆しすら見えない中、厳しい政権運営を余儀なくされている。

ブラジリアに拠点を置くコンサルタント会社、バハル・M・ジョルジ・アソシエーツの政治アナリスト、ガブリエル・ペトリュス氏は「ルセフ大統領にとっては、非常に厳しい状況だ」と指摘。「経済の危機に加えて、政治的な安定もない、ということが証明された」と述べた。

緊縮財政策の大統領令が否決されたことで、経済にどのような影響が及ぶのかは不透明だ。しかし、ペトロブラスをめぐる汚職問題がルセフ大統領の政策課題の実現を阻んでいることは確かであり、ブラジル経済が今年、リセッション(景気後退)に陥る可能性が高まりかねない。

市場ではブラジルが投資適格級の格付けを失う可能性が意識され、ブラジルレアル は4日、一時2%超下落し2004年以来初めて1ドル=3レアルをつけた。ブラジル株 も1.6%下落した。
  BNPパリバ・セキュリティーズのデータによると、ブラジル国債を5年間保証するクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の保証料率は4日、244ベーシスポイント(bp) に上昇。トルコやインドネシアなど、ジャンク級の新興国よりもワイド化した。

スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)のアナリストは今週、ブラジルの政府高官らと会う見通し。S&Pは昨年、公的財政の悪化を理由に、ブラジルの格付けを投資適格級のなかで最下位に引き下げた。

<ペトロブラスめぐる政治的駆け引き>

ブラジル上院が今回、緊縮財政の大統領令を否決した背景には、ペトロブラスの汚職疑惑をめぐる政治的な駆け引きがあるとみられる。

連立政権の一員であるレナン・カリエイロス上院議長は3日夜、「手続き上の理由」により、緊縮財政策を盛り込んだ大統領令を否決。

その数時間後には、ロドリゴ・ジャノト連邦検事総長が、ペトロブラスからの不正資金取得が疑われる政治家への捜査開始を認めるよう、連邦最高裁に要請した。個人名は公表されていないものの、ブラジルのメディアは、カリエイロス上院議長も含まれていると一斉に報道した。

上院議長が大統領令に反対したのは、自身が対象になったことへの不快感を政府に示すための戦術では、との見方も浮上している。

ブラジル大統領府は、大統領令に代わって、給与税引き上げを盛り込んだ法案を議会にあらためて提示する、としている。ただ、大統領への対立姿勢を強める議会がいつ採決を行うのかは不透明であり、法案が通った場合も、増税の実施時期が当初の想定よりも遅れるのは必至だ。

コンサルティング会社ユーラシア・グループは、増税の遅れで政府が被るコストは最大30億レアル(10億ドル)に上る、と試算する。