米国の研修医、アプリを使用して高給を得るために病院と戦う

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米国の研修医
米国の研修医は、競争力のあるマッチングプロセスを開始させて、給与、収益、住居までも決定するシステムを信頼しなければならない。現在、米国の11万5,000人の研修医がこの状況に押し戻されている。 ゲッティイメージズ/マリオ・ビラフュエルテ(Mario Villafuerte)さん

プライマリ・ケア医、つまり、すべての疾病の1次医療・予防医療を行う一般的な個人開業医になる夢を実現するために歩んでいるネイサン・キング(Nathan King)さんは、駐車場にあまりにも多額の料金を支払ったことに気づいた。29歳のキングさんは米カリフォルニア大学で内科を学び、研修医として専門医学実習期間(医学生がインターンを終えた後に病院で実習する)3年目を終えたところだ。カリフォルニア大学アーバイン・メディカルセンターで多くの時間を過ごしている。

病院は研修医に毎月101ドル(約1万2,000円)の駐車パスを提供しているが、キングさんは患者の診察が忙しくて駐車場を見つける時間もないため、患者を診察する日には1日12ドル(約1,450円)というかなり高額な来訪者用料金を支払っている。厳密に言うと彼は年間5万5,807ドル(約670万円)を稼いでいる。

「これでは、やっていけない」とキングさんは述べた。

昨年、高額の駐車料金を避けるために自転車通勤を始めた。増加する生活費と医療研修費とのバランスをとるためにキングさんは苦労しているが、これはほんの一例でしかない。キングさんには、仕事を持たない妻と、育ち盛りの2歳の娘と3か月の息子がいる。

「医療研修医の訓練のために作られた場所は、実際の生活の場所ではない」とキングさんは語った。「家族を持っているため、多くのノルマに追われている」と加えた。

医療研修を終了するとキングさんは手厚い報酬を得る。米国での平均的な家族医の年収は約17万6,000ドル(約2,100万円)である。しかしそこに至る前に、学生ローンが家族のための支出と合わさってロサンゼルスでの高コストの生活費が財政難と戦う羽目になる。キングさんは医療研修プログラム(レジデンシー・プログラム)にはもっと補助が必要だと思っている。

キングさんだけではない。最近、医学生や研修医が増加したため、医療研修を実習するプロセスに透明性を導入する方法が模索されている。研修医の多くが、研修する病院で、より良い待遇を得られるように力を合わせている。一方、受け入れ側の病院は、年間数百人の研修医を訓練するために政府から数百万ドルを得ている。批評家らは不明瞭で誤った指導であると指摘している。キングさんのような研修医はこれらの補助金をもっと研修医に回して欲しいと求めている。

大学の友人は、ハイテク企業に入社したり、従業員に無料送迎、無料ビール、敷地内のドライクリーニングを提供するスタートアップ企業に入社しているなかで、キングさんのような研修医は病院で様々な専門用語を使って指示しながらあくせく働いている。他の場所で働く同僚とは異なり、多くの研修医は、16時間のシフトで働くプログラムを求められたとしても、病院から30分以内に居住するように求められたとしても、給与の交渉はできない。特別なプログラムに訓練をゆだねた後は、雇用の全容を知ることすらできないことも多い。

「研修医のトレーニングのあらゆる側面に関して管理やコントロールは殆どできない」と米ワシントン州シアトル、ワシントン大学で救急医療の研修医になって1年目のアレックス・パルスト・コレンバーグ(Alex Pulst-Korenberg)さんは述べた。「どの町に行くのかわからない、給料がいくらになるのかわからない、手当てはいくらになるのかもわからない。誰か他の人が契約にサインして自分では交渉できないというのは、世の中の他の業界では考えられない」と加えた。

米国の医師と外科医の州ごとの給与  GRAPHIQ

■かみ合わない

15日、医学生は、来年開始されるナショナル・レジデント・マッチング・プログラム(National Resident Matching Program)の最初の願書を提出した。マッチングプログラムの選択プロセスは次のように行われる。

National Residency Matching Program(NRMP)は1952年に設立された非営利組織で、米国の医学部卒業生を対象に研修プログラムとのマッチングを行っている。研修希望者はNRMPに登録する。登録の条件として、マッチングの結果で研修先が決まった場合は必ずその相手と研修契約を結ぶなどの規約がある。学生の研修希望者は期限日までに、希望する研修プログラムについて希望順位表を作成しNRMPへ送る。研修施設側も同様に採用希望の研修者について希望順位表を作成しNRMPへ送る。

プログラムディレクターが学生をランク付けして、学生とプログラムの「割り振り」が調整される。すべての学生は同じ日に、どこで研修をするのかを知らされる(次の「マッチング・デー」は2016年3月18日金曜日である)。学生の多くが、自分の将来が、このような高圧的て混沌としたプロセスを経た特定の操作によって決められると感じている。

