中国の「ブラックマンデー」:中国政府の対応は適切だったか

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IBT150828 中国のブラックマンデー
北京の金融集中地域にある商業銀行本社ではためく五星紅旗 ロイター/Kim Kyung-Hoon

中国経済が失速し、今週急速に株価が下落したことを受け、中国政府の対応が適切だったかについて議論が高まっている。

これは新しい話ではない。7月初め、中国市場が落ち込み始めるとともに、当局はこれを食い止めるために大規模な介入を宣言した。大手の証券会社は何十億ドルという株の買い注文を受け、株価が比較的高い水準に落ち着くまで売らないと誓約しなくてはならなかった。

このことで市場は、少なくとも一時的には20%以上持ち直した。しかしこのアプローチは、中国が掲げる、より市場指向の金融システムへの移行という目標を損なうものだと批判する向きもあった。また、市場の急騰は中国の実体経済とはほとんど関係ないため、大きな修正が避けられないとする人々もいた。介入が長引けば、普通の投資家が火傷を負うようになるというのだ。

しかし今週前半、投資家が大急ぎで株を投げ売りし、パニックが世界の市場に広がるなか、当初批判を集めたのは、中国政府が買い支えの介入をしなかったことだった。約8.5%の下落という月曜の株式市場は、利率と銀行の預金準備率(RRR)引き下げの発表をしなかったからだとの非難もあった。前週の12%の株価下落を受けて、投資家らはそうした動きを週末中期待していたのだ。それが、政府が経済を支えるため、前向きにコミットするというシグナルになると思っていたわけだ。

しかし利下げの発表が行われなかったため、多くの投資家は恐怖を感じ、政府がもはや「市場を救う」ために手厚い投資をする用意がないのではないかという疑念を抱いた。この結果、月曜と火曜で株はトータル16%下落した。この時点でついに政府が腰を上げ、中央銀行である中国人民銀行が利率(比較的小幅な0.5%点)と預金準備率(0.25%点)の引き下げを発表した。理論的には、これで企業への貸付が容易になるはずだ。

英国メディアはこの政府のアプローチに大した印象を受けなかったようだ。タイムズ紙は「中国政府のまずい介入」について、危機の原因の一端は「北京の介入のあいまいさ」にあるとし、テレグラフ紙は、政府の「無能にみえる対応、必死の試み」を批判し、「中国の特異な、独裁的で国家主導の資本主義は通常の経済の法則を受け付けない、とする考え方を裏切るもの」だとした。

ガーディアン紙はさらに、世界は「中国の秘密に包まれた政治プロセスが最終的には同国を更なる発展に導くという前提を盲目的に信じるわけにはいかなくなってきた」と述べた。

しかし、中国中央銀行は賢明な方策を取ったと指摘する分析もある。ガーディアンの編集委員(経済担当)のラリー・エリオット(Larry Elliott)氏は、25日の利下げについて、「慎ましいが重大」と述べ、政府はもっと強く対応できた可能性もあるが、「より慎重なアプローチを選んだ」のだと指摘した。さらに同氏は、より大きな「利下げをすれば、経済が本当にハードランディングに苦しんでいる証拠と見られ、さらに信用を損なっていたかもしれない。中央銀行はよくタイミングを計り、利下げの発表はアジアと欧州の市場が戻し始めたときに行われ、最大の効果を上げた」とも述べている。

しかし、中国株が26日も、午前中多少持ち直したとはいえ、下げ続けたので、政府の対応は十分だったのか、明確なプランを持っているのかどうかについて疑問を呈するアナリストもある。

中国の投資家らは、確実に足による投票を行っている。上海に住むベテラン投資家は弊紙の取材に対し、しばらく市場に投資はしない、政府が市場を支えることに優先順位を置いていないと思うから、と答えた。

しかし、当局の介入が少ないなら、市場を声高に宣伝するという従来の明白な戦略に矛盾するようにも見える。当局は、市場は中国経済を再構築するのに必要な資金を集めるための重要なチャネルだと繰り返し述べてきた。一方で4月に市場が4000ポイントに達したときには、政府系の人民日報は、これは「相場上昇のはじまりに過ぎない」と述べ、後に下落を始めたとき、一部の投資家の怒りを買った。

