【米金融】持続可能性でも、リターンでも譲らないETFが始動ーーインパクト・インベストメント時代への先駆け

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ニューヨーク証券取引所
ニューヨーク証券取引所(2015年9月1日撮影) ロイター

気候問題に配慮したETFが、間もなく開始される。同ETFは、上場企業400社から構成されており、医療、IT、製造業、消費財等、多様な業種の企業を含む。温室効果ガスの排出量が多い企業の株購入を控えたいと考えている投資家は、エト・キャピタル(Etho Capital)のETFに資金を投入することができる。

エト・キャピタルは、有害な温室効果ガスを排出を減らすための行動を積極的に展開している企業だけを選んだ。そして、同時に、投資家に高いリターンを提供するという。

サンフランシスコを拠点とするエト・キャピタル(Etho Capital)共同代表であり、持続可能性分野の責任者を務めるイアン・モンロー(Ian Monroe)氏は、「サステイナブル投資(持続可能な投資)は、一般的には、パフォーマンスをあまり気にしないということになっている。私たちの任務は、全体の持続可能性とパフォーマンスの両方が優れているような『化石燃料フリー』投資商品を創造することである」と述べた。

気候に焦点を合わせたETFは、いわゆる「インパクト・インベストメント(Impact Investment)」運動の賜物である。米国を初めとした世界の投資家は、環境への負担が少ないこと、人権に配慮していること、労働者に適切な賃金が支払われていることなど、広い範囲の価値を反映しているファンドに引き寄せられる傾向がある。20代後半から30代前半の億万長者については、その傾向が特に顕著である。モルガン・スタンレーの研究所が2月に実施した調査によると、個人投資家のうち約71%が、その種の投資に興味がある。

特に、気候問題は、30日からパリで開催される国連気候変動会議を控えて、金融界で注目を集めている。200か国近くが参加する同会議では、世界的に温室効果ガスの排出を大幅に減らしていくことが合意されてきた。

まとまった投資資金は、化石燃料から確実に資金を引き上げられている。2月、ノルウェーの政府年金基金(8,500億米ドル規模)は、「環境や気候に配慮し、114社を避けた」と述べた。先月、カリフォルニア州知事を務めるジェリー・ブラウン(Jerry Brown)氏は、「同州の2大年金基金(CalpersとCalSTRS)が、石炭採掘企業20社への投資を売却せざるをえなくなる法律にサインした。

投資調査会社モーニングスターのシニアアナリストであるデイビッド・カスマン(David Kathman)氏は、「化石燃料フリー、炭素フリーのトレンドは、間違いなくある」とコメントした。

このトレンドを踏まえて、モーニングスターは8月、環境・社会・統治面に重きを置いているようなミューチュアル・ファンドやETFを測定するシステムを立ち上げた。カスマン氏は、「関心は高まってきている。人々はその種の情報を探している」と解説した。2016年初めには、ランキングが公開される予定である。

化石燃料関連の企業を排除しているETFは、エト・キャピタルの新ファンド以外にもある。しかし、モンロー氏によると、米国の複数セクターをカバーしているような広域ファンドは、エトETFが初めてである。同ファンドでは、パイプライン建設企業やガス供給企業なども排除されている。

モンロー氏は昨年、スタートアップ企業「オロエコ(Oroeco)」を立ち上げた後、共同設立者と共にエト・キャピタルを形作った。オロエコは、個々の投資における炭素を追跡するアプリを製作している。モンロー氏は、「私たちは、気候面や金融パフォーマンス面で最適化されたファンドを創造するために、使うことができると気づいた」と振り返った。

エト・キャピタルは10月、「気候リーダーシップ・インデックス(Climate Leadership Index)」を立ち上げた。同インデックスは、炭素関連株を追跡しており、間もなく開始されるETFのための足がかりである。

エト・キャピタルは、最も一般的に売買されている公開企業5,000社を調査し、温室効果ガス排出と、市場価値とを比較した。温室効果ガス排出には、直接的なオペレーションのほかに、電力としての使用やサプライ・チェーンの利用も含まれる。そして、エト・キャピタルは各企業に投資されている1ドル当たりの「気候効率」を決定した。

