G20:財政刺激を呼びかける米国、中国・ドイツは賛同せず

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中国・上海
フェリーから撮影した、中国・上海の風景 BLOOMBERG VIA GETTY IMAGES

主要20か国の財務相・中央銀行総裁会議(G20)が中国・上海で開催されている。各国は出足が悪かった2016年の世界経済をなんとかしたがっている。米国のジェイコブ・J・ルー(Jacob Lew)財務長官は、財政刺激を訴える。しかし、他の国々、特に中国とドイツは関心を示さないようだ。

米国経済の回復は、財政政策が成長促進に貢献したことを意味している。これを実績として、ルー長官は、G20に出席している各国財務相に財政刺激を呼びかける。特に、中国やドイツといった政府予算にゆとりがあるところに対してはそうである。

国際通貨基金(IMF)の元チーフエコノミスト、サイモン・ジョンソン(Simon Johnson)氏は、「この状況で、どの程度の刺激が見込まれるのか? 多くはない。理由はいろいろある」と述べた。

IMFは、財政政策の拡大を支持し、「大胆で、多角的な行動」をとるように呼びかけた。その行動には、政府歳出の拡大、金融規制の実施、欧州における難民危機が経済成長を損なわないようにすることも含まれる。

「厳しい」というのが合言葉のようになっていた数年間を経て、G20は2014年、金融危機、欧州の国債問題、および物価下落にあえぐ経済を刺激する対策を実施し始めた。しかし、世界最大の経済大国である米国があまり財政刺激をしていなかったことを考えると、その時点では無意味な話だった。

バラク・オバマ米大統領政権は2009年初め、1兆米ドルの刺激策を実施したが、その効果は2010年の初めまでに尽きた。その後、政府財政は苦しんだ。歳入の急激な低下に直面した連邦政府および地方政府は、教育、建設、公共サービスへの歳出を削減した。米国人の購買力はそがれた。

しかし、2015年後半までには、風向きが変わった。連邦政府および地方政府は、雇用を増やし、老朽化したインフラを修理・交換し始めた。オバマ米大統領は、共和党との政治取引を減らし、政府予算を増やした。ブルッキングス研究所によると、財政削減をやめ、政府の資金を増やすことによって、米国の成長は0.2%底上げされるという。19兆米ドルの経済からみれば、決して少ない金額ではない。

米財務当局によると、米国は、経常黒字を積み上げている国(中国、ドイツなど)に対して、財政刺激策を奨励していくという。しかし、ドイツや中国に経済力があったとしても、財政刺激を好むとは限らない。また、財政刺激をする能力があるとも限らない。

中国における2015年の経常黒字は2,930億米ドルであった。ワシントンにあるアメリカン・エンタープライズ研究所(the American Enterprise Institute)の中国専門家、デレク・シザー(Derek Scissors)氏によると、中国は財政刺激策を実施したことがあるものの、非効率なやりかたであったという。

中国は2009年、地方政府において刺激策が実施された。銀行からの融資を増やしたのである。現在の中国でも続いているような信用の供与は、過去には成長を助けた。しかし、今は、リターンの縮小に直面している。稼動していない工場、空き家や使われていないアパートがあふれている。

中央政府は、簡単に資金を手に入れることはできたが、生産的に資金を使うノウハウがなかった。シザー氏は、中国人はどこにお金の使うべきかというリストを準備できていないと指摘した。同氏は、「『借りてください』と言えばよいという単純なものではない」と述べた。

SLJ・マルコ・パートナーズ(Macro Partners)の創立者、ステファン・ジェン(Stephen Jen)氏は、中国の指導者たちは、輸出に牽引された経済から、サービスおよび消費によって支えられる経済へと転換をしていくための改革に焦点を合わせていると考えている。同氏は、財政政策は最後の手段であろうと指摘した。

ジェン氏は、「経済成長が目標を下回った場合、控えめな財政刺激が実施される可能性はある。しかし、目標を超えるような成長を遂げるような、つまり世界経済をサポートするような攻めの姿勢の財政刺激は、北京政府の考えではないでしょう」と述べた。

一方のドイツは、欧州や世界経済をサポートするための出費を検討することさえ拒んだ。ドイツのヴォルフガング・ショイブレ(Wolfgang Schauble)財務相は、スペインやギリシャといった弱っている南欧州諸国のためであれ、世界のためであれ、需要を刺激するためのイニシアチブをとることから距離を置いた。

ワシントンにある「現代ドイツのためのアメリカ研究所(the American Institute for Contemporary German Studies)」の代表、ジャクソン・ジェーンズ(Jackson Janes)氏によると、ショイブレ財務相は、シリアなど戦争にあえぐ地域からの難民の流入といった予期しない危機のために、予算と銀行残高のバランスをとることに焦点を合わせたがっているという。

ジェーンズ氏は、「(ショイブレ財務相は、)ここのところ、ドイツの財政刺激については話していない。しかし、欧州の他の地域が予測不能な状態に陥っていることを考えれば、ドイツが助けるべきだというプレッシャーは続くであろう」と述べた。

*この記事は、米国版 International Business Times の記事を日本向けに抄訳したものです。(原文: CARTER DOUGHERTY 記者「G-20 Summit 2016: US, IMF Push For Fiscal Stimulus Likely To Fall Flat At China Meeting」)