2016年石油の展望:価格下落は生産者に打撃、消費者に朗報

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ガソリンを入れる
ウェンディ・ヤニェス(Wendy Yanez)さんは米マイアミにあるガソリンスタンドで車にガソリンを入れていた。 写真:ジョー・ラエドル(JOE RAEDLE)さん/ゲッティイメージズ

原油価格の継続的な下落は、エネルギー生産者にとって辛いニュースかもしれないが、米国の消費者には嬉しいニュースである。来年の石油・天然ガス市場がどうなるかは分らないが、燃料価格は依然として安値が続いているため、燃料費を抑えてきた消費者の購買意欲は高まる可能性がある。

ガソリンの価格は原油価格の動向に追随する可能性がある。これは、米国の製油所が一日何百万バレルもの原油を購入するためである。2014年6月、サウジアラビアから米国などへ供給された原油価格が最高値をつけたが、その後、新興国などの需要鈍化とともに、価格はピーク時の3分の2近くまで下落した。さらに来年、イランでは核開発を縮小する見返りとして原油禁輸などが解除されるため、イラクの原油生産量が日量50万バレル増加すると見られている。このため世界の石油市場で価格がさらに下落する可能性がある。

WTI原油のスポット価格(WTI: ウエスト・テキサス・インターミディエートの略)の変動を表した。  FindTheData

ブレント原油(Brent crude)は、原油価格市場において主要な位置を占める原油の一つで、主に英国の北海にあるブレント油田から採鉱される硫黄分の少ない軽質油である。このブレント原油(Brent crude)の価格が、28日に約3%下落し、11年ぶりの安値に近づく急落となった。ガソリンの価格は先週、1ガロン2ドル(約240円)を下回ったが、これは2009年以来の安値である。通常、ガソリンの価格は製油所がメンテナンスを終えて、より安価な冬用のブレンドガソリンに切り換えるため、冬に価格が下がる傾向がある。しかし、今シーズンの価格の下落は、世界的な石油市場が不安定なため、いつもより一層大きい。レギュラーガソリンは米国で現在、平均1ガロン1.99ドル(約239円)前後となり、昨年の平均価格2.28ドル(約274円)に比べて約29セント(約35円)安値であると、ガソリン価格の比較で人気のウェブサイトGasBuddy.comは報じた。

エネルギーコストの下落が続けば、2016年に、米国の世帯でガソリン消費の増加となる可能性はある。燃料価格は一年以上にわたり下落が続いている。消費者は来年への厳しい予想とともに支出状況を見直す時期であるが、もはや誰も低価格が単に一時的なものとは思わないだろうと米ウォールストリートジャーナルは今週報じた。

米国人が食料や衣料といった消費財により多くの現金を支払えば、石油会社や大手石油輸出国は、来年も厳しい歳出削減を行うことになる。

世界最大の原油輸出国であるサウジアラビアは、十年来の原油価格の下落にともなう広範囲に及ぶ取り組みの一環として、28日、予算削減を発表した。

サウジアラビアのサルマン(Salman bin・Abd al-Aziz Al Saud)国王は28日、閣議を開き、2016年の予算を承認した。2016年の歳出は8,400億サウジリヤル(約27兆円)となり、2015年の9,750億リヤル(約31兆円)から14%減少するとメディアは報じた。サウジアラビア政府によると、来年の歳入額は5,138億リヤル(約16兆円)となり、これは2015年の6,080億リヤル(約19兆円)から約15.5%減となる。歳出から歳入を引いた財政赤字は3,262億リヤルとなり、日本円にして約10兆5千億円の財政赤字の見込みとなった。

「予算は、石油価格の下落と、地域や国際レベルでの経済・金融課題を反映したもの」とサルマン(Salman)国王は28日に国営テレビで述べた。

サウジアラビアのサルマン国王は2015年12月23日、サウジアラビアの首都リヤドで開催されたサウジアラビア諮問評議会(Shura Council)に参加した。  ロイター/バンダル・アル-ジャラウド(BANCAR AL-JALOUD)さん/サウジアラビアロイヤルコート/配布資料

