シャラポワから学ぶリスクマネジメント

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女子テニス選手のマリア・シャラポワ
女子テニス選手のマリア・シャラポワ ロイター

テニスでは、リターンよりも、サーブの方が容易い。自ら最初の動きを決め、はじめのストロークをコントロールし、得点までの流れを決めることで、ゲームの流れを作り、試合の流れをも作りうるからだ。マリア・シャラポワが7日(現地時間)、ロサンゼルスで会見を開き、ドーピング検査で違反が見つかったと発表したとき、彼女はおそらくプレイしたくはなかった試合のサーブを打ち、試合の流れを決めたのだ。

ロシアのテニス女王、シャラポワ選手は記者会見で、10年前から「メルドニウム」という薬を服用していたと明かした。メルドニウムは今年1月から、世界反ドーピング機関(WADA)により禁止薬物に指定されていた。 

ネガティブなニュースの矢面に立つことはPRの基本であり、シャラポワの動きは古典的かつ効果的な方法だった。しかし発表からまもなく、主要ブランドは「テニス女王」とのスポンサー契約を一時中断した。

しかしPRの専門家は、彼女の動きが正しいものだったと言う。「シャラポワは、どんな公式発表よりも先に自ら公表することで、教科書どおりの完璧な危機緩和を行った。ニュースになることが疑いようのないときには、口火を切る人となる方がいい」と米国のバーンスタイン・クライシス・マネジメント社のジョナサン・バーンスタイン氏は述べた。

記者会見後、国際テニス連盟(ITF)は、この件の調査が終わるまで、元世界王者で5度のグランドスラム優勝経験を持つシャラポワを、暫定的に出場停止とすると発表した。またナイキをはじめ、ポルシェやフォルクスワーゲン、タグ・ホイヤーなどが相次いでシャラポワとの契約を一時停止――終了ではないー―した。

これはシャラポワにとって最高の瞬間ではないだろうが、バーンスタイン氏は今後、本件を悪い状況によく対処したケーススタディーとして使う意向を示した。同氏が言うには、記者会見のとき、シャラポワはおおむね協力的で率直だと受け止められていた。

「私は大きな過ちを犯し、ファンを失望させました。そして4歳からプレイし深く愛しているスポーツを貶めました」とシャラポワは語った。

「もし彼女が(メルドニウムを)禁止薬物だと知らなかったのなら・・・多くの人々は、それを故意によるファウルとは逆の『テクニカル・ファウル』だと見なすでしょう」とバーンスタイン氏は述べた。

スキャンダルが発生した際、広告契約におけるモラル条項には、いくらかの余地が残されていると、スポーツ法務専門家のブライアン・ソコロウ(Brian Socolow)氏は言う。シャラポワの記者会見後、事態を懸念したスポンサーは、より多くの情報を待つ間、契約を一時停止しただけで、事態を乗り越えようと契約関係にとどまっている。

「アスリートがミスを犯し、モラル条項に反することを行ったとき、彼らは世に出る第2のチャンスを伺うものだ。それこそマリア・シャラポワがやっていることだ」とソコロウ氏は述べた。

フォーブス誌のランキングによると、シャワポワは女性アスリートとして11年間連続でトップの稼ぎを誇る。

米セントラルフロリダ大学のスコット・バクステイン(Scott Bukstein)氏は、シャラポワの注目度と、マーケティングにおける抜け目のなさが明らかになったことで、彼女はいつか、今回のミスを活用するべく動き出せるだろうと語った。

「エンターテインメントにおいては(米シンガーソングライターの)テイラー・スウィフトと似ているマリア・シャラポワは、戦略的で、一貫性があり、自分自身というブランドについて計算している」とバクステイン氏は言い、「マリア・シャラポワにはこのネガティブな経験を活用する道がある」と述べた。

ただし、シャラポワは近年、怪我に悩まされており、膝を酷使し、若い選手であふれるスポーツで、28歳という年齢で戦っている。パフォーマンスを上げられる禁止薬物を服用していた場合、一般的にはその選手は、故意ではない服用には2年間の出場停止、故意の服用には4年間の出場停止処分が下る。シャラポワの年齢では、たとえ2年間の出場停止だとしても、キャリアの終焉を意味する可能性がある。

しかし、テニス界での薬物違反に対する処分は多様だ。英通信協会がまとめたリストによると、最近の目立った処分の多くは、4か月から2年間の出場停止だった。

シャラポワの弁護士はすでに、彼女の処分が厳しくなるべきではない「軽減する状況」があると信じているとメディアで述べている。そしてシャラポワの記者会見は、世論での勝利を得るに大いに役立ち、やがては規律を決める人々に影響を及ぼすだろうと、専門家は述べている。

「彼女は処分を決める人々の共感と同情を買う路線でストーリーを組んでいる。処分を決める責任がある人々は、人間なのだ」とバクステイン氏は述べた。

*この記事は、米国版 International Business Times の記事を日本向けに抄訳したものです。(原文: TIM MARCIN 記者「How Maria Sharapova’s Meldonium Drug Test Admission Could Save Her Image, Career And Endorsements」)