「マッチング・デーに封筒を開けて、今後5年間、キャリアを積むためにどこの研修現場へ行くのか告げられる」と米フィラデルフィアのトーマス・ジェファーソン大学病院の頭頸部外科で3年目の研修医であるアクシャイ・サナン(Akshay Sanan)さんは語った。「これは、非常にストレスが高いプロセスである」と説明した。

高額でもある。平均的な医学生は出願に約6,000ドル(約72万円)を支払う。第一プログラムでの面接で約18万ドル(約2,200万円)を苦労して支払う。サナンさんは、特に競争率の高い専攻であるため、決定するまでに約50近くのプログラムに出願して20以上のキャンパスを訪問した。

しかし、大学を選ぶのと同じように、訪問している間は、どのプログラムが実際すぐれているのか知るのは難しい。より良く理解するために、多くの医学生は叫び声をあげる。Doximityは2010年11月に設立された医師(医学生含む)専用のソーシャルネットワークで、創業わずか1年で50万人の登録会員を集めるという急成長を遂げ、全米の注目を集めた。Doximityは医師が彼らの研修医を容易にランク付けしやすくし、どのプログラムが研修医の専門性に一番適しているのか決めやすくする。4万人近くのレビュアーがレビューを投稿し、プログラムのスケジュールの柔軟性や労働時間に関して5つ星のシステムを介してランク付けした。

「研修医にとって人生を憂鬱にするのは些細なことである。どれぐらい電話に出なければならないのか、必要なときに休暇が取れるのかといったことだ」とDoximity共同創設者のネイト・グロス(Nate Gross)博士は言う。

また、出願者は、各機関で研修医の誰が審査試験を合格したのかなどの情報を知ることができる。グロス博士はこれらの情報を得ることは驚くほど難しく、麻酔学などのいくつかの専門分野については依然として情報は得られないと言う。Doximityが作られる以前は、研修医のプログラムについて質的、量的情報センターはなかった。昨年、米国の医学生の75%が検索のためにDoximityを使用したとDoximity関係者は述べている。

アブヒ・アガルワル(Abhi Aggarwal)さんはワシントンD.Cのジョージワシントン大学医学部で4年間を過ごした。最近アガルワルさんは放射線診断プログラムを見つけるためにDoximityにログオンした。いくつかの「安全な学校」だけでなく、より多くの競争力のあるプログラムを含んだ詳細レポートによるランキングを作成するためにである。アガルワルさんのクラスの140人の学生のうち、少なくとも90人が選択肢の検索のためにDoximityを利用していると推定される。

アガルワルさんは25歳で60のプログラムに出願する計画で、出願料として約1,500ドル(約18万円)を、プログラムに参加するための旅費として最高1万ドル(約120万円)を予定していた。アガルワルさんは、4年間の大学の学生と、4年間の医学の研修期間で学生負債を抱えた後、最終的に、いくらかお金を稼げるようになれば安心できると述べた。

「問題は、8年間の投資をした後に、私に実際には何も選択肢がないかもしれないということだ」とアガルワルさんは述べた。「実際にはドロップアウトすることが選択肢だ。私の思うところでは、他に何かをしないと絶対に私の投資に良い結果が出ることはないかもしれない」と話した。

Doximityは医師、研修医、医学生のためのオンラインソーシャルネットワーキングツールである。その人気の特長の1つは、元研修医たちによるプログラムのレビューを見ることができるというものだ。  Doximity

■権利のための交渉

夢を実現して給料を得られるようになった後も、多くの研修医は、まだ希望額より少ない状況であることに気付く。ある病院の研修医は、給与、手当て、労働条件に関する問題に対処するために団体交渉を行って、いくつかの進展があった。

「研修医の最優先項目は教育や訓練なのだから、決定を下す際に全体の利益を優先しないというのは健全なことであるが、決定は研修医の人生に大きな影響を与える」とパルスト・コレンバーグさんは述べた。

年初に、ニューヨーク市の研修医に1,000ドル(約12万円)のボーナスが支給された。米ニュージャージー州ラトガース大学の研修医は、一回の夜勤またはシフト拡張に対して病院のカフェの20ドル(約2,400円)の食事券が支給され、本やテクノロジーの購入に使える年間奨学金が50ドル(約6,000円)増加された。ワシントン大学の研修医は、現在の給料の約40%増と育児費用として年間5,000ドル(約60万円)の支給を交渉している。

ワシントン大学研修医の現在の給与と要求給与額  ワシントン大学

カリフォルニア大学アーバイン校(UC-Irvine)でキングさんは、医療研修医と同校初の労働契約を結ぶように求めている仲間のグループをリードしている。キングさんは、米国最大の研修医のための労働組合であるコミィティ・オブ・インターネット・アンド・レジデント(CIR)とともに活動している。このグループには、カリフォルニア、フロリダ、ニューヨーク、マサチューセッツ州を含む6州の約1万2,000人のメンバーが参加している。

「毎年、インターンや研修医やその仲間がCIRに殺到するが、彼らは病院で働く最も若い仲間である。でも親権者もCIRには多い」とCIR代表のヘマント・シンドゥー(Hemant Sindhu)博士は語る。「トーテムポールの一番下の人が、患者の安全性や自身の擁護に関する問題について意見を述べるのは非常に難しい」と加えた。

