来年は想定以上の中国人民元急落リスクに要注意

  on
中国人民元

中国人民元

ロイター

来年の外国為替市場における大きなリスクを探り当てたいのなら、中国人民元が想定以上に急落する事態に最も注意を払わければならない。

過去1カ月で大手銀行が発表した来年の見通しでは、人民元は向こう1年で5─7%下落するとの予想が大勢だ。しかし中国が低迷する輸出のテコ入れ、つまり競争力回復を図る必要性に関心を向けていることや、中国人の根強い外貨建て資産への投資意欲を踏まえると、人民元の下落率は10%ないしそれ以上になるとの声もある。

ソシエテ・ジェネラルのグローバル金利通貨戦略責任者、ビンセント・シェノー氏は「人民元安の整然とした動きが薄れていくことがリスクだ。来年全体で1ドル=6.80元に下落するなら秩序ある動きといえるだろうが、それが3カ月で起きれば秩序性は薄まる」と述べた。

足元のドル/人民元は6.47元前後で推移している。

人民元が急落すればどうなるかは今年8月11日、中国人民銀行(中央銀行)が3%の切り下げに踏み切った際の状況が参考になる。

金融市場は世界的に動揺をきたし、2週間足らずのうちに米国株が4年ぶりの大幅下落を記録した。

国際銀行間通信協会(SWIFT)のデータによると、人民元は今や国際決済通貨第4位の地位にあり、トムソン・ロイターとEBSという銀行間取引の2大プラットフォームでも取引高第5位となるなど、影響力は大きい。

<資金流出加速か>

12月初めにロイターが実施した為替予測調査では、オンショア人民元の対ドル相場は1年後に6.55元まで下落するとの見通しが示された。

外為市場における上位6行の予想を見ると、バークレイズは6.90元、HSBCとドイツ銀行、JPモルガンはいずれも6.70元、シティは6.69元、UBSは6.80元だった。

JPモルガンのストラテジスト、ニコラウス・パニギルツォグロウ氏は「中国は既に通貨を切り下げており、12月の資金流出額は恐らく大きい。当局が人民元を特に実効レートベースでさらに押し下げようとすると仮定すれば、資金流出が一段と増えると考えるのが無難だ」と話す。同氏は、今後1年で中国から毎月300億─400億ドルが流出すると試算したが、今年8月や9月ほど劇的にはならないかもしれないとの見方を示した。

もっとも中国当局は人民元の動きを引き続きコントロールし、ドル建ての借り入れ額が大きい中国企業の破綻を懸念して通貨安誘導はじわじわとしたペースでしか行わない、というのが銀行関係者の支配的な声だ。

中国は欧米投資家に対する国内証券市場の開放を着実に進めながらも、国内の貯蓄資金の海外投資は抑制する態勢にあることが分かっている。

投機筋からすれば、こうした国内資金をせき止める当局の「ダム」がどれぐらいで決壊し、人民銀行が制御不能と判断するのがいつになるのかが大きな問題といえる。

人民元は実効レートでなお15%程度過大評価されており、潜在的な人民元の下落とそれに伴う資金流出の余地があるとみるのはヘッジファンド、SLマクロ・パートナーズのディレクターのスティーブン・ジェン氏で、中国の外貨準備3兆4400億ドルに対して中国人の外貨建て資産への需要規模も3兆ドルあると推計する。

ジェン氏は「この種の投資として今年夏以降で既に5000億ドルが流出した可能性がある。外貨準備は今後2─3年で2兆ドルまで減少を続けてもおかしくない」と述べた。

このほか人民元安が進めば、欧米諸国にとって輸出業者が打撃を受けたり経済全般がデフレショックに見舞われる恐れがある、と別のロンドンを拠点とする複数のヘッジファンドマネジャーが懸念を表明した。

また輸出において中国の競争相手であるアジア各国は、人民元安に対応して自国通貨切り下げに動くかもしれない。

ただ、実際にどの国や地域が切り下げるかで見方は分かれている。UBSはマレーシアリンギやインドネシアルピア、JPモルガンは台湾、シンガポールを候補に挙げた。