原油価格の下落が収益に打撃を与え続けているため、大手石油・天然ガス会社は、いずれも2016年予算を大幅削減している。米カリフォルニア州に本社を置く石油関連会社シェブロンは今月、長引く原油価格の下落が打撃となり、同社の2016年の設備投資は266億ドル(約3兆2,000億円)で、2015年に比べ約24%減となると発表した。オランダのハーグに本拠を置くオランダと英国の企業である石油エネルギー企業のロイヤル・ダッチ・シェルは先週、2016年の予算は330億ドル(約3兆9,700億円)となり、前年比約20億ドル(約2,400億円)減少、つまり5.7%減になると発表した。

シェブロンやシェルなど多くの大手石油関連企業が今年、数千人の労働者を解雇したが、コスト削減を行うためにこれらの傾向は2016年も引き続き行われるだろう。石油・ガス部門の企業は石油価格の下落が始まって以来、掘削作業員、トラック運転手、地質学関係者などを含む総計25万人を削減したと、米ヒューストンに拠点を置く産業コンサルタント会社のグレイブス・アンド・カンパニーが11月下旬に予測した。

特に北米の石油掘削業者は、2016年に倒産の波に直面するだろう。多くの石油・天然ガス生産者が今年、石油・天然ガスの価格の急落による多額の負債に苦しみ、アメリカ合衆国連邦倒産法第11章に従い、あるいは法廷外の取決めによって破産の手続きを申請した。倒産法第11章による申請はこれまでに担保付負債と無担保負債を合わせて約130億ドル(約1兆5,000億円)に上ると倒産処理を専門とする米国の法律事務所ヘインズ・アンド・ブーンLLPの弁護士は述べた。

「少なくとも2016年の前半を通じて、この傾向は継続するか増加するだろう」と米国の法律事務所ヘインズ・アンド・ブーン社の社員、スティーブ・ぺザノスキー(Steve Pezanosky)さんは説明した。

2013年7月28日、米ノースダコタ州ワットフォード市外にあるバッケン・シェール岩層の油井でジェイ・ゲーリッシュ(Jay Gerish)さんは石油掘削の作業を行っていた。  アンドルー・バートン(ANDREW BURTON)さん/ゲッティイメージズ

負債を抱えて困窮している多くの石油・天然ガス会社は、プライベート・エクイティ・ファンドへ資産売却を進めるかもしれない。プライベート・エクイティ・ファンドは包囲しているセクターを間近で見て待っているとぺザノスキーさんは述べた。

「価格が改善されれば、利益を上げる機会は必ずある」とぺザノスキーさんは述べた。「多くの資本が投げ売り状態の石油や天然ガスを購入するために集められている」と加えた。

しかし、時間が経てば原油価格が改善されるかどうかは定かでない。

米国エネルギーアナリストは、ブレント原油価格が2016年に1バレル平均56ドル(約6,700円)になると予測した。一方で、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)価格は、ブレント価格より平均5ドル(約600円)安い1バレル51ドル(約6,100円)となると、米エネルギー情報局は12月8日のレポートで予測した。

投資銀行ゴールドマン・サックス社のアナリストは、価格は回復することなく1バレル20ドル(約2,400円)に突入すると予測した。この水準では、高コストがかかっている米国の生産者は、生産を停止し、世界市場への供給を縮小し、市場のバランスを取り直すことを余儀なくされる。

国際エネルギー機関(IEA)は今年11月に「世界エネルギー展望」を発表しているが、石油が低価格になって支出と投資の大幅削減が進められるなかで、1バレル80ドル(約9,600円)前後に戻る可能性は2020年頃になると予測している。

*この記事は、米国版 International Business Times の記事を日本向けに抄訳したものです。(原文:MARIA GALLUCCI 記者「Oil Outlook 2016: Falling Crude Price Means Good News For Consumers, More Pain For Producers」)