来年のドル/円、強気派と弱気派が綱引き

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ドルと円

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ロイター

11月米雇用統計を受け12月米利上げは確定的となったが、来年の利上げペースをめぐって市場の見方は、ドルの「強気派」と「弱気派」が綱引き状態になっている。その結果、足元のドル/円JPY=EBSはほとんど動いていない。

どちらに軍配が上がるのか、その鍵を握っているのは、米経済の動向だ。底堅い消費と弱含みの製造業のバランスがどちらに傾くかも、重要な要素として注目されれている。

<強気派は来年135円説も>

強気派と弱気派を分けるポイントは、来年の米利上げペースの予想回数だ。強気派の多くは、年3─4回と見込んでいる。

野村証券・チーフ為替ストラテジスト、池田雄之輔氏は、3月に2度目の利上げがあると想定。ドル/円はそれまでに130円へ上昇するシナリオを描く。「これまで2回目の利上げは難しいとみていた人たちも、FOMCの利上げ見通し通りになるということに気づき、シナリオ変更を迫られる」と指摘。ドルは来年中には135円に上昇し得ると予想している。

米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる9月時点の見通しの中央値は、来年末で1.50%。現在のFF金利は0─0.25%。1回の利上げが0.25%ずつの場合、来年末までに5回の利上げとなる。

ロイターが4日の雇用統計発表後に実施したプライマリーディーラー調査では、政策金利は来年半ばが0.75%程度、来年末で1.125%になると予想された。今年12月の利上げを含めて来年央までに2回、来年末までなら3─4回の利上げの織り込みとなる。

ニッセイ基礎研究所のシニアエコノミスト、上野剛志氏も「来年3回程度の利上げはできるだろう」と予想、来年末にかけてドル/円は129円に上昇するとみている。

原油価格は前年比ベースでの物価下押し圧力が徐々に和らぐほか、米雇用環境は完全雇用に近づいていることから、今後は賃金上昇が徐々に進んで消費が堅調さを維持し、設備投資が改善すると見込んでいる。

<弱気派は来年1、2度利上げで打ち止めと予想>

一方、弱気派は、12月FOMCで利上げした後は、もう1、2回で打ち止めとみている。

みずほ銀行・チーフマーケット・エコノミスト、唐鎌大輔氏は、今年12月の利上げ後は、来年3月か6月にもう1度、利上げがあるだけとみる1人だ。ドル/円は期待を織り込みながら、1─2月に127─128円程度まで上昇するにとどまると予想している。

最大の懸念材料はドル高の悪影響だという。主要通貨に対するドル指数.DXYは、昨年夏の80ポイント付近から今年の春先に100まで上昇。その後も高水準で推移している。トムソン・ロイターの調査によると、米S&P総合500種指数採用企業の2015年第3・四半期決算は、製造業を中心に前年同期比で0.7%の減益となる見通しだ。

「今の米国に、ドル高を引き受ける余裕はないようにみえる。どんどん利上げしてドル高が容認される状況とは考えにくい」と唐鎌氏はみる。

今年5月の高値125.86円がピークだった可能性があるとみるのは、三井住友信託銀行のマーケット・ストラテジスト、瀬良礼子氏。利上げは、来年3月に1回と、年央に向けてもう1回、あるかないかだという。

ドル/円が2018年に向けた緩やかな利上げを織り込んだ水準は、124─125円と指摘。「米国の内需がある程度あったとしても、ドル高や、海外経済が弱い中で、米国一国だけで成長していくのは難しい」と話している。

<好調・不調が混在する米経済指標>

米利上げペースの予想が大きく食い違うのは、米経済の行方がはっきりしないからでもある。

企業業績は鈍いが、足元の雇用は好調だ。11月の米雇用統計では、非農業部門の雇用者数が市場予想を上回っただけでなく、過去の分も上方修正された。失業率は7年半ぶりの低水準で、賃金の上昇ペースも悪くない。

11月のISM製造業景気指数は48.6とリセッション(景気後退)の最中にあった2009年6月以来の水準に沈んだが、非製造業指数は55.9と依然として高い水準を保っている。

プラスサイドが米経済全体に波及していくのか、それとも製造業を中心としたマイナスサイドが悪影響をもたらすのか、ドルの強気派、弱気派ともに来年の指標を固唾(かたず)を飲んで見守ることになりそうだ。