中国映画、米ハリウッドへ資金投入も米国での人気は高まらず

  on
チャウ・シンチー監督(右)
チャウ・シンチー(周星馳/Stephen Chow)監督作品の映画『カンフーハッスル』は米国で好評を博した。しかし同監督の『マーメイド』はそれほどでもなかった。写真はチャウさん(右)が2005年3月31日に米ニューヨークのレストラン、オセアナ(Oceana)で開催された『カンフーハッスル』のプレミアアフターパーティーでソニー・ピクチャーズ・クラシックス社のマイケル・バーカー(Michael Barker)共同経営者とポーズをとったものである。 エバン・アゴスティニ(Evan Agostini)さん/ゲッティイメージズ

中国から洪水のように多額の資金がハリウッドへ投入されているにも関わらず、米国の観客は中国映画にブツブツ不満を述べている。中国の映画興行収入は急成長しており、数年内に米国を抜いて世界最大の市場になる可能性は高いと見られている。しかし、中国のハリウッドでの野望はまだ十分に実現されていない。

3月25日、米中フィルムサミットが北京で開催された。同サミットは芸能界の著名人による基調講演を特長としている。例えば『ゼロ・グラビティ』の映画監督、メキシコ出身のアルフォンソ・キュアロン(Alfonso Cuaron)さん、アカデミー・オブ・モーション・ピクチャー・アーツ・アンド・サイエンス(AMPAS)社のシェリル・ブーン・アイザックス(Cheryl Boone Isaacs)社長といったように、太平洋の両岸から著名人らが顔をそろえる。今まで以上に中国映画に多額の資金が投入されているにもかかわらず、そしてこれらの中国映画は地元の中国では映画館が観客で一杯になっているにもかかわらず、米国での映画公開でヒットしない中国映画は無力であるといった多くの不満が巻き起こっていた。

オンラインサイト、スクリーンデイリー(ScreenDaily)のリズ・シャクルトン(Liz Shackleton)さんは、フィルムサミットを総括するために話題となっている項目の中から苦情リストを作成した。それによると、単に中国製の映画がヒットしないとして責められているだけではない。中国と米国のスタジオの共同プロダクションの取引が上手くいっていない。例えば、中国で第2の規模の放送局である湖南テレビ(Hunan TV)はカナダの映画製作配給会社のライオンズゲートと共同制作契約を結んでいるが、湖南テレビは不承不承3億7,500万ドル(約4266憶円)を映画投資として支払った。中国を拠点とするビデオゲームメーカーのパーフェクトワールド・ピクチャーズはグローバルな映画事業展開の一環として米コムキャスト傘下のユニバーサル・ピクチャーズの映画に2億5,000万ドル(約284億円)を投資する。向こう5年にユニバーサルが手掛ける映画で製作予算の25%を負担する。ただし、実際の共同制作はイライラするほど分かりにくい。

フィルムコンサルティング会社アルチザン・ゲートウェイのランス・パウ(Rance Pow)最高経営責任者(CEO)は、共同制作による映画がヒットせず大きな問題であると語った。マーケッティング会社であり配給会社でもあるリーディング・メディア(Leeding Media)社のデビッド・リー(David Lee)最高経営責任者(CEO)は映画の字幕を非難した。「現実を見て一つ気づいたのだが、米国の観客は他国の市場ほど映画の字幕を読み慣れていないと思う」と話した。

ダメージをさらに困難なものにしているのが、中国で製作した映画が公開された後である現在、米国の映画会社による映画が、中国での興行チャートの上位2つの地位を占めていることである。中国の旧正月の時期に、中国の映画館には大勢の人が詰めかけた。その映画は近々米国で上映される。しかしハリウッド映画が優位に立っている。米カリフォルニアに本社を置くディズニーの映画「ズートピア(Zootopia)」は3月4日から中国で1億7,300万ドル(約207億円)以上の収益を得た。またワーナー・ブラザース社の『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』は期待を下回ったものの、3月24日に公開され、週末には5,700万ドル(約64憶円)の収益となり好調な滑り出しを見せている。

ディズニーアニメーション最新作『ズートピア』は中国で好評を博したが、最近の中国映画は米国であまり人気がない。写真は左から歌手のシャキーラ(Shakira)さん、俳優のジニファー・グッドウィン(Ginnifer Goodwin)さん、ジェイソン・ベイトマン(Jason Bateman)さんが2016年2月17日米カリフォルニア州ロサンゼルス市ハリウッドでの映画初日に映画に登場するウサギのキャラクターのジュディ・ホップス(Judy Hopps)とキツネのニック・ワイルド(Nick Wilde)とともにポーズをとった。  チャーリー・ギャラリー(CHARLEY GALLAY)/ゲッティイメージズ

