対ロ強硬論の盲点、シリア発「世界大戦」避けるには

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シリアのアレッポ西部
シリアのアレッポ西部 Getty Images

 ロシアのプーチン大統領がシリア領内への空爆を命じ、シリア反体制派がその激しい攻撃に直面する一方、米国ではオバマ大統領が非難の嵐にさらされている。

プーチン氏が開始した空爆作戦にオバマ氏が反応しなかったことで、プーチン氏と比べてオバマ氏が「弱く」見えると批判する声が上がっている。また、シリアでの米国の「信頼性」は危機的状況にあり、米国は今こそロシアに対する「抑止力を回復」しなければならないと主張する人たちもいる。

カーター政権時に大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を務めたズビグニュー・ブレジンスキー氏は、シリアにいるロシア軍は「地理的にぜい弱」であるため、「非武装化」が可能とさえ断言した。ただし、どう非武装化できるかは説明していない。

しかし当然ながら、事態がエスカレートすれば危険は高まり、米国にとって利益となるかは疑わしいというのが実際のところだろう。

第一に、オバマ氏を批判する人は誰ひとり、シリアでのロシアの行動がどのように米国の「信頼性」、あるいはロシアへの抑止力を脅かすのか説明していない。この場合、信頼性を脅かすとは、米国がある場所で敵に反撃しなければ、その敵は他の場所で、米国にとってより致命的な権益を脅かそうとすることを意味する。

ベトナム戦争でもこのロジックが働いた。米国が流した血と財は、米国が欧州でソ連の攻撃から北大西洋条約機構(NATO)加盟国を守ると彼らを安心させることを意味していた。

当時、このロジックは間違った方向へと向かったが、現在も同様だ。プーチン氏はイスラエルや湾岸諸国のような米同盟国に脅威を与えていないばかりか、NATO加盟国と深刻な軍事対立を起こす気もないように見える。

プーチン氏は扱いにくい人物かもしれないが、頭がおかしいわけではない。それに、シリアで米国が警告したからといって、他の地域でロシアが米国の核心的利益を攻撃しようと考える証拠は存在しない。

また、ロシアのシリア軍事作戦に強硬な態度を取るべきだと主張する人たちは、極めて重要な事実を無視している。それは、オバマ氏がたとえシリアでの軍事的拡大を支持したとしても、政策の選択肢は程度の差こそあれ、すべて悪いということだ。

例を挙げると、共和党のマケイン上院議員は、ロシア軍機を撃ち落とせる地対空ミサイルをシリア反体制派に提供するようオバマ大統領に求めている。このような考えは、敵味方がオーバーラップする混乱したシリアでは、「穏健」な反体制派が同国のアルカイダ系組織としばしば協力していることを念頭に入れていない。同ミサイルは民間航空機を撃ち落とすことも可能であるため、マケイン氏の考えは惨事を招くものだ。

ほかにも、ウクライナに対する何十億ドル分もの米国製軍用品の供与を再検討するという選択肢があるが、それがどのようにロシアをシリアから撤退させることができるかは難しいだろう。そしてこの考えも、プーチン氏がどう反応するかを無視している。

オバマ氏が正しく結論付けているように、そうなればプーチン氏は親ロシア派への支援を拡大し、悪い状況がさらに悪化することになるだろう。シリア情勢の解決につながらないのであれば、ウクライナで対立を再燃させる意味はあるのだろうか。

最後に、軍事力を行使してシリアでロシア軍を「非武装化」するという考えはまさに、気がおかしいか、自殺的行為だと言える。ロシアはほぼ間違いなく、米国やNATOの軍隊に対し、恐らく東欧で反撃してくるだろう。それ故、オバマ大統領が突如として第3次世界大戦を始めたいと思わない限り、避けるのが安全な選択肢と言える。

これらのことは、ロシアのシリア軍事作戦を米国が無視すべきだということを意味するわけではない。だが同時に、オバマ大統領が慎重に対応するのが賢明であることを示している。オバマ氏は以下のような措置を取ることができるだろう。

初めに、ホワイトハウスは、意に沿わないことをプーチン氏が何かするたびに、あり得ないというような態度で振る舞うべきではない。長年の同盟国であるシリアのアサド政権を支援する以外に、ロシアの軍事作戦は米国の片目をつぶすことを可能にしている。これに対する最善策はヒステリックにではなく、落ち着いて対応することだ。

ロシアはソ連時代のような軍事力を持たない。ロシアの軍事力を誇張しても何の役にも立たない。もしシリアの泥沼に深く引きずり込まれるようなことになれば、特に多くのロシア兵が犠牲になることになれば、プーチン大統領はシリアでのギャンブルを後悔するようになるかもしれない。

ありがたいことに、このような態度はオバマ氏の「泰然自若」なイメージとぴったりと合う。同氏は実際、最近の記者会見で、プーチン氏のシリア介入は「弱さゆえであり、強さからくるものではない」と語っていた。

第二に、オバマ大統領は確実に、シリアでロシアと米国の空爆作戦の「衝突回避」に向けた政策を国防総省に維持させるべきだ。偶発的な衝突は予期せぬ軍事的結果を生むだけでなく、反米的な態度を高めることで支持率向上を狙うプーチン氏にチャンスを与えることになるだろう。

最後に、オバマ氏はシリアでの大量殺りくを終わらせる解決策を見つける努力を一段と強めるべきだ。価値ある1つの考えとして、イラン核交渉でうまく機能した、国連安保理常任理事国にドイツを加えた6カ国(P5+1)協議を真似るというのがある。この戦略では、イランを含むシリアをめぐるすべての利害関係者の利益が考慮されることが必要となる。オバマ氏は協議の前提条件としてアサド政権の撤退を求めることはやめなくてはならない。だがこれで殺りくが止まるなら、払うべき価値のある代償と言えるだろう。

シリアが統一された、強力な中央集権国家に戻れないことはほぼ間違いない。しかしすべての当事者は過激派組織「イスラム国」に対する恐怖を共有しており、これこそがP5+1シリア交渉の共通した出発点になるはずだ。

シリア情勢が米国に理想的な結果をもたらすことはないが、慎重に事を進めることでロシアとの危険な軍事衝突を回避することはできる。そして、悪い状況をさらに悪化させないことも。