英国はタックスヘイブン? パナマ文書の波紋広がる

  on
IBT160408  英国は租税回避地?
英国商工会議所の年次総会でスピーチをする野党、労働党のジェレミー・コービン党首 ロイター/PETER NICHOLLS

いわゆるパナマ文書の公表以降、英国及び英国領における税法と租税回避の議論が再燃している。この文書は英国とその島しょ部に登録された秘密の企業を多数名指ししたのだ。租税の抜け道として、パナマやスイスほど知られてはいないが、英国は長い間、外国企業や個人に対して比較的税法が緩く、租税回避地だと批判する者もあった。

「『そう、英国は世界最大の租税回避地です』といえば的を射ていることになります」というのは、ロンドン市立大学のリチャード・マーフィー(Richard Murphy)氏(政治経済学)だ。税制改革論者として知られるマーフィー氏は、自分の評価には、英国の保護領や海外領土という「税制のネットワーク」を含んでいると指摘する。

租税回避地(タックスヘイブン)、すなわち外国の企業や個人が全くもしくはほとんど課税されない場所は特定しにくく、どの国やどの領土がこうした基準を満たすのかについて、専門家の間でもしばしば議論になる。定義そのものの問題はあるが、アンドラ、モナコ、パナマ、スイスといった国々は、ビジネス・フレンドリーな税制を持っていると広く考えられている。

「秘匿性ということは定義の1つです」とマーフィー氏は、租税回避地という言葉がしばしば取引の秘密や税回避を暗示すると指摘した。

デビッド・キャメロン英首相と国会議員らは今週、英国の税制改正の可能性について議論を交わした。労働党のジェレミー・コービン(Jeremy Corbin)党首は首相に批判を投げかけることを辞さなかった。英国の税慣習の全面的な見直しを始め、租税回避地として有名な英国領の島々の直接統治を考えるべきだというのだ。キャメロン首相の亡父もパナマ文書に名前が挙がっており、このことも、文書で特定されている英国人全員の完全な税務調査をせよというコービン氏の要求の背景にある。キャメロン首相は父の会社の持ち分の保有や関与を否定している。

「制度的な税逃れや脱税のための土地になっているのなら、何か対策を取らなければならない。政府が受け入れるか、次の一歩を踏み出すべきだ」とコルビン氏は英領バージン諸島について述べた。

パナマ文書で特定された、世界で最も企業数が多い10か所のうち、英領バージン諸島は11万3000社で、ダントツの集中ぶりを示している。パナマのモサック・フォンセカ法律事務所は今週、外部のハッカーによると見られる数百万の情報が流出した後、台風の目となった。この文書は、租税回避のメカニズムとして利用された可能性のある秘密の海外企業を所有する個人(政財界の大物を含む)を名指ししている。文書を公表した国際調査報道ジャーナリスト連合のデータによれば、英領アンギラはリストの7番目、英国は10番目となっている。

英国の法人税は20%前後(例えば米国は40%)で、多国籍企業は外国での収益については課税されない。比較的低い税率があることで、外国企業は英国に呼び込まれ、ロンドンや保護領で事業を開始したりする。このプロセスを合法的に行うために、外国企業が英国企業と合併することもよくある。米国の大手製薬会社ファイザーは、英国税制を利用するため英国のアストラゼネカとの合併を始めたが、6日、米国議会の反対にあって最終段階でとん挫した。

労働党もキャメロン首相の保守党も、税の抜け穴に対応すると約束しているが、英国に利益をもたらすものでもあり、そのままとなってきたのだと指摘する専門家もいる。裕福な多国籍企業とともに裕福な外国人がやってきて、英国の不動産を買い、英国のサービスに金を払い、ロンドンで一番高級な店で買い物や食事をする。こうした企業が来ることで、雇用が増えるという議論もある。

「こうした抜け道が残存しているのは、それによって英国が投資や金融サービスにおいて競争力を持つことができるという理解があったからです」とロンドンのコンサルティング会社のチャールズ・リッチフィールド(Charles Lichfield)氏は言う。

それでも、平均的な英国市民はこうした大金持ち企業の存在から恩恵を受けているわけではないし、こうした抜け道のいくつかを閉じたところで、ロンドンには国際的な影響力があり、金融センターとして競争力を保つだろうと多くの政治家は言う。コルビン氏は抜け道を閉じ、海外の収益が課税されないという税制を引き締めることを熱心に主張してきた。税制が改革されるまで、島しょ部を英国が直接統治することさえ提案する。しかし、政治的には、英国が統治を強めることはなかなか難しいだろうし、こうした抜け穴はまだまだ続くかもしれない。「英国が主権を強めるとか、税制についての監督権限を強めるという状況は考えにくい」とリッチフィールド氏は述べた。

*この記事は、International Business Timesの記事を日本向けに抄訳したものです。(原文記事:Jess Mchugh記者「Is The UK A Tax Haven? London, British Islands Questioned After Panama Papers Leak」)