パナマ文書: 大手グローバル銀行が多数のペーパーカンパニーを作った

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モサック・フォンセカ法律事務所のプレート
「パナマ文書」が暴露されたモサック・フォンセカ法律事務所のプレート IBT

パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ(Mossack Fonseca)」の過去数十年にわたる1,100万件以上の業務内容を示す資料が明らかになった。この文書は「パナマ文書」と呼ばれ、モサック・フォンセカ法律事務所がタックス・ヘイブン(租税回避地)で世界の顧客のマネーロンダリングをどのように行ってきたのか、資産運用の実態を示す資料と見られている。同文書の中には世界三大金融機関とされる金融コングロマリットのクレディ・スイス、HSBCホールディングス、UBSグループの名前も入っているという。

全部で約500ほどの銀行とその子会社が、モサック・フォンセカ法律事務所を通じて、1万5,000社以上の実態のないペーパーカンパニーと関与している。この件についてドイツとブラジル当局が、マネーロンダリング(資金洗浄とも: 不正取引で得た資金や企業の隠し資金を、金融機関との取引や口座間を移動させることによって資金の出所や流れを分からなくすること)や脱税の疑いがあるとして調査している。ペーパーカンパニーは合法的に運用されているとのことだが、世界的なリーダーたちがどのようにしてオフショア(国境をまたぐ金融取引)に関係する法人組織で不正な資金流用を銀行を通じて行ってきたのかが浮かび上がった。

タックス・ヘイブン(租税回避地)と呼ばれる国や地域は、元々は自国に産業を持たない小国が外国資本や外貨を獲得するために、意図的に法人税を極めて低い税率に設定し、企業や富裕層の資産を誘致したもので、それに乗じて大企業や富裕層がタックス・ヘイブンでのペーパーカンパニーを拠り所にして、本来は自国に支払われるはずだった税金を逃れているという実態がある。タックス・ヘイブンから見ると、実際には国内に実態がない企業などに対する金融サービスとなり、別名「オフショア(岸の向こう)」と呼ばれる。

クライアントのために多数のオフショアを望んだ10大銀行  パナマ文書より

公表された「パナマ文書(パナマペーパーとも)」は匿名の内部告発者からドイツの新聞「南ドイツ新聞(Suddeutsche Zeitung)」が入手したもので、ICIJ(International Consortium of Investigative Journalists:国際調査報道ジャーナリスト連合)が100以上の国際的な報道機関によって分析された。その結果、イギリス領ヴァージン諸島、セーシェル共和国といったいわゆる「タックス・ヘイブン」と言われる国に200か国以上の個人が関与して、世界の税制システムの余白で行われている闇の金融取引が明らかになった。

パナマ文書の中には、マウリシオ・マクリ(Mauricio Macri)アルゼンチン大統領の名前やその親族や友人、あるいは、ロシアのプーチン(Vladimir Vladimirovich Putin)大統領の側近なども名前が挙がっているが、世界の指導者たちは不正行為を大きく否定した。

2008年2月12日、スイスのチューリッヒに本拠を置くクレディ・スイス銀行のロゴを撮影した。  ニコラス・ラチェンボエック(NICHOLAS RATZENBOECK)さん/AFP/ゲッティイメージズ

クライアント用のペーパーカンパニーを積極的に求めている銀行の中には、マネーロンダリングなどの疑惑で米国の調査を受けている銀行もある。これらは特に、スイスの銀行による税金逃れに関する暴露に関係するものである。2009年、スイスに本拠を置く金融持ち株会社のUBSグループは不正行為を認め、米当局から訴追を見送ってもらう見返りに7億8,000万ドル(約860億円)を支払った。1977年から2015年の終わりまでに関連して暴露されたパナマ文書のデータによると、UBSはモサック・フォンセカ法律事務所を通じて1,100以上のオフショアの手配を助けたとされている。

英大手銀行HSBCホールディングスおよびその子会社は、2,300社以上のペーパーカンパニーを作り出した。麻薬取引による不正利得を資金洗浄していたことが2012年7月に発覚し、同銀行は米政府に12億ドル(約1,300億円)以上を支払った。2015年にはスイスリークス事件により、顧客の租税回避を補助していたとしてスキャンダルとなった。スイスリークス事件は、HSBCホールディングスのプライベート・バンキング部門による富裕層顧客の巨額脱税幇助が、機密文書の公開によって発覚した事件であった。報道によると、事件以来、HSBCはコンプライアンス体制やデューデリジェンス業務(正当な注意義務及び努力のことで、転じて投資やM&Aなどの取引に際して行われる、対象企業や不動産・金融商品などの資産の調査活動のこと)改革に取り組んでいるという。

HSBCのスポークスマンは英国紙メトロ(Metro)に、「疑惑は過去20年に遡って続いてきたものである。ここ数年間にわたって、広く報道されているような改革が行われた」と語った。あるUBS関係者は、スイス公共放送協会国際部であるスイスインフォ(swissinfo.ch)に「我々は税金を払っていない、あるいは不正な活動によるファンドには関与しない」と語った。

これ以外にフォンセカ法律事務所のクライアントのリストに挙がっている銀行は、英国のエリザベス女王管轄の銀行であるクーツ社(Coutts & Co.)、ルクセンブルクの銀行であるバンク・ジェイコブ・サフラ・銀行(Banque J. Safra Sarasin–Luxembourg)などがある。

*この記事は、米国版 International Business Times の記事を日本向けに抄訳したものです。(原文: OWEN DAVIS 記者「Panama Papers: Major Global Banks Created Thousands Of Shell Corporations」)