新日本監査法人に初の課徴金、監査法人は淘汰の時代へ

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1万円札と100ドル札

1万円札と100ドル札。

ロイター

東芝(6502.T)の不正会計問題で、金融庁が同社の会計監査を担当していた新日本監査法人に行政処分を課したことで、あらためて監査業務に対する視線が厳しくなりそうだ。同庁は、監査制度の信頼性回復のために監査法人向けのガバナンスコードの策定に向けた検討に乗り出した。

透明性の向上につながれば、監査法人の競争も促され、淘汰の時代が訪れる可能性もある。

<初の課徴金命令のインパクト>

「初の課徴金命令というのは重い」――。新日本監査法人に対し、公認会計士法に基づき課徴金命令が出たことを受け、大手監査法人の関係者は言葉少なに語った。

2008年に導入された監査法人への課徴金制度。旧中央青山監査法人に出された業務停止命令の際に、監査を受けられない企業が大量発生した「監査難民問題」を回避するために設けられた制度だ。しかし、監査法人の財務基盤が弱ければ、経営そのものに影響を与えかねず、その半面で金額が少なければ処分のインパクトも小さくなるとして、運用が難しいとされてきた。

今回、金融庁があえて課徴金命令に踏み切ったのは、東芝の不正会計問題を看過できないと判断したためだ。同社は、指名委員会等設置会社にいち早く移行し、他の上場企業に先行してガバナンス体制を整備してきたとの評価を得てきた。ましてや、金融庁が旗振り役となって策定したコーポレートガバナンス・コードが導入された矢先に勃発した問題でもある。「長年にわたって不正会計を見抜けなかった新日本監査法人にも相応の処分を課すべき」との意見が庁内で大勢となった。

新日本監査法人の2015年6月期の監査業務収入は775億9700万円。課徴金の金額20億円は決して大きくはない。しかし、同法人が大きく信用を失うのは必至だ。9月末時点で公認会計士3504人、被監査会社4123社を抱える国内最大手の新日本監査法人は、今後、顧客流出や監査報酬の引き下げ要求に直面するリスクがある。

<監査法人の透明性向上へ>

「新日本監査法人への処分で問題を終わらせてはならない」――。金融庁の幹部はこう指摘する。金融庁が10月に発足させた会計監査のあり方に関する懇談会では、監査法人が顧客企業から独立し、「職業的懐疑心」を発揮して不正の芽を摘むための仕組みについて議論が進んでいる。

2回の議論を通じ、懇談会で支持する声が多くなっているのが監査法人に対するガバナンスコードの導入だ。企業がガバナンスコードを公表して、自らの戦略や企業統治のあり方を投資家に示すことで透明性が向上しているように、監査法人向けのガバナンスコードを導入すれば、顧客企業やその企業に投資する投資家も、監査法人の取り組み方針や強みなどの特性を把握できる。さらに、監査法人の監査報酬の額だけに注目が向かう現状が改まり、監査法人が「質」の良し悪しで選別のふるいにかけられるメリットもある、との指摘もある。

「日本の監査制度の品質を高め、国際競争力を持たせるためにも、良い意味で監査法人が淘汰されることが必要だ」。懇談会ではこんな意見も出ている。

今回の新日本監査法人の処分をきっかけにガバナンスコードが導入されれば、200を超える監査法人は生き残りをかけた競争の時代に入る可能性もありそうだ。