英国:EU離脱で大西洋両岸の銀行が慎重な態度

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ロンドンの町並み
2016年2月17日、ロンドンのスカイラインにテートモダン(国立近代美術館)の建物が立ち並ぶ。 カール・コート(CARL COURT)さん/ゲッティイメージズ

英国の欧州連合(EU)からの離脱を求める動き、いわゆるブレグジット(Brexit: ブレクシットとも)が過去数週間にわたり加熱している。英国で人気の高い政治家の一人で、与党・保守党の有力メンバーでもあるボリス・ジョンソン(Boris Johnson)ロンドン市長が「離脱」を支持すると表明した。しかし銀行家は、もし英国がEUから離脱した場合、同国経済の金融路線は、これまでとは異なる活路を求めて踏み出すことになると警告している。

欧州最大の銀行である英銀HSBCは、もしブレグジットが国民投票で採択された場合、EU離脱によって1,000の投資銀行の業務がロンドン本社からパリへ移行することになると述べた。ドイツ最大の銀行であるドイツ銀行(Deutsche Bank)は昨年、英国がEUを離脱すれば英国外に9,000のポストを移すことになるだろうと述べた。

「銀行が一晩でロンドンから消えることはないが、英国が国民投票でEU離脱を採択すれば、時間とともに銀行は消滅することになる」とゴールドマン・サックスの幹部は英国のEU離脱に関する国民投票について、英紙「タイムズ」のオプ・エド(op-ed: 社説の反対側にもうけられる新聞社とは関係の無い著名人が意見や見解を著したもの、論説)で書いている。

利害関係は大きい。世界的な金融のハブと幅広い英国経済、双方に対するロンドンのステータスは高い。金融セクターは英国の国内総生産の12%を占めており、そのうち3分の1は海外クライアントへのサービスによるものであると英国に拠点を置く金融サービスグループのTheCityUKは報じた。金融サービス事業は、他の産業すべてを統合したもの以上に大きな収支黒字を生み出している。

金融サービス部門は、英国の産業の中でも最大の収支黒字を生み出してきた。  ONS Balance of Payments Yearbook

EUを離れるために長期にわたって続いている戦いが外国人投資家を不安に陥らせるのではないか、と銀行は懸念を募らせている。一方で、調整がつくか不確実な状況によって、金融サービス事業は英国以外へと押し出されている。英ロンドンのシティーは英国の金融・商業の中心地だが、ヨーロッパにおける世界の金融の窓口であり、現在、英国のシンクタンクであるZ/Yenグループは国際的競争力を示す指標として世界金融センター指数をまとめて年に2度(3月・9月)リポートを公表している。

しかし、22日に発表されたJPモルガン・チェースのアナリストによる分析によると、投資家はブレグジットによって結果的に発生する不確実な状況から逃げ出すだろうし、英国にとって金融ハブとしての大切なステータスは「不安」にさらされることになると述べている。

「不確実な時期が、英国に大きなダメージを与えるだろう」とダグラス・フリント(Douglas Flint)英銀HSBC会長はロイターに語った。

ロンドン市長のボリス氏が21日、EU離脱を支持すると表明したことによって戦線はさらに激しくなり、上記の懸念も拡大している。EU残留を主張するキャメロン(David Cameron)英国首相への反対連合は増大して、首相によるEU残留のための条件の交渉に圧力をかけている。このような中でドイツのメルケル(Angela Merkel)首相などヨーロッパの政治家は、金融規制の譲歩には強い難色を示している。また、メルケル首相は移民制限を交渉に持ちだしたら、ドイツは英国のEU離脱を引き止めないとしている。

金融市場は政治上の動きに迅速に反応した。英国のポンドは22日、対ドル2.3%下落となった。これは2009年の年初以来最大の下げ幅となった。

2016年2月22日、英国ポンド対米ドルの変動  ロイター

これらはほんの始まりかもしれない。ゴールドマン・サックスはブレグジットは約20%ものポンドクレーター(落ち込み)を作り出すと予測している。JPモルガンのアナリストは、英国のEU離脱は英国に「極端に無防備な資本逃避(政治的,経済的混乱やリスクを回避するために特定の国や商品から別の国や商品に多額の資金が移動すること)」を発生させて「事業活動の急激な低下」のリスクを高めると述べた。

これらの懸念は英国内外、数多くのグローバルに活動を展開する銀行にも波紋を広げる。シティグループは、EU離脱によって英国は7万5,000件の業務を失うと推定している。スイス・ユニオン銀行(Union Bank of Swiss: UBS)は、英国経済はGDP(国内総生産)を2.8%も縮小する可能性があると述べた。

英ブックメーカー(賭け屋)は、英国が国民投票で欧州連合(EU)から離脱する可能性が高まったと予想するオッズを発表しているが、英国の金融監督機関は英国の人口のほぼ半分が支持しているブレグジットのオッズに対して賭けに出ているように思われる。2月9日の英「フィナンシャル・タイムズ」紙は、英国の金融監督機関がまだEU離脱の影響について銀行を調査していると報じた。

キャメロン英首相は20日、英国のEU加盟是非を問う国民投票を6月23日(木)に行う方針であると表明した。

*この記事は、米国版 International Business Times の記事を日本向けに抄訳したものです。(原文: OWEN DAVIS 記者「Banks On Both Sides Of The Atlantic Wary Of UK Breaking Away From European Union」)