中国映画の興行が伸びない理由は様々であると考えられるが、一つには、中国国内の観客のトレンドが他の市場のトレンドに比べて若いということにある。字幕を非難することは的外れのようだ。確かに字幕は画面を見づらくしているかもしれない。ジョークのタイミングも観客が耳で聞くのと読むのではズレがある。しかし、米国では多くの字幕付き映画製作に莫大なお金がかけられている。

台湾人のアン・リー(Ang Lee)監督による『グリーン・デスティニー(Crouching Tiger, Hidden Dragon)』は2000年の中国・香港・台湾・米国合作作品で、英語ではなく中国北京語による武俠映画である。2000年に北米公開され外国語映画賞など4部門でオスカーに輝き、北米で1億2,800万ドル(約145億円)を売り上げる大ヒットとなった。この他、チャン・イーモウ(Zhang Yimou)映画監督の2002年の香港・中国合作武侠映画『HERO』は、米国では2年後の2004年に上映されたが初登場週の映画興行成績1位を達成し、5,400万ドル(約61億円)近い収益を作り出した。その後の作品の中では、メキシコ映画のコメディ『Instructions Not Included』は2013年9月にメキシコ興行成績で第1位となり、米国でも好成績で4,400万ドル(約49億円)以上をはじき出した。

これらの映画を見た米国の観客は、スクリーン上の字幕を読まざるを得なかったわけだが、それにもかかわらず多くの米国人が共感した。また、プロモーションが盛んに行われ、映画が公開された後も多くの話題を得た。

一方、中国史上最大の映画と銘打ったチャウ・シンチー(Stephen Chow)監督の楽しくナンセンスなコメディ映画『ザ・マーメイド』(Mei Ren Yu)はそれほど共感は呼ばなかった。米国映画の『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』などの誇大な宣伝同様に、おそらく中国映画に必要な何かがなかったのだろう。『バットマンvsスーパーマン』は出演者のベン・アフレック(Ben Affleck)さんとヘンリー・カヴィル(Henry Cavill)さんが映画のプロモーションを行っていた。

『ザ・マーメイド』は中国で5億2,200万ドル(約590憶円)の興行成績を作り出したが、米国ではわずか310万ドル(約3億5,000万円)の収益だった。それでも公開直後の2週間は劇場あたりの平均観客数が最高を記録した。しかしこのように明確な需要の兆候が見られたにもかかわらず、非常に限られた範疇のみとなった宣伝不足によるのか、話題にはならず流行をつかみとるチャンスを逃したようだ。3月4日に106の映画館で公開された『ズートピア』はランキング1位となり、マーメイドに向かう観客の多くを引きずり込んだ。

米国では『ザ・マーメイド』はあまり受け入れられず、巨額の収益には至らなかった。

ただ、中国人富豪、大連万達集団(ワンダ・グループ)創業者、ワン・ジエンリン(王健林/Wang Jianlin)さんがその多くを所有するAMCシアターズは今年3月3日、米カーマイク・シネマズの買収を発表した。これによりAMCは全米最大の映画館チェーンとなる見通しである。加えて、映画製作予算は推定6,000万ドル(約67億円)とされる。チャウ・シンチー(Stephen Chow)監督の2004年公開映画『カンフーハッスル』は中国で2,000万ドル(約22億円)、香港では800万ドル(約9億円)の興行成績を上げた。『ザ・マーメイド』に出演して北京語を話している俳優のダン・チャオ(Deng Chao)さん、クリス・ウー(Kris Wu)さん、キティ・チャン(Kitty Zhang Yuqi)さん、ショウ・ルオ(Show Luo)さんは米国では知名度を高めた。

メキシコ人監督のアルフォンソ・キュアロンさんは縛りを打ち破ることになるかもしれない。映画サミットでキュアロン監督は中国語の映画を作りたいと述べた。そうすれば太平洋両岸で多くの話題を必ず獲得できるからである。

*この記事は、米国版 International Business Times の記事を日本向けに抄訳したものです。(原文: MATT PRESSBERG 記者「China’s Money Is Flooding Hollywood, But Its Films Are Sputtering In The US」)