モンロー氏は、「もし、ある会社の株をX%所有しているとすれば、排出量においても同じ割合の責任がある」と述べた。エト・キャピタルによれば、エトETFに選ばれている400社は、S&P 500と比較して、1ドル当たり50%ほど排出量が少ない。

同ETFは、タバコ、武器、ギャンブルなどを扱う企業や、社会的責任に問題があるなど、いわゆるタブー企業も排除している。例えば、アグリビジネス企業「モンサント」は、環境効率は高かったものの、ETFには組み込まれない。モンサントは、最近、世界保健機構により、同社の農薬が人体に癌を引き起こす懸念を指摘された。

エト・キャピタルで採用されている企業は、1か月から10年の期間において、その他の企業よりも金融上のリターンが優れているという。モンロー氏は、「各業界で最も(気候)効率のよい企業に投資することは、金融面におけるリターンをアップさせ、ポートフォリオを改善してくれるようだ」と述べた。

一方、モーニングスターのアナリストであるカスマン氏は、現実はもっとずっと複雑であると指摘する。同氏は、環境や社会的側面を意識したファンドのパフォーマンスを分析した結果、残りのマーケットと大きな差がないと気づいた。同氏は、「持続可能性に配慮した高いパフォーマンスのファンドもあれば、持続可能性に配慮した低いパフォーマンスのファンドもある。よいパフォーマンスを挙げることもあれば、そうではないときもある。ポジティブな意味でも、ネガティブな意味でも、あまり違いはないようである」と説明した。

関心が高まりつつあるインパクト・インベストメントではあるが、小規模に過ぎないという声もある。インパクト・インベストメント研究会社「キャップロック・グループ(The Caprock Group)」の共同創設者であるマシュー・ウェザリー・ホワイト(Matthew Weatherley-White)氏は、「(インパクト・インベストメントは、)まだ小さな規模に過ぎないと考えている。数兆米ドルの市場に対して、数十億米ドルである」と解説する。

2005年に顧問企業を立ち上げた同氏は、かつてはスミスバーニー(SmithBarney)で働いていたが、次第にウォール街に嫌気がさすようになった。同氏は、「私は、金融上のリターンを何よりも優先するあり方に失望した」と振り返る。

同氏は、インパクト・インベストメントが当たり前になることを期待しているという。同氏は、「社会的・環境的に配慮しないところに投資することは、ばかげたことになるでしょう。1950年代に、工場のシフトに子どもを雇うことはありえないと考えたのと同じことです。20年、あるいはもっと早く、(インパクト・インベストメントは)普通の投資となるでしょう」と述べた。

非営利組織「米国グリーンビルディング協会(the U.S. Green Building Council)の設立会長であるリック・フェドリッツィ(Rick Fedrizzi)氏は、「取締役会では、社長に持続可能な計画を求める声がある。若年層は、勤めたい企業と勤めたくない企業の判断基準として、持続可能性を意識する」と分析した。

フェドリッツィ氏は、自身の著作『Greenthink』の中で、資本市場が「惑星を救う」ことができると論ずる。企業や投資家が、化石燃料の使用を減らし、自然資源を消費を控え、エネルギーを効率的に使う方向にシフトすると考えているのである。同氏は、「資本家であり、環境保護活動家でいるのが、OKであるという考え方である。責任ある環境市民になることができる」と述べる。

エト・キャピタルのもう一人の設立者であるコナー・プラット(Conor Platt)氏は、「今後数か月間は、個人投資家や機関投資家が、エトETFへどのような反応を示すかを知る大切なテスト期間となる。目標は、これを主流とすることである」と述べた。

*この記事は、米国版International Business Timesの記事を日本向けに抄訳したものです。(原文記事:Maria Gallucci 記者、「Wall Street Meets Climate Change With Fossil-Free Exchange-Traded Fund」)