ダボス2016年:世界のCEOが経済「悲観論」を展開、その背景とは

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  • 釣りをする人
    2016年1月13日、「モスクワ・シティ」とも呼ばれるモスクワ国際ビジネスセンターの近く、氷に覆われたモスクワ川で男性が釣りをしていた。 ロイター/マキシム・ツェイブ(MAXIM ZMEYEV)さん
  • 上海の堤防を歩く警備員
    2016年1月18日、中国、上海の浦東(ほとう/プートン)新金融地区の黄浦(こうほ/ホワンプー)江に近い堤防を警備員が歩いていた。 ヨハネス・アイゼレ(JOHANNES EISELE)さん/AFP/ゲッティイメージズ
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多国籍企業の経営者が継続する地域紛争と中国経済の鈍化への懸念を感じながら、世界経済の先行きについて悲観論を募らせている。20日から23日までスイス・ダボスで開かれる世界経済フォーラム(通称ダボス会議)開催前夜の19日、ロンドンに本拠を置くプライスウォーターハウスクーパース(PwC)社によって行われたCEOに対する調査で明らかになった。

この調査は1,400人以上のCEO(企業経営者)を対象に行われたが、全体のわずか27%が今年の世界経済成長は加速すると予想した。この数値は昨年に比べて10%減少し、2014年に比べて17%減となった。全CEOの約4分の1が2016年の世界経済は明らかに後退すると予想したが、これは昨年の調査に比べて17%増となった。

「CEOらは、ちょうど一年前に比べて、大幅に低い楽観的予測を立てている」とPwCのデニス・M・ナリー(Dennis M. Nally)会長は記者でいっぱいの部屋で調査報告書を発表した。「ボトムライン、つまり趨勢(トレンド)は悪化している」と加えた。

米国のCEOらは基本的に悲観的に見ている。わずか12%が2016年の世界経済は改善すると予想しているが、昨年は55%が改善すると答えていた。

PwCの調査は、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)のためにこのアルプスのスキーリゾート地に集まった世界的指導者や投資家を対象に、今後の経済予想について行われた。

今年の総会には世界100か国以上から、政財界の要人や学者や文化人ら2,500人以上が出席し、日本からは、甘利明経済再生担当相、黒田東彦日銀総裁、内堀雅雄福島県知事らが各種セッションに参加する。ダボス会議は、多国籍企業経営者や国際的な政治指導者など、トップリーダーが一堂に会して、健康や環境等を含めた「世界情勢の改善」をめざした議論を行う場となっている。ネットワーキングの作成など、世界的な銀行やコンサルティング会社によって引き受けられるものもある。

PwCによる調査での厳しい予測は、世界各地でのリスクに対する深い懸念の中で語られた。例えば、世界の大都市でのテロ攻撃の脅威、ロシアとウクライナの力による継続的な衝突、同時に、中国南東での領海問題などである。CEOの74%が、各地での紛争が世界的に広がるリスクがあるとして大きな懸念を挙げており、次いで長年にわたって続いてきた「過剰規制」を嘆いた。

CEOらは、世界第二位の経済国である中国経済の鈍化に引き続き不安を感じている。世界の製品において、中国からの需要が減少するのではないかという不安は地球上に拡大している。少なくとも原料の主要生産者のあいだでは不安が広がっている。ブラジルの壊滅的な景気後退は、中国からの大豆の受注の驚異的な減少によって増幅された。オーストラリアとカナダの採掘作業は、中国の鉄鋼メーカーが供給過剰に直面するにつれて鉄鉱石などの鉱石の受注を制限したため、困難な状況に陥った。

主要新興国市場での経済的困難によって、中国の鉄鋼、鉄鉱石などの鉱物の需要は減少している。写真は2005年4月6日、上海で鉄鋼の荷降ろしをしている労働者を撮影した。  チャイナ・フォト/ゲッティイメージズ

中国の株式市場では、ここ数か月にわたり株価が急落している。これにつれて、東京やニューヨーク市場でも全面安など不安定な動きが続いた。

このような動きはさらに強まるかもしれない。19日、中国の国家統計局は、2015年の国内総生産(GDP)の成長率は物価変動の影響を除いた実質で6.9%であったと発表した。これは前年の7.3%を下回って25年ぶりの低水準となった。PwCは中国の成長率は今後さらに減速すると予測している。

「経営者らは内心、多くの問題を懸念しているというのが妥当なところだ」とナリー会長は述べた。

ますます不安定になるグローバル経済の課題に対して多くの人が不安を抱えている。しかし、PwCによる調査では、CEOらは収益を増加させて保護する自社の能力に関して、不釣り合いな程の楽観論を持っていることが示された。CEOの35%が、2016年に自社の収益を増加させることに「非常に自信を持っている」と答えている。また、ほぼ半数のCEOが今年、従業員数の増加を見込んでいると答えた。

地球上のいくつもの地域で顕著な改善が見られるのだが、経済成長に関する明らかに悲観的な考えは、地域での重大な変化を覆い隠している。

インドのCEOの3分の2近くが、インド経済の見通しに自信を表明した。ナレンドラ・モディ(Narendra Modi)インド首相による政府の市場改革の公約を反映した気運がそこには現れている。

欧州のCEOは、昨年は2番目に楽観的な回答を寄せていたが、今回は最も悲観的な回答をした。昨年10月に北アフリカのチュニジアで起きたテロ、11月のパリ同時多発テロ、打ち続くギリシャの債務危機、難民の大量流入の中での軋轢、英国の欧州連合(EU)からの離脱に関する国民投票が行われることになったことなどが影響している。

スペインの変化は特に顕著だった。スペインのCEOの54%は2016年に売上高が成長するという楽観的回答をしたが、これは前年比19%増であった。

PwCのノルベルト・ウィンケルヨハン(Norbert Winkeljohann)ドイツ担当シニアパートナーは、欧州での一部の自信回復は、低金利、エネルギー価格の急落と同時にブラジルなど新興国市場での困難を取り払った成果、制裁解除が行われた最近のイランの新たな可能性などが反映されていると述べた。

また、近年の欧州の状況は非常に憂鬱なもので、遂に底を打ったようにも見えると同氏は語っている。

「あまりも長い間、あまりにもひどい状況が続いてきたが、現在、そこからのより前向きな考えも見られる」とPwCのイアン・パウエル(Ian Powell)英国担当シニアパートナーは述べた。

*この記事は、米国版 International Business Times の記事を日本向けに抄訳したものです。(原文: PETER S. GOODMAN 記者「A man fishes on the ice-covered Moskva river near the Moscow International Business Center, also known as "Moskva-City," on Jan. 13, 2016.」)