不正見抜けなかった東芝の監査法人、業務停止の可能性も

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東芝

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ロイター

東芝(6502.T)の不正会計問題で、証券取引等監視委員会が過去最高額の課徴金勧告を出したことで、焦点は東芝の監査を担当してきた新日本監査法人への金融庁の処分に移った。

金融庁と同庁傘下の公認会計士・監査審査会が同法人の調査を進めているが、長年にわたって不正を見抜けなかった責任は重いとして、業務停止命令など厳しい処分が出る可能性もある。

<新日本監査法人への厳しい視線>

証券監視委は7日、東芝に73億7350万円の課徴金を科すよう金融庁に勧告した。開示検査の事案では2008年のIHI(7013.T)への課徴金額約16億円が最高額だったが、東芝への課徴金額は4倍超に膨らんだ。不正会計の間、東芝が虚偽の財務情報に基づいて社債を大量発行していたことが大きな要因だ。

ただ、日本を代表する名門企業の不正会計の責任を追及する声は、東芝の経営陣だけでなく、同社の監査を長年担当してきた新日本監査法人にも向かっている。

「新日本監査法人は何をしていたのか。不正リスク対応基準を作ったのは、何のためだったのか」――。かつて金融庁の企業会計審議会で「不正リスク対応基準」の作成に携わった関係者の1人はこう嘆く。

オリンパス(7733.T)の粉飾決算事件を契機として、2013年に策定された不正リスク対応基準は、企業経営者などの意図的な行為によって生じる財務諸表の重要な虚偽表示のリスクに対して、監査手続きがどうあるべきか定めたものだ。

この基準には、会計監査人は「職業的専門家としての懐疑心」を保持し、リスクをかぎ取った場合には厳しく証拠を収集しなければならないと強調されている。

会計の専門家は、新日本監査法人の担当者が「職業的懐疑心」をもって、東芝の監査にあたっていたのかどうかに着目している。

<業務停止命令も視野>

金融庁と公認会計士・監査審査会は現在、急ピッチで検証作業にあたっている。関係筋によると、金融庁は年内をめどに、新日本監査法人と、同法人で東芝を担当していた業務執行社員への処分を決める方針だ。

金融庁のある幹部は「新日本監査法人の責任は重い」と話す。四大監査法人の一角で、しかもオリンパス事件で業務改善命令を受けたこともある新日本監査法人。

長年にわたって東芝の不正を見抜けなかった事実は重いとして、業務改善命令より重い業務停止命令も視野に入れて調査を進めているもようだ。

ただ、金融庁内には、不正の根源は東芝側にあるとして、監査法人に厳しい処分を出すことの弊害を懸念する声もある。

カネボウの粉飾決算で旧中央青山監査法人に2カ月間の業務停止命令を下した際、顧客企業が監査を受けられずに「監査難民」が大量発生し、資本市場が混乱した苦い経験があるからだ。

業務停止命令による監査難民発生の弊害を防ぐために、今回は業務改善命令と課徴金納付命令が同時に出される可能性もある。金融庁は監査法人への課徴金制度を2008年に導入。これまで適用事例はないが、課徴金納付命令の趣旨は当該監査法人に経済的ダメージを与え、再発防止に導くことにある。

<新日本への処分を信頼回復の一歩に>

「監査法人に対する信頼は、まさに瀬戸際の状況」――。金融庁が10月に立ち上げた会計監査のあり方を議論する非公開の有識者会議。公開された議事要旨では、毎回、出席者から厳しい意見が出されていることが分かる。出席者は監査への信頼が揺らぐ今日の状況を厳しくとらえ、監査法人に対するガバナンス・コードの必要性さえも議論に上っている。

金融庁は、会計監査への不信の高まりを重く受け止め、東芝や新日本監査法人の処分を決める前に同会議を立ち上げた。幹部のひとりは、新日本監査法人に厳しい処分を出すことで、監査の信頼回復への一歩につなげたいとしている。