米国がイスラム国の行為を「大量虐殺」と宣言、今後の展開は?

  on
ジョン・ケリー氏
米国のジョン・ケリー国務長官 ロイター

米国のジョン・ケリー国務長官は17日、同国の政府は、イスラム国がイラクとシリアで起こしている犯罪が大量虐殺の粋に達したと判断したことを発表した。2004年のダルフール紛争以来、米国が大量虐殺を宣言するのは初めてのことである。

同長官は「今日、ここで、私の判断において次のことを断言する。(ISISは、)自身が支配下に置いている地域において、ヤジディ教徒、キリスト教徒、イスラム教シーア派教徒を集団虐殺している責任がある。我々の介入なしでは、人々が虐殺されたであろうことは明白である」と国務省の記者会見で述べた。

歴史を振り返っても、大量虐殺であると宣言されたのはほんの一握りである。通常の宣言は、衝突および継続的な残虐行為が終了した後になされる。文書的な裏付けがあるものとしては、ホロコースト、アルメニア人とオスマン帝国の衝突、1975年のカンボジアにおけるクメール・ルージュ、1994年にフツ族がツチ族を屠殺したこと、ユーゴスラビア解体時のセルビア人、西スーダンのダルフール紛争などがある。

「ISISが大量虐殺を実施している」と宣言する決断をすることは重要である。一方、国際社会が武装集団を起訴する方法を見つけだすことは簡単ではない。国際刑事裁判所(ICC)は、大量虐殺罪を担当しているが、法廷で審議が始まる前には、複数の障害が立ちはだかる。

まず、過去数十年間の歴史を振り返れば明らかなように、調査官たちがすべての必要な証拠を集めたときにでさえ、大量虐殺罪を起訴することは極めて困難である。例えば、コリン・パウエル米国務長官は2004年、スーダンのダルフール地域で大量虐殺が行われたと述べたが、ICCはそれを起訴するのが難しかった。

スーダンはICCローマ規程(国が法律上大量虐殺の行為を実行することができないという法律)の締結国ではない。ICCが独自の調査を実施することは可能であるものの、通常は同規程のの締結国からの委託、または国連からの付託をもって手続きを始める。国連安全保障理事会は2005年、ICCにスーダンの案件を付託した。

しかし、スーダンのオマル・アル=バシール大統領は、大量虐殺の罪で起訴されたもののいまだに権力を掌している。ICCに起訴された現職大統領はアル=バシールが初めてであり、同氏の逮捕状は何年も発行されたままである。

また、ISISの軍事勢力は世界中の地域から集まっているため、起訴することな不可能である。そして、ISISそのものはどの国民国家にも所属していない。

ISISの国際犯罪を起訴する方法は3つある。1つはイラクとシリアの国内裁判所において、2つ目は臨時裁判所で、3つ目はICCで裁くことである。ICCを利用することは多くの問題をはらむ。

ICCは通常、大統領や内閣など国家の指導層のみを起訴する。技術的には特定の虐殺に関与したISISの構成員を起訴することも可能であるが、通例ではそうしない。人権派の弁護士は、ICCに付託されなくても、個々の国の法律制度を通じてISISのほとんどの犯罪を起訴することが可能であると公的に述べた。

しかし、ISISは構成員は多国籍であり、各国は、自国籍を保持するISISの構成員が大量虐殺に相当する犯罪に対して責任があるかどうかについて調査を始めなければならない。

ISISの構成員を起訴するために、国連安保理事会が臨時裁判所を設けることもできる。同会は、過去にそのよう裁判所を2つ作ったことがある。1994年のルワンダにおける大量虐殺の国際犯罪のためと、1990年代初めの旧ユーゴスラビア紛争における国際犯罪のためである。

イラクとシリアにおける大量虐殺など人権侵害罪を起訴するために、裁判所を設けることが可能である。イラクもシリアは国連加盟国であり、加盟国として協力および判定に従うことが求められる。人権や法律の専門家たちは、これを一番有望な選択肢であると考えている。

人権を専門とする弁護士たちは、ジェノサイド条約などの国際協定を利用すれば、国家に自己民以外の犯罪に配慮する義務を課すことになると述べた。

米国は、ISISの犯罪が大量虐殺の域に達したと宣言した。そのことは、もし米国政府がISISによる犯罪が継続していることを知れば、ホワイトハウスは、行動を法律的に義務付けられる可能があることを意味する。

*この記事は、米国版International Business Times の記事を日本向けに抄訳したものです。(原文記事:ERIN BANCO記者「US Says ISIS Crimes Amount To Genocide, But Prosecution Is Difficult」