ネットも「ライフライン」――米、低所得者向けインターネット利用助成導入へ

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IBT160401  「ライフライン」
ブロードバンド環境に支出が出来ず、公共の場所でWiFiを利用する人々にとって、連邦通信委員会の「ライフライン」プログラムの拡充は天の恵みとなるだろう ロイター/INA FASSBENDER

米国政府は、家にブロードバンドのない5500万人のアメリカ人に、より安価にインターネットを提供する準備をしている。連邦通信委員会は3月31日、低所得者のブロードバンド利用に補助金を提供するという提案に投票を行う。これは数百万の米国人の電話利用に補助金を提供する「ライフライン」プログラムの進化形だ。

この計画は、30年来のプログラムを近代化する大きな一歩だ。1985年、レーガン政権によって創設されたライフライン制度は、当初、低所得の米国人の加入電話に助成金を出すものだった。2005年、ジョージ・W.ブッシュ政権はこれに携帯電話サービスを追加した。今、ブロードバンドのインターネットがこれに加わるかもしれないというわけだ。

新プログラムを利用すれば、「ライフライン」の登録者は、ブロードバンド・サービスに対し、1か月9.25ドル(約1000円)の助成を申請できる。また、ダウンロード10Mbps、アップロード1Mbps、150GBという最低限度のサービス基準も設定されることになる。通信委員会はまた、音声通話のみのオプションを段階的に廃止し、2019年までにすべての登録者がブロードバンドに切り替えることを提案している。この年には、プログラムの見直しが行われる。予算は22億5000万ドル(約2500億円)とされている。

通信委に承認されれば、コストが下がりアクセスが拡大して、数百万の低所得アメリカ人がインターネットを使えるようになる。同委によれば、米国人の17%に当たる5500万人の人々が自宅にブロードバンドを持っていない。ピュー・リサーチ・センターによれば、2015年において、年収2万ドル(約225万円)以下の米国家庭では、ブロードバンド環境があるのは41%のみだ。この数字は2013年より5%下がっている。

それでもプログラムの拡大には強い反対もある。2015年5月には、共和党の2人の委員が議長のプログラムの近代化提案に反対票を投じた。「この共和党のプログラムが非常に党派色の強いものとなったことに当惑した」とウィーラー(Tom Wheeler)議長は述べた。

通信会社もこの提案に既に懸念を表明している。AT&Tは、プロバイダの負担を減らし、第三者に委託するとされる新たな検証プログラムについて、更なる情報を要求した。「詳細を見るまでは幸運を祈るしかないし、更に実施されるまで祈り続けるかもしれない」とAT&T社はブログで表明した。

携帯電話会社のスプリントは、通話のみのプログラムの段階的終了に反対し、無制限の携帯通話サービスの要求もした。法律情報サービスのロー360によれば、通信委に対する書簡の中でスプリント社は、こうした動きは「ライフライン」登録者を孤立させるものだと主張したという。

しかし、こうした反対にも関わらず、ウィーラー議長とミグノン・クライバーン(Mignon Clyburn)委員、外部の支援グループは、提案を支持している。「ライフライン」にブロードバンドを付帯させることは、長い道のりを歩んできたものだと全米ヒスパニック・メディア連合のジェシカ・ゴンザレス(Jessica Gonzalez)氏は指摘する。

2004年、ゴンザレス氏は失業していた短い期間、「ライフライン」の登録者だった。「ちゃんとした電話番号を維持できたことは非常に役に立ち、就職活動が出来ました」と彼女は言う。

助成を受けて、ゴンザレス氏は加入電話の料金を支払い、それによって就職を希望する企業や、後に入学することになるロースクールの奨学金窓口と連絡することができた。「格好よいことではありませんでした。そもそも誰にも話しませんでした」と同氏は言う。

しかし2013年、彼女は議会で証言し、「ライフライン」が目指すより広い社会的な目標と自分の経験を公にした。プログラムの予算は大幅に削られようとしていたのだ。「当時は、『ライフライン』利用者へのネガティブな評価や思い込みがありました。それは辛い経験をした人々、解雇された人々、職を探している人々なのだと述べました」とゴンザレス氏は言う。

家庭でブロードバンドにアクセスできれば、求職者にも子どもたちにもチャンスが広がる。通信委によれば、『フォーチュン』誌の500社の80%がオンラインでの応募を要求している。10人の教師のうち7人が、インターネットが必要な宿題を出すのだと、通信委員のジェシカ・ローゼンワーセル(Jessica Rosenworcel)氏はハフィントン・ポスト紙のブログに書いた。こうした要求にこたえるため、はるばる出向いて時間制限のある図書館のネット接続を利用する人もいるのだ。

プログラムのコストが攻撃を受けてきたのは、有資格にもかかわらず利用する家庭が非常に少ないことも理由の一部だ。2012年には4000万の家庭に利用資格があったにも関わらず、登録したのは1710万のみだった。通信委によれば、この数字は2014年4月には更に、1360万まで下落した。「言ってみれば大きな疑問符です。どれくらいの人々が参加するか、予測は難しいのです」とインフォメーション・テクノロジー・アンド・イノベーション財団の通信政策アナリスト、ダグ・ブレイク(Doug Brake)氏は言う。

参加率が低いことも、支持団体が制度の近代化を支持する理由だ。「このことによって『ライフライン』の存在を広く知ってもらえるようになればいいと思っています」と消費者団体パブリック・ノレッジの政務アドバイザー、フィリップ・ベレンブロイク(Phillip Berenbroick)氏は言う。

業界としては、『ライフライン』の助成を受けた消費者がいつの日か、コムキャストやAT&T、グーグルなどの、全額の支払いをする顧客になってくれることを期待している。「目標は、全ての通信事業者に門戸を開くことです。『ライフライン』がこの人たちをネットにつなげれば、通信事業者により多くの収益をもたらすことになるでしょう」とブレイク氏は言う。

2004年にこのプログラムを利用したゴンザレス氏は、今では職を得ており、『ライフライン』当時と同じ番号の加入電話に全額の支払いをしている。

*この記事は米国版International Business Timesの記事を日本向けに抄訳したものです。(原文記事:Kerry Flynn記者「Lifeline Internet: FCC Expected To Offer Subsidized Internet To Millions Of Low-Income Americans」)