米国:年金コンサルタントへの規制、再び遅延する可能性あり

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初老の人
米国では、年金コンサルタントへの規制を求める声がある。 ロイター

オバマ米政権は、ファイナンシャルアドバイザーの利益相反を減らそうと尽力している。米議会下院は、同政権の努力を台無しにするような法案を通した。年金コンサルタントに対する規制を設けにくくする法案である。27日の予算案通過と新議長の選挙の影響で、その法案はあまり注目されなかった。

米国では数百万人が、退職後の蓄えを作るために、ウェルズ・ファーゴやモルガン・スタンレーのような企業の証券ブローカーを信頼する。しかし、そのようなアドバイザーの多くには、自身の金融上の利益よりも顧客の最大の利益を優先しなければならないという法的な義務がない。

消費者団体は長年、年金コンサルタントは受託者規制へ服従すべきだと働きかけてきた。受託者規制では、まずは顧客の最大の利益を第一に置くことを命じる。つまり、それは理論上は、一番安全で一番手数料が安い投資を求めることを意味する。コンサルタントがその投資からどのような手数料を獲得するかは、関係がない。

しかし、今のところ、規制は設けられていない。コンサルタントは、手数料が割高な製品を顧客に販売することも可能である。受託者が従うべき規制と比較すると緩いものである。

ホワイトハウスの推計によると、利益相反がある助言の影響で発生した手数料は、年間170億米ドルにのぼる。人々がうっかりミューチュアルファンドのような製品のために支払った手数料である。

業界グループはこの数字に疑問を呈する。そして、受託者基準を設ければ、コンサルタントたちが廃業に追い込まれるので、中産階級は金融アドバイスを得ることが難しくなると主張する。

27日に通過した法案は、ミズーリ州のアン・ワグナー(Ann Wagner)下院議員が提出したものである。その法案は、労働省が受託者規制を定めることを阻止する内容である。まずは、証券取引委員会が、業界にわたる規制の効果の可能性について、正確に研究しなければならなくなる。法案は245-286で通過し、上院の銀行・住宅・都市委員会に渡された。

消費者グループはそれを遅延戦術であると考えている。証券取引委員会は、何年もの間、ブローカーや年金コンサルタントに対する規制を設けようと努力してきたが、失敗している。

2010年、ドッド・フランク法により、証券取引委員会は、信託助言を提供しているブローカーに対する規則を創造できるようになった。しかし、再三の努力にもかかわらず、証券取引委員会は、まだ規則を創造できていない。

ホワイトハウスは、ワグナー氏の法案に反対を表明した。そして、証取引委員会がすでに「偏っているアドバイス」の効果を研究したことや、同委員会が規則を作るために労働省と協力してきたことを指摘した。

行政管理予算局は声明を発表し、「この法律は、害ある利益相反を避ける方法を損なうものである。利益相反は、企業、消費者、退職者およびその家族を傷つけている」と警告した。

民主党議員は、法案に反対した。民主党は、労働省によるルール作りに時間がかかってしまっているのは、業界の懸念に対応してきたためであると考えている。ウィスコンシン州のグエン・ムーア(Gwen Moore)下院議員は、「(規制は)消費者を保護することと、投資についての助言を得やすい環境を整えること、両方の適切なバランスをとったものとなるであろう」と述べた。

元証券取引委員会委員であるアーサー・レビット(Arthur Levitt)氏は先月、年金コンサルタントを取り巻くルールが存在していないことについて、「国辱」であると表現した。業界グループは積極的に、受託についてのルールつくりに反対活動を展開している。

*この記事は、米国版International Business Timesの記事を日本向けに抄訳したものです。(原文記事:Owen Davis 記者「House Quietly Passes Bill To Thwart Protections For Retirement Savers」)