国連気候変動会議を控えてもエネルギー業界が強気な理由

  on
IBT151023  気候変動会議を前に
ロンドンで開かれた石油とマネー会議で発言する、エクソン・モービルのレックス・ティラーソン(Rex Tillerson)CEO Ben Stansall/AFP/ゲッティ・イメージズ

歴史的な国連気候変動会議を12月に控え、持続可能な未来を目指そうと誓ったのは諸国の政府だけではない。世界最大の化石燃料企業10社も、その努力の陰に控えている。しかし、ガス・石油産業にとっては、気候変動に関する一般の認知が進んでも、炭素集約的なエネルギーへの需要が堅調に推移するというバラ色の未来予測は変わっていない。

実際、エクソンモービルやシェル石油といった会社は、各国政府が約束した基準値を超え、地球にとって可能だと科学者が予測する以上に化石燃料が利用されるという予想を続けている。こうした産業の予測は、本当に将来のリスクを株主に知らせているかどうか、疑問視する声が上がっている。

「彼らは、気候変動に対するアクションを取らない未来を描いていますが、これは現実的な前提とは言えません。株主の視点からも、大きな懸念です」と企業の環境問題に関する取り組みを支援する非営利組織のCeresの理事、アンドリュー・ローガン(Andrew Logan)氏は言う。

イギリスの環境保護団体「カーボン・トラッカー」の最新報告書によれば、業界の予測は、成長の鈍化や、再生可能エネルギー技術の加速、排出を抑制しようとする政治的努力などによる化石燃料への需要の変化を反映しているとは言えないという。

こうした予測は、将来を直線的に予測したもので、太陽エネルギーの技術革新のようなことが起これば、より劇的な変化が広範にもたらされる可能性があると報告書は述べている。「彼らは、将来を予測するのに過去をあてはめているのです」とカーボン・トラッカー報告書の共同著者の1人、ルーク・スサムズ(Luke Sussams)氏は言う。

例えばエクソンモービルは、再生可能エネルギーの市場がより大きくなるため、2014年までに世界のエネルギー使用において石油、ガス、石炭が占める割合は、より小さくなると予測する。しかし、総合的に見れば、新興国市場における成長が続き、今後25年で需要はなお35%伸びると予測しているのだ。

しかし、100以上の国が、二酸化炭素の排出を抑制しようと取り組んでいることを考えれば、エクソンモービルの予測は過剰といえるだろう。この気候変動アクションシナリオでは、2030年までに人類は576ギガトンの炭素を排出すると予測する。この量そのものは、地球の気温上昇を2度以下にとどめるためとして示された565ギガトンを超えている。

これに対し、エクソンモービルの予測は2030年までに排出される炭素量を596ギガトンとしている。シェル石油に至っては、677ギガトンにも上ると予測している。つまり、こうした企業は、排出削減コミットメントを前提としてとらえていないのだ。「こうした企業は、現状に挑戦しようとしていないのです」とスサムズ氏は言う。

これはしかし、政治の問題のみではないと、報告書は指摘する。世界の人口が予測値の最高に達しなければ、エネルギー需要全体が予測を下回る。例えば、2つの主要な人口増加予測では、2050年までの人口は国連の予測よりも9億人少ないと見ている。

経済成長もエネルギー企業の明るい予測の足を引っ張るかもしれない。エネルギー企業の成長予測において、中国は重要だが、同国経済は最近失速の兆しを見せており、さらに冷え込むかもしれない。「エネルギー企業は中国の石油・軽油の需要に大きく依存しています」と、ローガン氏は言う。しかし、新たな交通規制やスモッグに悩まされる都市部の公害対策などにより、「そうなっていません」と同氏は言う。

再生可能エネルギーも、予測より早く化石燃料を上回るかもしれない。技術革新が急速に進む分野では、電気自動車や太陽エネルギーが燃焼系エンジンより安くなるということがいつ起こるか、起こらないか、予測することは難しい。

しかしすでに、再生可能エネルギーの技術は予測を超えている。例えば、設置済みのソーラーパネルの量は、国際エネルギー機関の予測をずっと上回るペースで来ている。

また、再生エネルギーの成長のカギを握る電気エネルギー保存のコスト削減も、業界の予測をはるかに超える速さで進んでいる。

さらに、化石燃料の需要には、政治的な逆風も吹いている。各国政府は、まもなくパリで行われるCOP21の会議に向け、何年も準備をしてきた。不可逆的な気候の変動から地球を守ろうと、これまでになかったほどの努力が行われてきている。

この動きに反応する石油会社もある。ノルウェーのStatoil社と、英豪のBHP Billiton社は、世界の気温上昇が2度以下に抑えられるというシナリオを作り、他社も同じモデルに続こうとしている。

しかし、米国企業はどこもこの挑戦を取り上げていない。

最近行われた会合で、エクソンモービルは、株主に対し、排出削減や再生可能エネルギーの挑戦などで、リターンが下がる恐れがあると警告をした。しかし、行動という点では、なお無限の需要を見込んでおり、北極奥地や、カネの掛かる世界中のオイルサンド(油砂)プロジェクトに手を出している。

実際、エクソンモービルやその仲間たちは、歴史の教訓を座右の銘にしているのかもしれない。各国は、意見の相違から、気候変動へのアクションについて、しっかりとした合意を作れないというものだ。

「この問題について政治的決断ができずに来た歴史から、今度もどうなるか分からないと、企業が考えても不思議はありません。しかし、行動できないだろうと読んで計画を立てるのは、よい賭けとは思えません」とローガン氏は言う。

*この記事は、米国版International Business Timesの記事を日本向けに抄訳したものです。(原文記事:Owen Davis 記者「Are Energy Companies Leading Shareholders Astray On Future Fossil Fuel Demand?」)