香港のANZ銀行のチーフエコノミスト、Li-gang Liu氏は、人民銀行が利率の引き下げの発表を遅らせたのは理解できると述べた。それが「弱さを示すことになることを恐れ、これほど大きな市場の混乱の中で利下げを発表したくなかったのだ」と指摘する。同氏は、この利下げは借入コストの上昇に直面している中国企業には極めて重要で、中国が今年の7%成長を達成したいなら、より大きな預金準備率の引き下げが数か月以内に必要となるだろうと予測した。

Liu氏はまた、効率的な資本市場を形成し、中国企業が社債による資金調達が容易にできるよう、更なる金融市場の自由化を求めている。「市場に少しずつ、ある種の自信を付けさせる必要がある。中国人民銀行が企業を助けてくれると市場が考えれば、下半期には企業はより自信を回復することが出来るだろう」と同氏は言う。

しかし実際問題として、人民銀行の政策目標が何なのか理解しがたいときもある、「特に預金準備率の引き下げが遅れたことは、当局が構造的な問題に集中しており、『無能な企業は、利率を下げて助けてやるより市場から退出すべきだ』という方向に傾きつつあるという観測を呼んだ」とLiu氏は言う。

Liu氏は、自らの下半期の中国経済全体の見通しを下方修正したと言い、政府の対応が遅かったことも理由の一部だと述べる。「金融政策はさらに緩和され、財政政策は断固として行われるものと考えていたが、今までのところ、非常に失望している。実体経済の成長の不活発さに活を入れる一貫性のある効果的な政策は見られない。第三四半期も不活発なままだろう」と彼は予測する。

さらに批判的なアナリストもいる。モルガン・スタンレーの元チーフエコノミストのAndy Xieは、昨年からの株式市場を支えるという政府の政策は最初から「間違い」だったと考えている。「中国の株式市場は幻想経済、一種のショーだ。実体経済からはかけ離れている。だから、今まで見てきたのはギャンブルの熱狂だ。昨年の半ばには上がり始め、下落前までに150%上がった。しかし、その間経済のファンダメンタルズは下落し続けている」

4月の時点で、当局は、株式購入のための資金借り入れを容易にし過ぎ、敢えて危険なバブルを作り出しているとXie氏はIBTimesに語っていたが、この数か月、普通の市民に投資を勧めることで政府は、「弱者を利用し、最も経験の浅い人々から搾取する」ことになったと述べた。

そして、2008年の事例を指摘して、政府の市場下落を食い止めようとする試みは失敗するだろうと予測した。「政府には止められない。それが教訓だ。市場は政府より強力なのだ。だから、中国政府には何か秘策があって、全て想定内だなどという、特に外国人に人気の説は完全に間違っている」

中国の公式メディアは強気を維持しており、経済は強いファンダメンタルを持っており、下半期もインフラ支出が成長を支えるだろうと述べている。しかしXie氏は、道路建設のようなセクターでは設備が過剰と見る。「中国は今や、米国以上の高速道路ネットワークを持っています。一方、自動車の台数は米国の2億5000万台に対し、1億5000万台です。にもかかわらず、今年さらに新しい高速道路建設に投資をしています」と同氏は指摘する。

中国経済の苦悩に対するXie氏の提言は、設備過剰の産業の企業倒産を認めることに加え、政府が「大幅な減税(GDP比3%以上)を行うことだ。これは家計の需要を押し上げるのに必要」だという。中国の厚生保険システムは総労働費の「3分の1から40%を占めており、GDPに占める人々の収入は40%と低い」。政府がいつも上げたいと言っている消費支出が低いのはこのためなのだとXie氏は言う。

実際、現在の中国経済のピンチを救う特効薬はなさそうだが、少なくとも今のところ、政府が期待するような重要な役割を株式市場が演じることは出来なさそうだというコンセンサスが育ちつつある。中国政府系のGlobal Timesでさえ、26日、現在の市場の混乱の中では、「普通の投資家は観客でいたほうがよさそうだ」と警告している。

中国で市場指向の改革が行われることを望む声もある。もしこれが実現すれば、政府のコネでなく市場の力で、どの新規企業が上場するかが決まることになる。もちろんそのような動きにむけた明白なタイムテーブルはなく、ウォッチャーは政策の透明性が増すことを待ち続けている。

*この記事は、米国版International Business Timesの記事を日本向けに抄訳したものです。(原文記事:Duncan Hewitt記者「China's 'Black Monday': Did Officials Do Enough To Stop It?」)