インドの通信規制当局、Facebookの無料インターネットサービスを禁止

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  • フリーベーシックスに反対
    2016年1月2日、インド南部カルナタカ州都バンガロールで、フリーソフトウェアに抗議するデモ隊がフェイスブックの無料インターネットサービスである「フリー・ベーシックス」に抗議のプラカードを掲げていた。同デモ隊は「フリー・ベーシックス」はインターネットを独占すると述べた。 マンジュナス・キラン(MANJUNATH KIRAN)さん/AFP/ゲッティイメージズ
  • フェイスブック
    インドの通信規制当局(TRAI)は、あらゆるウェブサイトへのアクセスに同一料金を課すよう企業に義務付ける規制を発表した。これにより、米フェイスブックの無料インターネットサービスは事実上禁止されることになった。 ジョナサン・ナクストランド(JONATHAN NACKSTRAND)さん/AFP/ゲッティイメージズ
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インドはまもなくフェイスブック(Facebook)の最大のマーケットになるだろう。しかし、インドの通信規制当局(TRAI)は同国のソーシャルプラットフォームの拡大に大きな影響を与えている。同国では人口の80%以上が依然としてオフラインである。

8日(現地時間)、インドの通信規制当局(TRAI)は「いかなるサービスプロバイダーも、データサービスに、コンテンツに応じて異なるデータサービス料を課してはならず、差別的データサービス料金を課してはいけない」としてインターネットの中立性を支援すると発表した。

新規制はフェイスブックと提携するインドの通信事業者リライアンス・コミュニケーションズが提供している、一部ネットサービスの利用を無料とする「フリー・ベーシックス(Free Basics)」に関して言及していない。しかし、新規則は、データ料金を負担することがないソーシャルネットワークを含むアプリケーションにユーザーがアクセスすることを禁止しているため、事実上、フェイスブックをシャットダウンすることになる。フェイスブック側は「フリー・ベーシックス」はインドの低所得者層のオンラインサービスへのアクセスを可能にするためのものと主張している。

2014年7月、フェイスブックは「残りの50億人」をネットにつなげるプロジェクト「Internet.org」としてフェイスブックを含む13のサービスをデータ課金なしで使えるモバイルアプリ「Internet.org」を発表した。しかし批評家は、これはフェイスブックに、インドなど新興国のハイテク市場でのアプリ販売の拡大など過度の影響力と不当な利益につながるものであると批判した。

市場調査会社のeMarketer社の統計によると、フェイスブックのユーザー数は1億6,700万人以上に膨れ上がり、2016年のインドの成長率は25%が見込まれるとしている。そのほとんどすべて(92.9%)がスマートフォン経由でフェイスブックにアクセスするもので、同社にとって「フリー・ベーシックス」がどれほど重要かを示していると伝えた。

ピンク: 利用が少ない国。 濃紺: 利用が多い国。  フェイスブック 2015年12月

「インドでは人々の所得が低く、データサービスは依然として高価である」とテックピニオン・ブログ(Techpinions blog)関係者のビランチ・ダマニ(Viranch Damani)さんは語った。

ユーザーのフェイスブックへの無料アクセスや他のウェブサイトやサービスへのアクセスを可能にした「フリー・ベーシック」の魅力は明らかであり、フェイスブック禁止の影響は非常に大きい。

「当局の決定はフェイスブックにとって痛手である。おそらくユーザー数に影響が出るだろう。加えて、フェイスブックが『フリー・ベーシックス』を使ってユーザーを獲得してきた他の市場への先例になるだろう」とジャックダウ・リサーチ(Jackdaw Research)のジャン・ドーソン(Jan Dawson)主任アナリストがアイビータイムズに語った。

インドは「フリー・ベーシックス」を使用できる39か国のうちの1つにすぎないが、この規制を受けてすべてが変化する。「フェイスブックの成長の多くが、一部のコンテンツをデータ通信料無料でユーザーに提供するいわゆる『ゼロ・レイティング』の恩恵を受けてきた。このため、今後、その成長に何が起こるのかを見ることは興味深い」とドーソン主任は述べた。

