砂糖はなぜ体に悪いか:警告ラベルに一定の効果との研究まとまる

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IBT160115 砂糖の害警告ラベル
加糖飲料に健康被害の警告ラベルを貼るという条例案が続々と提出されている。糖尿病や肥満を減らすには、他の取り組みも併用する必要があるとする専門家も多い。 JUSTIN SULLIVAN/GETTY IMAGES

一人の母親が、食料品店の棚からソーダを手に取った。カートに入れようとしたそのとき、何かが彼女の目を引いた。ラベルに、主原料の砂糖がどれほど体に悪いかという詳細な警告が書かれているのだ。お母さんはソーダを棚に戻し、歩み去った。

もしくは、そのようになればよいと、公衆保健担当者は夢を見始めている。

蔓延する糖尿病と肥満の対策として、議員や厚生担当の役人、弁護士らは、原因となる糖分の多い食品から人々を遠ざける方法をいろいろ試している。13日に発表された研究で、砂糖が健康に及ぼす害について警告ラベルを貼るという作戦は、親がそうした飲み物を子供に買い与えることを抑制しうることが示された。しかし、飲料産業との戦いが過熱するにつれ、消費者の購買行動を変え、最終的には、増え続ける生活習慣病にブレーキをかけるには、警告ラベルでははるかに足りないと専門家は指摘するようになった。

「警告ラベルで肥満を撲滅できるとは誰も思っていないと思います」とPediatrics誌に共同研究を発表したペンシルバニア大学のクリスティナ・ロベルト助教(Christina Roberto、医療倫理・保健政策)は言う。

この研究は、2381人の患者をオンラインで調査したもので、単にカロリーを表示しただけのラベルと比べて警告ラベルがどの程度効果的なのかを検証した初めての研究の1つだ。研究によれば、親たちは、警告を見なかった時より見たときの方が平均して20%甘い飲み物を買うのを控えるということが分かった。

米糖尿病学会によれば、毎年140万人のアメリカ人が新たに糖尿病患者となる。直接的な治療費から、障害や若くして死に至るなど間接的なものも合わせると、糖尿病のコストは2012年、2450億ドル(約29兆円)に達した。米国の成人の3分の1以上が肥満に苦しみ、その医療的コストは1470億ドル(17兆3000億円)に達すると見れらている。

肥満と糖尿病の原因は、遺伝や食べ物、運動習慣など数多く、人によっても異なる。しかし、ソーダやフルーツジュース、紅茶やエナジードリンクなどの摂取と肥満、2型糖尿病、心疾患や他の健康上のリスクには関連性があるという証拠は増え続けている。

飲料業界との戦いの中、健康意識の高い人々は、タバコ産業との戦いから学ぶようになっている。タバコの時には、子どもたちが手を出さないよう呼びかける教育運動や、広告の制限、公共の場での喫煙禁止などの取り組みが行われた。

甘い飲み物への警告について、ニューヨーク大学の教授で『食の政治学』の著者であるマリオン・ネスル( Marion Nestle)氏は、「タバコの警告が前例となるなら、この取り組みが効果的であることは分かっている」とメールで回答を寄せた。

6月、サンフランシスコは、紅茶やソーダ、スポーツドリンクなどの甘い飲み物に、「警告:糖類を添加した飲料を飲むことは、肥満や糖尿病、虫歯の原因となります」とする警告ラベルを貼ることをほかの都市に先駆けて承認した。しかし、コカコーラやレッドブルといった会社が名を連ねる米国飲料協会が言論の自由の侵害だとして同市を訴えたため、この警告はまだ実施されていない。

サンフランシスコの訴訟で、ボルチモアが止まることはなかった。ボルチモアのニック・モスビー( Nick Mosby)市会議員は11日、関係業界や広告、レストランのメニューなどに、「警告:砂糖を添加した飲み物を飲むことは、虫歯、肥満、糖尿病の原因となります」とするボルチモア市保健部のメッセージを付けることを求める法案を提出した。

実際、ボルチモアの発議はサンフランシスコの条例の影響を受けていると同市保健委員のリーナ・ウェン(Leana Wen)氏は言う。また、同市市民からの懸念も背景にあるという。

「太り過ぎや肥満の子どもたちが増えているという住民の意見がずっとあったのです。警告ラベルは非常に重要だと考えています。健康に悪いと知っていたら別の選択をしたのにという親たちの声をたくさん見聞きしてきたからです」とウェン氏は言う。

飲料業界は、甘い飲み物を買うのを控えさせようとする措置に激しく反対している。2009年から2015年までに、ソーダ業界は、シカゴやサンフランシスコ等の市や州で、甘い飲料に課税するという法案を廃案にするためのロビー活動に、少なくとも1億600万ドル(125 億円)を投じた。しかし、公益学センターの分析によれば、カリフォルニア州バークレーでは、そうした税が議会を通過した。

警告ラベルについて、業界のスタンスはほぼ一枚岩だ。「消費者は自分に適した選択をするための情報を求めており、米国の飲料会社はすでに、製品の前面に明確なカロリー表示のラベルを付けています。飲料が糖尿病や肥満といった複雑な状態に導く唯一のものであるかのように指摘する警告ラベルは不正確であり、誤解を招くものです」と米国飲料協会のローレン・ケイン(Lauren Kane)広報部長は、ボルチモアの提案に対するコメントを求められて述べた。

ソーダや加糖のお茶、スポーツドリンクなどを控えさせる手段としては、警告ラベルはほんの入り口で、より健康的な食生活を送らせるには、ほかの措置も必要だろうという人々もある。

「警告ラベルはまだ使用されていないので、効果についてはまだ何の情報もありません。(しかし、)他に何もなければ、それによって意識が高まりますし、それだけでもいいことです」とネスル氏は言う。 一方ボルチモアでは、ラベルを貼る以外に、より健康的な食生活を送ってもらうよう、買い物が不自由な地域に無料の食材配達を行ったり、自動販売機の商品により健康的な選択肢を設けるなどの選択肢も検討していると、公衆保健委員であり医師でもあるウェン氏は言う。同氏は、まだ数は多くないけれども成人型の糖尿病と言われる2型糖尿病に苦しむティーンエイジャーや、体重90キロ以上の8歳児といった、ショックだった患者を診た経験を思い出す。

「はしかやエボラ出血熱のように子供たちが死んでしまう病気が流行ったら、確実に出来ることを全て行うでしょう。もっと多くの子どもたちが病気になったり亡くなったりするのを待っているわけにはいかないのです」と彼女は言う。

*この記事は、米国版International Business Timesの記事を日本向けに抄訳したものです。(原文記事:Elizabeth Whitman記者「Why Is Sugar Bad For You? Proposed Warning Labels For Soda Could Quell Consumption」)