原油急落で米投信業界にあまねく広がる痛み

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イランの原油輸送船

イランの原油輸送船

ロイター

原油価格の急落は、米国のありとあらゆるミューチュアル・ファンド(投資信託)に打撃を与えている。最優秀クラスのポートフォリオマネジャーとて例外ではなく、彼らも投資のタイミングを見誤ったために出資者に損失を与え続けているのが実情だ。

多くの運用担当者にとっては、原油価格の底打ちが逃げ水のようにいつまでたっても実現しない厄介な存在になっている。例えば8日の市場でも、米原油先物は2009年初め以降で初めて1バレル=36ドル台に突入して安値を更新した。

大方が年内としていた原油価格反発の予想時期は今や来年に先送りされているが、ゴールドマン・サックスに至っては価格がさらに20ドルまで下落する恐れがあると警告している。

4日には石油輸出機構(OPEC)が減産を見送り、世界的な供給過剰感が強まるとの観測が広がった。

こうした中でミューチュアル・ファンドもヘッジファンドも等しく利用するエナジー・セレクト・セクターSPDR上場投資信託(ETF)(XLE.P)の過去1カ月のリターンはマイナス10%となった。このETFの資産は110億ドルだ。

ジョン・ダウド氏が運用するフィデリティのセレクト・エナジー・ポートフォリオ(20億ドル)は、年初来のリターンがマイナス17.77%。ただしエネルギーファンドの平均リターンはマイナス20%近くなので、まだましな方といえる。

リッパーによると、米国のミューチュアル・ファンド全体では過去3年間でエネルギーセクターへの投資をおよそ40%も削減し、投資比率は8.36%から5.11%に下がった。

それでも原油安がなお痛みをもたらしていることがすぐにわかる。

典型的なのは天然ガス大手チェサピーク・エナジー(CHK.N)への投資だ。多くのファンドは、チェサピーク株が反発する展開に賭ける取引を行ったが、株価はさらに下落。ビル・ナイグレン氏が運用する60億ドルのオークマーク・セレクト・ファンド(OAKLX.O)などが損失を被った。

ミューチュアル・ファンド業界で選別投資にかけては達人の1人とみなされているナイグレン氏だが、9月末までの半年でチェサピーク株を2570万株へと40%近くも買い増し、株価がおよそ41%下落するという事態を目の当たりにする羽目になった。

このチェサピーク株の値下がりが大きな原因となり、モーニングスターによると、オークマークの年初来リターンはマイナス2.48%と同業ファンドの86%に対して見劣りする成績に沈んだ。

10億ドルのイートン・バンス・ボンド・ファンドを運用するキャスリーン・ガフニー氏は、チェサピークの社債に目をつけ、保有ポートフォリオの1%相当額を購入した。チェサピークは、エネルギー市場の混乱局面を乗り切れる十分な流動性と価値ある資産を有すると考えたからだ。

しかしバンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのインカム指数でみると、ジャンク級格付けのエネルギー社債のスプレッドは7日に3カ月半ぶりの大幅上昇を記録し、1169ベーシスポイント(bp)と2009年3月以来の高水準になった。この1日の投資リターンはマイナス1.63%だった。

これは通常の値動きから判断すれば極めて大きな振れで、指数が前日から悪化したのは金融危機の最も深刻だった時期以降でたったの4日しかない。

ガフニー氏は、2008年の金融危機のように危険なほどの巻き戻しが起きたが、当時を思い起こさせるのは価格変動の激しさだと述べた。