ブラジル不況:緊縮財政だけでは不十分、政治的混乱もマイナス

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ジルマ・ルセフ氏
ブラジルのジルマ・ルセフ大統領(2015年9月2日撮影) ロイター

ブラジルは、国の予算における赤字を埋めるための緊縮財政を計画している。同国のルセフ大統領への支持率は過去最低となった。アナリストたちは、緊縮政策だけでは、不況から脱することができないと指摘する。

企業は、ブラジルで事業展開を容易にするために、税制の整理や時代遅れの年金システムの修正など、大規模が修正を求めてきた。ブラジルの不況は、中国に対する輸出の需要が鈍化したことで深刻化している。

ワシントンにあるシンクタンク「インターアメリカン・ダイアローグ(Inter-American Dialogue)」の名誉会長を務めるピーター・ハキーム(Peter Hakim)氏は、「ブラジルが再び成長するために必要なことは、わかりきっている。しかし、実行するのは難しい。協力態勢が整っていない」と述べた。

一年にわたって経済危機に苦しんできたブラジルであったが、ここ数週間、その苦痛はさらに深い段階へと達した。先月、同国の経済は、前期比1.9%減と縮小した。それは予想を上回る縮小幅であった。

緊縮賛成派のジョアキン・レビ(Joaquim Levy)財務相は、ネガティブなニュースによる流れに抵抗するべく、増税と歳出削減を押し進めた。しかし、議会で野党から激しい抵抗に直面した。

先月31日、ブラジル政府は、年間予算計画が赤字になる見通しだと公式に予測した。近代に入って以来、初めてのことである。それ以降、緊縮財政への流れは強くなっていった。

数日後、格付け機関であるスタンダード&プアーズが、ブラジルを格下げし、ジャンク級(BBプラス)とした。予想より数か月早い展開だった。レビ財務相は、新たな増税と歳出削減を明らかにし、削減額は合計170億米ドルとなった。他の各付機関がブラジルを格下げするのを避け、投資へ資金を流すためである。

緊縮政策では、農業部門および化学部門における補助金を削減し、キャピタルゲイン税を最大30%まで引き上げる。また、公務員の給料を凍結し、10の政府省庁を廃止する。ルセフ大統領率いる労働党が主導している経済格差是正プログラム「ボウサ・ファミリア(Bolsa Familia)」への歳出も削減される。そして、もっとも物議をかもしている施策は、すべての銀行取引に0.2%を課税する税金の復興である。

ブラジルの問題は、同国にとって最大の貿易相手国である中国経済の減速と密接に関係している。しかし、批評家は、ルセフ政権にも停滞している責任の一端があると主張する。

ブラジルは、不必要な官僚制の影響で、税制が膨らんでいた。政府は60種類以上の税を集め、それらの税にはそれぞれ異なった税率があり、異なった機関へとお金が流れた。

また、ルセフ大統領は、労働法規を改訂する必要がある。企業は、従業員を解雇するためには、退職金と罰金で1年分の給料に相当する金額を支払う必要がある。米州開発銀行による2012年の統計は、寛大な失業保険供給ゆえに、労働移動率が高くなってたことを示す。労働争議についての法廷判決は、労働者よりであることが多い。

さらに、高齢化社会を迎えるには、ブラジルの年金制度は準備不足である。ブラジルはGDPの約13%を年金に使う。制度に15年間払い込んで、60代前半で退職すれば、退職の間中、満額受け取ることができる。アナリストは、そのシステムは持続が不可能であると考えている。

一方、政治的な混乱もある。数十名の政治家が元国営エネルギー企業「ペトロブラス(Petrobras)」の汚職スキャンダルに関わっており、政府への支持率は傷ついた。ルセフ大統領自身も、数週間後に判決を控えている。同大統領が弾劾される可能性もある。ンターアメリカン・ダイアローグのハキー氏は、現在の政治的背景では、ブラジルが必要とするような抜本的な改革を実行するのは難しいと考える。同氏は、「誰もが戦っている。ブラジルのためではなく、自身の政党や個人的な野心のために戦っている」と述べた。

* この記事は、米国版Internaitonal Business Timesの記事を日本向けに抄訳したものです。(原文記事:Brianna Lee記者「Brazil Economy Update: Austerity Plan Alone Won't Fix Recession, Analysts Say」)