アーバイン校の交渉は14か月間に及んで長引いている。労使関係のディレクターであるサミュエル・ストラファシー(Samuel Strafaci)さんは、これは、学校の多くの研修医プログラムによって「てんでんバラバラ」に様々な利益のリストが作りあげられていることによるものであると言う。しかしストラファシーさんは、おそらく、早ければ次の会合が開かれる9月29日には議論がまとまるのではないかと期待する。

多くの問題はすでに解決されているが、5,000ドル(約60万円)年の住宅給付金はまだ合意に達していない。キングさんのプログラムは呼び出しを受けたときに迅速に対応できるように、カリフォルニア大学アーバイン校医療センターから30分以内の地域に住むことを要求している。しかしカリフォルニア州オレンジ・カウンティ一帯の1月あたりの平均家賃は1,807ドル(約22万円)である。

ストラファシーさんは、アーバイン校の700人の研修医に奨学金を提供すると、年間約350万ドル(約4億2,000万円)のコストがかかると述べた。代わりに、当局は、契約更新で新しい奨学金を再交渉するよりも補助金支給の住宅の提供を推進すべきだ。

キングさんは切り詰めや無料駐車場についてより、自転車にこだわる必要がある。

「従業員のための費用負担や無料の駐車場はない」とストラファシーさんは述べている。「私たちの立場があり、障害の一つである」と加えた。

キングさんは新しい医療研修生に応募するのは難しいとも言う。研修医は他の職場に比べて基本的に不利な立場であるとキングさんは言う。その理由は、労働移動率が高く、研修生はプログラム指揮者や病院当局に管理をゆだねる強い動機があるためとしている。

「キャリアは研修医となることから始まる」とキングさんは述べた。「5,000ドル(約60万円)の住宅奨学金のためだけに自分のキャリアを危険にさらせるだろうか? 多くの人々にとってそれほどの価値はない」と加えた。

■患者のために前例を作る

研修医の労働条件を改善することは、患者を支援することでもあると、研修医らは主張している。

多くの研修医が病院の設備購入や、重要だと思われる備品を購入するための資金の確保を病院に依頼し始めている。多くの病院では、これらの資金によって患者の安全への取り組みが発案されて請求され、入院患者が減り、感染を削減することができるとされる。

ニューヨークのブルックリンにあるブルックデール病院では、膀胱を空にする必要はあるが恒久的なカテーテルは必要ない患者に、医師が頻繁にカテーテルを入れる方法を実施していたことに研修医が気付いた。しかし、医師には、処置を行う前に、患者が実際に膀胱を空にする必要があるかどうかを伝える方法がなく、感染のリスクのある患者にもすべてカテーテルを使用していた。そこで研修医は患者のケアファンドを利用して膀胱用スキャナーを購入した。このスキャナーは患者に十分な尿が溜まったかを知らせるもので処置にメリットを与えた。

カリフォルニア州ロサンゼルスは研修医に2百万ドル(約2億4,000万円)のファンドを確保しているが、これは南カリフォルニア大学医療センターとハーバーUCLA医療センターと共に米国で最も古くて最も大きいファンドの1つである。カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研修医は、5万ドル(約600万円)のファンドにカリフォルニア大学サンフランシスコ校メディカルセンターを通してアクセスし、10万ドル(約1,200万円)のファンドにサンフランシスコ総合病院を通してアクセスする。これによって、小児患者にプレイステーションを購入し、妊婦に無料タクシー券が配られた。

これらのプログラムを拡大することで、病院に戻ってくる患者を減らす可能性があり、手術から回復するように子供たちの気持ちを後押しすることになり、米国中の病院の研修医の状況を改善することは患者にとっても最善の利益になる。

Doximityは医学生、研修医、医師以外は使用禁止だが、選択プロセスに透明性が加わることで、より多くの肯定的な結果がもたらされる可能性がある。学生がより多くの情報にアクセスすることで、正しいプログラムを選択しやすくなり、結局は医師にとっても好都合となる。また、ありのままで統計が行われるとき、競争心を高める病院の教育や研修医プログラムは、プログラムの向上に大きく働くかもしれない。

今年、得るところがあったとしても、病院管理と並行して決定を下すために、さらに多くの研修医への補助や支援が依然として必要であるとCIRのシンドゥー博士は述べて、これは貴重な労働力への訓練であると指摘した。

アーバイン校に話を戻すが、キングさんには2人の弟がいて一旦は医者になろうかと考えていたと言う。しかし、弟たちはキングさんの状況を見て2人とも医者ではなくて看護師になることに決めた。

「看護師が素晴らしい点は、すべて労働組合に参加していて、ニーズが非常にうまく擁護されていることである」とキングさんは語った。

*この記事は、米国版 International Business Times の記事を日本向けに抄訳したものです。(原文:Amy Nordrum 記者「Medical Residents Use Apps And Activism To Fight Hospitals For Bigger Salaries, Better Benefits」)