2016年の最大のリスクは引き続き原油価格

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ガソリンスタンド

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ロイター

今年1年間、金融市場の主役がずっと原油価格だったように、2016年も同じ状況が続きそうだ。しかし、あまりにも原油安の状況に慣れ親しんでしまうと、ここから改めてどこまで価格が落ち込むのか「新たな」リスクとして見当をつけるのが難しい。

金融市場は2014年中盤からエネルギー価格下落に伴うデフレの影響にお付き合いしている格好で、その副産物は多方面に広がっている。

全世界で石油関連株の時価総額は1兆ドル以上失われた。

2010年以降に発行されたエネルギーや鉱山企業の社債は約2兆ドル。多くは小規模のシェールガス会社が発行した高利回りのいわゆる「ジャンク」債で、社債の格下げが相次いでいるほかデフォルト件数も増加している。

一方、原油安を発端とするデフレの恐怖が引き金となり、欧州中央銀行(ECB)は今年から債券買い入れプログラムの実施を余儀なくされた。その結果、2兆ユーロに上る欧州の国債利回りはマイナス圏に沈んでいる。

新たな原油価格の持続的な下落が予想物価上昇率に与える影響は、米連邦準備理事会(FRB)のような引き締めに向かう中銀にとっても、また緩和継続中のECBにとっても同様に気がかりだ。

ロシアやブラジル、東南アジアのコモディティ輸出国に与えた打撃の規模はさらに大きい。これらの国々の為替は急落し、2015年は1998年以来、初めて新興国市場から差し引きで資金が流出する見通しだ。

原油価格下落の規模を考えると、これだけ市場の多くのシナリオが狂った原因を見つけるのは難しくない。

2014年の6月以降、北海ブレント原油先物は1バレル115ドルから65%値下がりして40ドルまで下落した。価格崩壊の多くは昨年後半の半年間に起きたが、積み上がった供給過剰と中国、新興国の急速な需要減速が重なり、今年は相場が反発するとの期待は雲散霧消した。

原油価格が現状近辺にとどまり、せいぜい60ドル付近までしか反発しないとの見通しが続けば、関連する多くの国や企業には大きな問題となる。来週米国の利上げが控えているのであればなおさらだ。

しかし、中東紛争から地政学、中央銀行の政策の「過ち」、市場流動性ショック、はたまたEU離脱を問う英国の国民投票まで、銀行が説明する市場リスクは数えきれないが、原油価格がここからさらに半値に落ち込むというリスクを挙げる人はごくわずかだ。

ブレント先物価格は今週40ドルを割り込み、米原油先物も37ドルを割り込んだ。移動平均でみても55ドルを下回っており、1年半で半値まで下落した後も値下がりが続いている。

<原油の新秩序>

原油相場に対して長期の弱気派であるゴールドマン・サックスは、2016年に相場が反発するか安定するとの見方は全く的外れであり、米原油先物価格は現状から約5割安の20ドルまで値下がりする可能性があるとみている。

同社は今週、「温暖な冬、新興国の成長鈍化、イランの国際制裁解除(の可能性)が原因でさらなる在庫積み増しのリスクがある。これらの要素は近い将来、予想が下向き修正されるリスクがあることを示唆している」と顧客に呼びかけた。原油価格が物流および貯蔵能力を超える水準まで下がれば、相場は崩壊して生産コストの1バレル=20ドルに突入する可能性があるというのだ。

もし、この想定が正しいと証明されれば、今年起きた市場の混乱は新たな局面を迎える。

しかも、世界の市場から外貨準備やエネルギー輸出国の稼いだオイルマネーが流出するするなど、市場のストレスは多くの面で増幅されるだろう。こうした貯蓄の減少とFRBの利上げが重なると、コモディティの「スーパーサイクル」と債券市場の活況がともに反転し、時間とともに長期金利の上昇圧力は強まる。

サウジアラビア通貨庁の海外資産だけをみても、総額は前年比で1200億ドル以上減少した。

長引く原油価格の低迷と金利上昇が重なると、企業の信用度や新興国市場にとって有害な影響を及ぼすかもしれない。

格付け会社ムーディーズは、石油・鉱山企業の社債のデフォルト率は来年上昇し、これらの企業に「はかりしれない悪影響」が及ぶと予想。ヘッジプログラムや固定価格契約、既存のキャッシュバランスの減少などが一時的な緩衝剤の役割を果たし、2015年にこうした事態の到来を遅らせたにすぎないと指摘した。

しかし、原油価格が回復せずにさらに下落した場合、事態は一変する可能性がある。

ムーディーズ・インベスターズ・サービスのマネージング・ディレクター、ダニエル・ゲイツ氏は先週、「流動性の縮小と資本市場へのアクセス制限によって、さらに多くの企業がデフォルトに近づいている」と指摘した。

疲弊した新興国の株式や債券に回帰したいとウズウズしている投資家にとってのメッセージは明らかだ。

モルガン・スタンレーは今週、顧客に対して「2016年は引き続きガードを堅く」と警告している。