パリ襲撃テロ:子どもへの差別を心配するイスラム家庭

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パリ郊外、サンドニ
フランス、パリ郊外のサンドニを警備する警官 Getty Images

フランスで生まれ育ったフランス系チュニジア人、サミア・ハツルビさん(30)のサクセスストーリーのような人生は、13日のパリ襲撃テロ事件の後、一転した。ハツルビさんの両親は、1970年代に労働者階級の移民として、フランスにやってきた。ハツルビさんと兄弟は、高等教育を受け、医学や法律の分野に従事できるようになった。しかし、今、ハツルビさんの両親は、ハツルビさんがフランスを去るべきだと考えている。

ハツルビさんは、「母は、私を心配して、子どもたちにフランスを去ってほしがっている。私たちには能力があるので、フランス以外の場所でも成功できると考えているのだ」と述べた。ハツルビさんによると、フランスのイスラム教徒は、汚名と偏見に直面し、生活が難しくなっているという。

フランスのイスラム教徒は、パリにおけるテロ以降、不信と敵意の高まりに直面している。まず、1月にシャルリエブド社とスーパーマートが襲撃されるという事件があった。そして、今月13日、パリでは一連の銃撃と爆撃があった。

フランス北部の郊外に住むファティマさんは、苗字を明かさないという条件で、「私たちは、社会が分離していることを心配している。私たちはフランスで生まれた。けれども、私たちの配偶者は違うバックグラウンドを持っていることもある。私たちの子どもは、他の子どもたちから、なぜ突然フランス人ではないかのような扱いを受けるのかを理解できない」とコメントした。

ツイッターのハッシュタグ「#NousSommesUnis」が人気となっているように、フランス市民の多くは、イスラム教徒へのサポートを表明している。しかしその一方で、イスラム教徒への報復ともとれるような事件が報道されている。18日、マルセイユでは、頭をスカーフで覆っていたイスラム教徒の女性が殴られ、カッターで切りつけられた。北フランスの町、エヴルーでは、街中にスプレー塗料で「イスラム教徒に死を」という落書きをされた。また、フランス人のイスラム教徒の多くは、SNSで憎しみのコメントを投げつけられたと報告した。

フランス人のイスラム教徒は、自身の子どもたちのことを心配している。子どもの外出を控えさせている親もいる。子どもが幼くても、成人していても、その心配は変わらない。

ハツルビさんは、「異文化理解のための財団(the Foundation for Ethnic Understanding)」で働き、16歳から21歳の労働者階級の女性を対象に、学校や職場での振舞い方を教えている。彼女の受け持っている生徒の多くは、パリ北部に位置するサン・ドニ(Saint-Denis)からやってくる。サン・ドニは、イスラム教徒が多く住む地域である。

ハツルビさんは18日に生徒と会うことになっていたが、誰も現れなかった。ハツルビさんは「両親に外出させてもらえなかったのでしょう。人々は怯えている」と説明した。

パリのイスラム教徒が多く住んでいるエリアで暮らすローリック・ドゥヴィノー(Lauric Duvigneau)さん(43)は、隣人の多くが自宅から出かけるのを怖がっていると述べた。

郵便局員をしているドゥヴィノーさんは、「イスラム教徒の家庭では、親も、子どもたちも、通りにあまり出なくなった。テロリストだと間違われないように、自衛しているのだ」とコメントした。

イスラム教徒であることをアピールすることを止められている学生もいる。ハフィントン・ポスト・アラブ(Huffington Post Arabi)によると、パリのソルボンヌ大学のある学生は、親からスカーフを頭にかぶることを止められた。また、ある学生は、家庭の外で宗教について話すのを控えるようにと警告された。

フランスのイスラム教徒たちが懸念しているのは、自警団を自称する人からの激しい攻撃だけではない。彼らの多くは、政府が、宗教と社会の自由に影響を与えてくることを恐れている。

トゥールーズ大学院に在籍中のある学生は、「政府や公的機関の反応は、人々が恐れていることの一つである」と説明する。その学生の研究テーマは、フランスにおけるイスラム教徒の若者とその宗教的自由である。

同学生は、「公的な秩序を保護するという意図で、宗教の自由を制限したり、イスラム教徒であることを公共の場で示することを妨げたりするような判断だろう。しかし、こういった措置は、バンドエイドで病気の治療をできると信じ込むかのようなことだ。セキュリティが高まるというのは幻想である。自由を少なくしても、問題の急進化は解決しないし、悪化するだろう」と分析した。

フランスのイスラム教徒は、高まっている緊張に対応しようと、最善を尽くしている。同学生は、「自分の子ども、甥、姪への助言としては、フランス人らしさを示すことである。私たちはフランスで生まれたし、それぞれの思い出と性格がある。イスラム嫌いの人たちや過激者を前にしても、相手にしないことだ」と述べた。

*この記事は、米国版International Business Timesの記事を日本向けに抄訳したものです。(原文記事:Sarah Mangla記者「French Muslim Parents, Terrified Of Backlash, Urge Their Children To Stay Indoors, Downplay Religious Identity」)