アルゼンチン大統領が貧困率は世界最低水準と発言、周囲から懸念の声

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キルチネル、アルゼンチン大統領
クリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル、アルゼンチン大統領は、同国の貧困率は世界で最も低いと述べた。2015年4月23日、同大統領はモスクワを訪れた。 ロイター/セルゲイ・カープキン(Sergei Karpukhin)さん

アルゼンチンのクリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル(Cristina Fernandez de Kirchner)大統領が今週、ローマの国連食糧農業機関(FAO)の会議でアルゼンチンの貧困率は世界で最も低いと発言した。アイスランド、フィンランド、デンマークなどの国に匹敵する水準であると同大統領は誇らしげに語ったが、同大統領を信じないアルゼンチン人は多く、彼らは大統領に現実を認識するよう求めた。
 
8日、大統領は「現在、貧困率(全人口に占める貧困層の割合)は5%未満である。また栄養失調率は1.27%であり、アルゼンチンが最も平等主義の国の一つになったということが示された」と過去25年間のアルゼンチンの栄養失調の水準の割合が減少したと認識していると述べた。
 
貧困率は、一家族が必要とする最低限の食品量を満たすために必要な金額を基にしている。しかし政府は2013年以降、貧困率の統計値を公表していない。アルゼンチンの新聞ラ・ナシオン紙によると、大統領は、国家統計センサス局(以下INDEC)による2013年12月の貧困率は4.7%であると述べたと報じている。経済協力開発機構(OECD)の最新のデータを基にすると、その数字は、世界で最も低い貧困率ということになる。これに匹敵するのはアイスランド(2011年: 5.9%)、チェコ共和国(2011年: 5.9%)、オランダ(2012年: 7.8%)、デンマーク(2011年: 6%)などである。
 
3月、アルゼンチンのアレクシス・キシロフ(Alexis Kiciloff)経済産業大臣は、何人の人が貧困線以下で生活しているのかという計算は「複雑な問題」であると述べた。
 
貧困線とは統計上、生活に必要な物を購入できる最低限の収入を表す指標で、それ以下の収入では、一家の生活が支えられない水準を指し、この水準の人々には娯楽や嗜好品に振り分けられる収入が存在しない。また、世界銀行の定義では、1日の所得が1.25ドル(約153円)相当額(貧困線)未満とし、このような生活をする人を「絶対的貧困層」としている。
 
「結局、私には、貧しい人々の数はわからない。数字は、汚名をきせる烙印のようなものだ」とキシロフ大臣はラ・ナシオン紙に語った。
 
一方、批評家は、記録されている貧困率の数値について、以前からずっと疑問を投げかけてきた。彼らは、貧困率の数値の要因となる食料品価格の計算を低く見積もることでインフレ評価額を操作するとともに問題の多い方法で基準を作成していると述べている。
 
この論争は2007年にINDECがインフレ率を計算する方法を変更した際に遡る。そのときは、ほかならぬINDECの局員のグループがデータ操作の変更について糾弾して、異議申し立てを行ったのである。
 
「明らかに、実際の数値ではない」と社会開発局のダニエル・アロヨ(Daniel Arroyo)元副大臣は8日、アルゼンチンのニュースウェブサイトである「インフォーベ(Infobae)」に語った。「過去4年間でアルゼンチンの状況は一層悪化している。2001年に比べれば良くなっているものの、2011年に比べれば悪くなっている」とアロヨ氏は語った。
 
10月の大統領選挙で大統領候補として立候補しているエルネスト・サンス(Ernesto Sanz)議員は、地元メディアの「キルヒナー(Kirchner)」に貧困率の統計を持ち出して「嘘である」と述べた。それに加えて「貧困を隠す以外の何物でもなく、3年にわたって政府が意図的に行ってきたことだ」と指摘した。
 
アルゼンチン最大の労働組合である、労働総連合(General Confederation of Labor)の経済統計関連のコーディネーターであるホルヘ・ソラ(Jorge Sola)氏は、1200万人のアルゼンチン人が貧困線以下で暮らしており、アルゼンチンの貧困率は推定で29%前後になるだろうと「インフォーベ」に語った。
 
アルゼンチンの貧困率に関する他の推定値も同様に高い数値が出ている。アルゼンチンのカトリック大学による調査によると、2014年の同国の貧困率は27%と算出された。また、アルゼンチンの労働中央組合(Argentine Workers’ Central Union)は2014年の貧困率を17.8%と算出した。今年4月には、2007年に国家統計センサス局(INDEC)の統計に異議申し立てを行った局員のグループが、貧困率は約25.1%であると発表した。アルゼンチン政府のアニバル・フェルナンデス(Anibal Fernandez)内相はこの発表について記者会見で、「彼らは嘘をついている、他の多くの連中が中途半端な議論をして数値をむやみに上げているのと同じことだ」と一蹴した。
 
さらに、政府関係者の中にも4.7%の数値に懐疑的な見方を投げかけている者がいる。ジュリアン・ドミンゲス(Julian Dominguez)氏は議会下院議長でキルチネル大統領の支持者でもあったが、ドミンゲス氏は3月に問題を起こして公職を去る際に、貧困率は14.9%程度であると発表し、この数値は議会の社会保険委員会をもとにしたものだと述べた。「アルゼンチンには貧困が蔓延している。その貧困を減少させようとする統計操作によって、貧困は減少している」とドミンゲス氏はラジオ局「FMブルー(FM Blue)」で語った。
 
*この記事は、米国版 International Business Times の記事を日本向けに抄訳したものです。(原文: Brianna Lee記者「Argentina’s President Raises Eyebrows With Claims The Country's Poverty Rate Is Among Lowest In The World」)