COP21の目標達成のため、世界炭素価格の導入を――石油大手社長訴える

  on
IBT160212 国際石油週間
ロンドンの本社で会見に臨むBPのボブ・ダッドリー社長。COP21合意への理解を示した。 ロイター//SUZANNE PLUNKETT

世界最大手の石油・ガス会社のトップが10日、二酸化炭素排出に世界価格を採用するよう主張した。BPのボブ・ダッドリー(Bob Dudley)社長が、政策決定者は、再生可能エネルギーその他の低排出エネルギー資源への投資インセンティブを作るべきだと述べたのだ。

これはロンドンで行われた国際石油週間の会合での発言で、BP社は2035年までは1パーセントずつ二酸化炭素の排出が増えると見ており、このレベルでは、地球温暖化制限の国際目標に届かないだろうとダッドリー氏は警告し、「世界的に炭素に課金するシステムが必要だ」と述べた。同社の直近の推定では、アジアにおける急成長と世界人口の増加により、2013年から2015までに世界のエネルギー消費は37%増えると予測していると指摘した。炭素課金システムは「それぞれが自分の役割を果たすインセンティブになろう」と同氏は付け加えた。

今週の石油総会は、12月にパリで行われた気候変動サミット以降初の、石油・ガス業界の大規模な会合となる。パリ会議では、世界約200か国の指導者らが、炭素排出を減らし、世界を石油・ガス・石炭から太陽エネルギーやある種のバイオ燃料のような低・ゼロ排出燃料へとシフトするという包括的合意に至り、地球温暖化の上限を、工業化以前のレベルより2度未満に抑えるという目標を設定した。

ダッドリー氏は、炭素が制限される世界における石油・ガス生産の未来についてのセッションで発言した。総会組織委員会によれば、これは、地球温暖化対策のために開催する初めて国際石油週間となる。気候学者によれば、温暖化問題には発電所や乗り物における化石燃料の燃焼が直接的に関わっている。

「気候は常に、後からの付け足しでした」と米エネルギー大手コノコ・フィリップス社の元副社長で、総会のプログラム委員会議長を務めたラファエル・バーマイヤ(Raphael Vermeir)氏は述べた。しかし、パリサミットに照らし、発明家や経営陣等から、気候の問題を議題の上位に据えよという圧力が強まったのだという。「『このことを話し合うべきだ。蓋をしておいてよい問題ではない』というコメントが山のように寄せられたのです」と同氏は言う。

石油・ガス会社は何十年にもわたって、炭素削減政策を抑止しようと戦い、気候変動の科学に異論を唱えたりしてきた。しかし昨年、BPほかの大手企業は、炭素課金を含め、気候変動対策を支持するようになった。この政策は石油掘削や使用のコストを上げるかもしれない。しかし、天然ガスや、燃焼時に石油や石炭より炭素排出の少ない燃料への投資を増やすことで、企業の得になる可能性もある。

昨年BPは、積極的に天然ガスへと軸足を移動した。10月に、中国の電力会社に、液化天然ガスを供給する100億ドル(約112 兆円)の契約を結んだ。3月には、エジプトにおける天然ガス開発に120億ドル(約135兆円)を投じた。ロイヤル・ダッチ・シェル(英国・オランダ)はBGグループ(英天然ガス会社)を買収しつつあり、この700億ドルの取引により、シェルは世界最大の液化天然ガスの生産者となろう。

ロンドンの総会で、ダッドリー氏は、炭素排出を減らす一番の近道は、発電所や乗り物に天然ガスの利用を増やすことだと述べた。

しかし、気候変動対策を議論してはいるものの、石油・ガス会社が化石燃料の掘削を止めたり、新たな資源を探そうとしたりしているという動きは示さなかった。

ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究者が2015年、ネイチャーに発表した研究によれば、2度未満という目標を達成するには、石油埋蔵量の3分の1、天然ガスの2分の1、石炭の80%を燃やしてはいけないということになる。この数字は、低炭素の世界では、カナダの油砂のほとんど、南極の石油・ガスの全て、世界のシェール・オイルとガスのほとんどを利用してはいけないということを意味する。

しかし、世界が石油、ガスに飢えている限り、エネルギー企業がこうした資源を地中にとどめておく理由はないとテキサス大学エネルギー研究所アシスタント・エネルギー技術政策ディレクターのフレッド・ビーチ(Fred Beach)氏は言う。

現在大荒れの石油市場だが、国際エネルギー機関はなお、2040年の石油需要は1日1億350万バレルに達するだろうと予測しており、これは2014年の1日当たり9050万バレルより14%増加している。 「製品を買うのは石油・ガス会社ではありません。企業は消費者の求めるであろうものを生産しているだけなのです。世界規模で見ると、その需要に何らの減退は見られません」とビーチ氏は言う。

石油動力の自動車や化石燃料の電力に代わる、もっと手ごろで現実的な選択肢が出来れば、石油・ガスの需要はこの先変わることもあるだろう。しかし、別の供給源を拡大させるには、何十億ドルもの研究開発が必要だ。石油価格により会社の経営が圧迫される中、難しい投資だ。

世界の石油供給が需要を大きく上回るという恐れの中、原油価格は2014半ばのピークから70%も下落している。石油価格形成で重要な位置を占めるブレント原油は10日現在、1バレル30ドルを超えたところで取引されている。

価格崩壊の中、BPは2015年の税引き後の損失を64億ドル(約7,180億円)と報告した。これはこの20年間で最悪の数字だ。今月2日に発表された同社の1年の収益は前年より121億ドル、半分以下に下がって59億ドルとなった。米国第2位の石油企業シェブロンも、2015年第4四半期は、この13年間で初めてマイナスとなるだろうと述べた。

「このように原油価格が下落し、キャッシュフローが制限されると、クリーン・エネルギーへの投資は手の届かない贅沢となってしまいます。もっと喫緊の課題は、この2017年を何とか乗り切り、次の上昇期に向けて最も良い位置に立つにはどうすればよいか、ということになってしまうのです」とS&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのスチュワート・グリックマン(Stewart Glickman)氏(エネルギー・エクイティ研究グループ長)は言う。

国際石油週間のプログラム議長バーマイヤ氏は、石油価格がさらに長い間低いままにとどまるのではないかという懸念が会合に蔓延していた」と述べた。「もしそうなれば、それは経済の脱炭素化のよい前兆ではありません。少々押し戻されることになるでしょう」と彼は言った。

この記事は、米国版International Business Timesの記事を日本向けに抄訳したものです。(原文記事:Maria Gallucci記者「BP’s Bob Dudley Urges Global Carbon Price To Meet Paris Climate Change Goals」)