米国産原油の輸出解禁、待望の裁定機会はお預け

  on
原油掘削施設

原油掘削施設。

ロイター

米政府が40年に及んだ原油輸出を間もなく解禁する。原油現物のトレーダーは、過去数年で最大の裁定機会がもたらされるのではないかと期待をかけてきたが、国際的な原油価格がここ一年で変化したことなどから、望みは薄そうだ。

米議会は幅広い歳出法案の一環として、原油輸出の解禁に合意した。しかしアナリストによると、米国産原油が相当規模で輸出されるようになるには、数年とは言わないまでも数カ月を要するとみられる。

原油輸出の禁止措置によって、比較的安い米国産原油を、価格がより高い国際市場に輸出するという裁定機会が制限されてきたため、大半のトレーダーは輸出解禁を歓迎した。ところがこのところ国際石油価格が落ち込んだため、今では海外で米国産原油の買い手を見つけられない状態だという。

1年前には、米国産標準油種WTIは北海ブレント油をバレル当たり5ドル下回っていた。しかし16日には、WTI先物は2月きりから5月きりまでブレント油を上回っている。これは2010年以来、初めての現象だ。

エネルギー・コンサルタント会社、ターナー・メーソン・アンド・カンパニーの執行バイスプレジデント、ジョン・オーアーズ氏は「現在の需給環境では、輸出しようという気にさせる裁定機会が存在しない」と語る。

輸出が解禁されれば小規模な動きは出そうだが、市場の構造が変化しない限り、大規模な輸出は実施されそうにないとオーアーズ氏は言う。

<輸送コスト>

トレーダーやアナリストによると、大量の輸出は期待薄だとしても、一部の国々に適宜輸出していく機会は生まれるかもしれない。

例えばベネズエラやブラジルといった国々は最近、米国産と似たライト・スウィートと呼ばれる軽質の西アフリカ産油の購入を増やしているほか、アジアの製油企業は時々アラスカ産原油を買っている。アラスカ産は輸出禁止措置の数少ない免除対象となっている。

ターナー・メーソン・アンド・カンパニーの報告書によると、米国産原油の買い手は主に欧州と中南米になりそうだ。しかし、米国産油と国際価格のスプレッドがどの程度あれば、収益機会が生まれるのかを計算するのは難しい。

米メキシコ湾から欧州に原油1トンを輸送するコストは約16.25ドル、つまり1バレル当たり2.22ドルと試算されている。

現在、輸出候補とされる米ライト・ルイジアナ・スウィート油WTC-LLSは、北海ブレント油とほぼ同値で取引されているため、輸送コストを賄えない。

<国内で消費>

仮に米国産原油が国際価格を大きく下回ったとしても、米国内で軽質油需要が旺盛なため、国内販売に回される可能性がある。

米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)の最新推計では、同国の原油生産は来年、日量57万バレル減る見通しだ。

また、米国は今も大量の原油を輸入し続けている。原油価格の下落が長引くようなら、国内の原油生産量はさらに減る可能性もある。

船舶コンサルタント会社、ナビジスティクス・コンサルティングのデービッド・センタマンド社長は「我が国は国内で生産された軽質油をすべて必要としているため、輸出が解禁されようがされまいが、あまり関係ない」と語った。