米国:政治献金にイノベーション、特定の目的を実現するための寄付

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フレッド・アプトン氏
フレッド・アプトン氏 Getty Images

米国では、エネルギー委員会の上下院議長が共同で運用する寄付機関が設立された。同委員会には、石油・ガス産業から多くの献金が集まった。複数の議員による共同の募金機関は、以前より存在していた。しかし、それらの機関は、同じ地域で活動する同じ政党の議員たちのために、資金をまとめて集めることを目的としていた。今回は、離れた地域を代表する2人の議員による共同募金機関であり、献金におけるイノベーションである。

米下院では、ミシガン州の共和党議員であるフレッド・アプトン(Fred Upton)氏がエネルギー委員会の議長を務めた。一方の上院では、アラスカ州の共和党議員であるリサ・ムルコウィスキ(Lisa Murkowski)氏が議長を勤めた。アプトン氏とムルコウィスキ氏は、共同の募金機関を設立し、活動資金を集めた。

米国のある天然ガスパイプライン企業における経営陣たちは、その募金機関に8万750米ドル以上を入金した。その翌日、アプトン氏は、同氏が議長を務める委員会で、天然ガス業界の望みを叶えるような法案を通した。同法案は、新パイプラインへの承認プロセスを効率化する。また、州政府や地方自治体に対して、環境への影響を調査する期間を制限することを可能にする。

アプトン氏とムルコウィスキ氏が代表する地域は、お互いに数千マイル以上離れている。彼らの共同募金機関は、特定の政策をめぐって組織されたものであり、特定の目的を持つ人々から寄付が集まった。連邦選挙管理委員会(FEC)の元法律顧問であるラリー・ノーベル(Larry Noble)氏は、「委員会の議長へ働きかけるのはとても有効であり、ワンストップショッピングを可能とする。寄付が何を目的としているかも、非常に明確である」と述べた。

アプトン氏とムルコウィスキ氏は、支持者たちに働きかけることにより、さらなる寄付を集めることができる。ノーベル氏は、「(アプトン氏とムルコウィスキ氏は、)支持者たちに、『あなたたちは私にはすでに寄付してくれた。そして今なら、私たちの両方に寄付することができる』という」と解説した。ノーベル氏は現在、寄付への規制を求める活動グループ「the Campaign Legal Center」に所属している。

アプトン氏とムルコウィスキ氏は、米国の雇用を創出するために、天然ガスの輸出を擁護したと断言した。両氏は、IBTimesからの取材を拒んだ。

近年、共同の募金機関は、資金集めの手段として好まれるようになった。政治資金の調査団体「the Center for Responsive Politics」によると、2010年における選挙の段階では、共同募金機関は370であり、集められた資金は合計9,200万米ドルであった。一方、2014年の選挙では、機関数は521となり、合計金額は1億9,100万米ドルであった。

募金活動の専門家は、アプトン氏とムルコウィスキ氏のやり方は、立法化への影響という点においてわかりやすいと指摘する。上下両院のエネルギー委員会の議長へそのまま寄付が届く。つまり、石油・ガス業界は、自身に関連したことについて決定力のある人物へ、直接働きかけることができる。

ノーベル氏は、業界から募金委員会への寄付のタイミングも、問題であると指摘する。同氏は、「法案が検討中のタイミングでお金を寄付することは、あらゆる種類のアピールとなる。倫理的な問題である。なぜなら法案の投票を意識したものであるという明確な暗喩を含んでいる」と述べた。

最近公開されたデータによると、7月に設立されたアプトン氏とムルコウィスキ氏の共同募金機関は、16万8,000米ドルの寄付を集めた。IBTimesの分析によると、そのうちおよそ94%は、ガス・石油業界からの寄付である。

最大の寄付者は、ダラスのパイプライン企業であるEnergy Transferの経営陣たちであった。配偶者および同社のロビイストも寄付をした。総計すると、全寄付総額の半分近くを占める。

Energy Transferらによる寄付のタイミングは、業界が長年求めてきたことについて、上下両委員会が立法化を検討していたときと一致する。ムルコウィスキ氏は7月22日、「天然ガス輸出の要求があった場合、エネルギー省は、45日以内に決定を出さなければならない」という条項を含む法案を提出した。

消費者グループは、輸出が増加すれば、米国への天然ガス供給が制限され、価格が高騰すると警告した。メーン州の上院議員であるアンガス・キング(Angus King)氏は、天然ガス輸出の同意を制限する修正案を提出した。

7月29日、アプトン氏とムルコウィスキ氏は共同の寄付機関「the Murkowski Upton Victory Committee」を立ち上げた。翌日、上院委員会は法案を通し、天然ガスについての条項はそっくりそのまま残った。

当時、Energy Transferは、テキサス州とオハイオ州におけるパイプライン建築計画で、地元の反対にあっていた。同社の経営陣、配偶者、ロビイストは9月28日、合計8万750米ドルをアプトン氏とムルコウィスキ氏の共同の寄付機関に寄付した。翌日、アプトン氏は、「申請書が提出された場合、連邦は、輸出を30日以内に承認する」という締め切りを厳しくする法案を提出した。

アプトン氏とムルコウィスキ氏の共同募金機関には、Energy Transfer以外の石油関連企業からも資金が集まっている。Hunt ConsolidatedのCEOであるレイ・ハント(Ray Hunt)氏からは5,400米ドルの寄付があった。Exxon MobilのCEOのレックス・ティラーソン(Rex Tillerson)氏からは1万800米ドルの寄付があった。

ティラーソン氏は、米国の原油輸出禁止解除を求めていた。ティラーソンが共同募金に寄付してから数週間後、アプトン氏は、原油輸出を可能とするであろう法案を委員会で通した。また、ムルコウィスキ氏の上院委員会では、石油輸出を解除することを目的とした法律を通した。

*この記事は、米国版International Business Timesの記事を日本向けに抄訳したものです。(原文記事:David Sirota 記者、Andrew Perez  記者、「Congressional Energy Chairs Form Fundraising Committee, Rake In Oil, Gas Cash As They Push Bills For Fossil Fuel Industry」)