パナマ文書:米企業、タックスヘイブンへ5,000億ドルを移す

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パナマ共和国の首都パナマ市
パナマ共和国の首都パナマ市(パナマシティ)の超高層ビル。2016年4月4日に撮影した。 ロドリゴ・アランギュア(RODRIGO ARANGUA)さん/AFP/ゲッティイメージズ

先日、パナマの法律事務所から流出した1,150万件のファイルを含む極秘文書(「パナマペーパー」または「パナマ文書」とも呼ばれる)に、企業や富裕層の個人の税負担の軽減化を進める内容が記載されていた。焦点は、租税回避を行うための新たな節税対策である。オフショアの関連子会社を持つ企業は、いずれも、これらの子会社が正当な事業目的を果たしていると主張している。しかし、パナマ文書による世界的なスキャンダルは、この文書に掲載されている多くの事例の主な目的が租税回避であったことを、現在、示唆している。

米連邦政府機関の一つで、連邦税に関する執行・徴収を司るIRS(米国内国歳入庁または米国国税庁)による最新のデータを交えたレポートによると、2012年、米国企業は5,000億ドル(約54兆円)以上に値する収益をわずか10の小国に保管していると伝えた。IRSのレポートは、バミューダ諸島、ケイマン諸島、バハマ国、ルクセンブルク大公国で行われてきた税金逃れのための動かぬ証拠について語っている。米国企業によって報告された利益は、これらの国の国内総生産(GDP)として報告されている総額よりも多いという。ちなみに2012年のルクセンブルクのGDPは、世界銀行によると562.9億ドル(約6兆円)だった。

「GDPとは国内で一定期間内に生産されたモノやサービスの付加価値の合計額である。米国企業が、その国のGDPの総額以上をその国で獲得することは、絶対に不可能である」とIRSのレポートは結論付けた。「明らかに、米国企業は、米国や諸外国で獲得した収益を移すために、様々な税金逃れの仕掛けを利用している。企業収益に対して殆ど、あるいは全く、税金を課さないこれらの小国にある子会社に、企業収益の大部分を移行している」と加えた。

GDP比の法人税の割合  OECD Get the data 1位ノルウェー、2位オーストラリア、3位ニュージーランド、日本は5位、4%である。米国は2.03%で21位である。  OECD Get the data

この方法が有効に機能することをマクロレベルで比較的簡単に説明できる。企業は税金が低いか、もしくは税金が全くかからない国に、提携会社としてシェルカンパニー(「ペーパーカンパニー」とも呼ばれる、実態のない会社)を設立し、必要に応じて別ルートで送金して責任を回避している。例えば、米国のカーサービス会社のウーバー(Uber)は、バミューダにあるペーパーカンパニーを通して米国外への支払いを処理する。これにより、純収益の2%未満のみが米国による課税対象とされているとブルームバーグは報じた。

米国の実効法人税率は先進国で最低水準であるにもかかわらず、米国企業は自社利益をオフショア子会社へシフトしている。先週、米国の税政策を監視する民間団体「シティズンズ・フォー・タックス・ジャスティス(CTJ)」が発行した関連報告書によると、米国は経済協力開発機構(OECD)の中で4番目に低い課税率で、税収は年間GDPの25.7%を占めることがわかったと伝えた。

名目上の米国の法定税率は先進国では高水準であり、2014年に複数の州で法定税率は最高の39.1%となった。ただし、税額控除、免税、租税回避などの方法を使って、これらの税率はより低くなっていると2014年に公表された議会調査局(CRS)の分析は報じた。例えば、製薬会社ファイザー社は、2014年にはわずか7.5%の税率で税金を支払った。

オフショア(Offshore)とは元々、岸(shore)から離れた(off)海風を指すが、転じて陸から離れた沖合、つまり海外のことを意味し、金融用語では、非居住者(外国人)に対して、租税環境を優遇している国または地域を指す意味で使われる。一般にオフショアとされる国や地域には、外国の投資家や企業資産を受け入れるために金融面や税制面に対する合法的優遇措置が設けられ、事業や投資による収益に対して税金がかからない(または少ししかかからない)などのメリットがあるため、別名「タックスヘイブン(租税回避地)」と呼ばれることがある。

連邦政府は租税回避を見逃していない。先週、オバマ政権下の米財務省は、オフショア会社への現金シフトの一部を食い止めようという動きに出た。米ニューヨークに拠点を置く製薬会社ファイザー(Pfizer)は最近、アイルランドに拠点を置くアラガン(Allergan)との合併合意を破棄することに決めた。米財務省は4日、過去3年以内にインバージョン(租税地変換)を行った企業が、再度こうした取引に関与することを制限する新規制を発表した。インバージョンとは、企業が自社より規模の小さい外国企業と合併し、新会社の税務上の住所を海外に移すことである。アラガンはこの3年、こうした形態の複数の合併に関与してきた。インバージョンは最も巧妙な税金逃れの抜け穴となるが、米政府と大統領は企業によるインバージョンを食い止める大規模な規制を発表し、米国企業が税金の支払いを容易に逃れるために外国住所を取得する動きを食い止めたいとしている。

1996年以降の米国企業のインバージョン。  GRAPHIQ

同じように脱税を取り締まろうとしている欧州の規制当局よりも、米財務省の動きは先行した。今年初め、ジェイコブ・ルー(Jack Lew)財務長官は欧州委員会の関係者に宛てた手紙の中で、米アップル(Apple)社など米国企業への徹底的な調査から手を引くように求めた。アップルは合計1兆1,000億ドル(約120兆円)をオフショアによって保持しているとみられ、欧州委員会がオフショアのタックスヘイブンから税金を取り戻すことに成功すれば、アップル単独で80億ドル(約8,600億円)を失う可能性があるという。

「EU(欧州連合)は不当に米国企業をターゲットにしている」という米財務省の主張に対し、法人税に関する欧州議会の報告担当者、アネリース・ドッドス(Anneliese Dodds)さんは「ここでの問題は欧州対米国ではない。国内の小規模企業に対する巨大な多国籍企業にある」と語った。「いかなる政府も、どのような企業に対しても税金の取り立てで手加減してはいけない。米国、英国、たとえ火星であろうとも、他の誰にも甘い取り扱いをすべきではない」と加えた。

米国の現行法下で企業がオフショア子会社へ収益を移すと、それらの収益に対する米国内の税金を据え置くことが許される。CTJや左翼グループなどは、このような巧妙な処置を阻止する新法の成立を求めてきた。

「議会は、米国企業がオフショア子会社の利益に関する米国での税金の支払いの回避を可能にするルールを終了すれば、容易に企業の租税回避を止められる」とCTJは締めくくった。「米国企業は、外国政府にわずかな額の税金を支払うことで、二重課税を回避する目的で、依然として米国での所得税請求額の削減を許されている。米国企業の税率が、米国で獲得した利益か諸外国で獲得したかに関わらず年間収益の総額に対する課税となれば、もはや巧妙な方法で収益をタックスヘブンへ移行する理由はどこにもなくなる」と付け加えた。

*この記事は、米国版 International Business Times の記事を日本向けに抄訳したものです。(原文:CLARK MINDOCK 記者「Panama Papers: Corporations Shifted A Half-Trillion Dollars To Offshore Tax Havens In 2012」)