アフリカでは同サービスが、ザンビア、タンザニア、南アフリカなど主要市場を含む20か国で利用可能である。またラテンアメリカではメキシコやブラジルなど6か国、一方、アジアでは、インドネシア、イラク、パキスタン、タイで展開されてきた。

インドは人口12億人を超えているが、インターネットへアクセスするのはその20%未満の人々である。「フリー・ベーシックス」は、地球上の「残りの50億人」をネットにつなげたいとするフェイスブックの取り組みの中で重要部分を占める。同サービスはフェイスブックのパートナーとなった世界各国の携帯電話事業者によって提供されている。インドの場合、フェイスブックと提携するリライアンス・コミュニケーションズが、ユーザーにインターネットへの無料アクセスを提供している。

「Internet.org」はインターネットにアクセスするだけの余裕が現在ない人でもインターネットにアクセスできるようになるという課題を克服するために立ち上げると、マーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)フェイスブック最高経営責任者(CEO)は約3年前のプロジェクト開始時に述べている。しかしザッカーバーグCEOが語った「インターネット」は多くの人が使えるほど広大でオープンではなかった。「フリー・ベーシックス」へのアクセスは特別に選ばれた人の「壁に囲まれた庭」バージョンのインターネットであり、フェイスブックにとって重要なサービスだった。

ネットの中立性を求める人々からの苦情に対応して、フェイスブックは「フリー・ベーシックス」開始から2年後の2015年5月、オープンプラットフォームの構築を行い、あらゆる業者、非営利団体、政府にプログラムのウェブサイト構築を許した。オープンプラットフォームの許可と同時に、フェイスブックは「フリー・ベーシックス」を宣伝する巨大な広告や新聞の一面に広告を出すなど、販売促進に多額の資金を投入した。

2015年12月30日、ムンバイの街中に立てられたフェイスブックの「フリー・ベーシックス」の広告の側をバイクに乗った人が通っていた。  ロイター/ダニッシュ・シディクイ(DANISH SIDDIQUI)さん

フェイスブックは、インドでの試みがどれほど重要であると認識しているかを示し、ザッカーバーグCEOはインドの英字新聞「ヒンダスタン・タイムズ(Hindustan Times)」紙の特集ページで「わたしたちはネットの中立性を十分サポートしている。インターネットはオープンであって欲しい。ネットの中立性は、より多くの人とつながることを含んでいて対立の中にはない。ネットの中立性と世界的なつながりという2つの原則は共存する」と述べた。

12月にTRAIがデータ・サービスの差別価格に関する諮問書を公表したことに続き、規制と世界最大のソーシャルネットワークの間で議論が高まっている。

ソーシャルメディアの巨人フェイスブックは「フリー・ベーシックス」を使用しているインド人に対してTRAIに「デジタル上の平等」を求めてTRAIに電子メールを送信するオンラインキャンペーンを開始した。TRAIはこれに積極的な反応は示していないが、フェイスブックに世論に関与しないように警告し、キャンペーンは未熟な多数決主義であると述べた。

フェイスブックのザッカーバーグCEOは今回の規制について「残念」と自身のFacbookタイムラインに声明を投稿した。しかし「インドでの状況が今後どのようになるのかは不透明であるが、障壁を撤廃してインターネットに接続していない人も容易にネットに接続できるように努力を続ける」と加えた。

インドはフェイスブック最大の携帯電話市場になると予測されているが、インド政府による新たな規制の決定が、その拡大を阻む可能性がある。上の写真は、人の目の中に写し出されたフェイスブックのロゴマークで2015年3月13日に撮影された。  ロイター/ダド・ルビ(DADO RUVI)さん

*この記事は、米国版 International Business Times の記事を日本向けに抄訳したものです。(原文: DAVID GILBERT 記者「Facebook Free Basics Internet Service Banned In India On Net Neutrality Concerns」)