機密のベールを脱いだ北朝鮮の核開発プログラム

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北朝鮮の金正恩第1書記2
北朝鮮の金正恩第1書記 ロイター

北朝鮮は5月に開催する異例の労働党大会に先立ち、兵器開発計画の詳細を初めて公開した。国際社会からの制裁にもかかわらず、長距離核ミサイルの開発を推進する姿勢を誇示している。

最近まで北朝鮮の武器計画についての情報は入手することが困難だった。外国政府や専門家はこれまで、衛星写真や核実験後に収集された極微量の原子の粒子、さらには長距離ロケットの発射後に回収された部品と材料の残骸に頼ってきた。

しかし、もはやそれらは必要ない。わずか1カ月余り前、北朝鮮は色鮮やかな写真付きで、核弾頭を搭載した大陸間弾道ミサイル(ICBM)開発に向けた急ピッチな試みを示す、各種の実験や他の活動についての記事を公表した。

こうした情報開示の理由について、多くのアナリストは、北朝鮮が自身の核開発能力について世界と自国民に理解させることが、核能力自体よりも重要だと思っているとみている。それにもかかわらず、孤立する北朝鮮の真の能力と意図は依然として不明だ。

「北朝鮮が、地上試験活動の接近写真を提供するのは、ほとんど前例のないことだ」。衛星や、ロケット打ち上げ機の推進システムを専門とする航空宇宙エンジニアのジョン・シリング氏は、ロイターに対しこう述べた。

「この開放性は、根本的な戦略が軍事的なものであると同時に外交的なものであることを意味している」と同氏は語る。「同国にとって重要なのは、こうした能力を持っていることだけでなく、能力を持っていると私たちが信じることだ」

北朝鮮は過去10年間に4回、直近では1月に核実験を実施している。

北朝鮮の国営メディアは9日、新型ICBMエンジンの燃焼実験に成功したと報じた。公開された写真を専門家が分析したところ、旧ソ連の中距離弾道ミサイル「R-27」の2つのエンジンが束ねられ、2カ所から排気プルーム(煙)を噴出していた。

こうした主張が示唆するのは、同国が3月の国連制裁や、米国などからの厳しい警告にもかかわらず、ペースを鈍化する気がないことだ、と米国在住で、国際戦略研究所(IISS)のミサイル専門家マイケル・エレマン氏は語る。

「こうした情報開示や表明、そして『実験』は、米国本土を脅かす核搭載長距離ミサイルを、北朝鮮がすでに保有、あるいはもうすぐ保有するとの物語を構築するためのキャンペーンの一環のようにみえる」と同氏は指摘。「こうした開示が、たとえ本当であったとしても、核能力開発を目的とした計画の一部だろう。疑問なのは、こうしたテストはどの程度リアルなのかということだ」

同国のこうした活動は、北朝鮮が弾道ミサイル技術を含めた計画に関わることを禁じた制裁の執行を担当する国連の専門家によって、厳しく監視されることになる。

<懐疑派を説得か>

国際的な兵器専門家の間では、北朝鮮の能力が従来考えられていた以上に進化しているとの観測が広がっている。まだ原始的でも、操作可能なICBMを、今後10年間の後半にも北朝鮮が保有する可能性があると、北朝鮮の兵器計画に詳しい米政府関係者は語る。

懐疑主義に打ち勝ち、近隣国や米国の警戒を高めるのことが、北朝鮮が意図する効果かもしれない。特に、5月の労働党の党大会を控えた、国内向けプロパガンダとしての重大な価値もある、とソウルにある北朝鮮大学の梁茂進教授は述べた。

「普通の軍隊にとっては、武器開発は機密扱いであるのが当然だ。しかし、金正恩第一書記は何年も韓国や米国に自らの軍隊を抑えられてきた。そのため、彼は自らが望む潜在的な脅威を最大にしたいと思っている」と同教授は述べた。

最近のICBMのエンジン燃焼試験は、3月の固体燃料ロケットエンジンの試験と、弾道ミサイルの大気圏再突入に関する試験に続くものとなった。

金正恩氏は、5回目となる新たな核実験の実施を公言している。経済開発と核開発能力という2つの政策を発表するとみられる議会開催に先駆けて核実験が行われると言うアナリストもいる。

金正恩氏は3月、同国が核弾頭を弾道ミサイルに搭載できるほど小型化したと主張。メディアは、1つの球体と「KN-08」型ICBMに似たロケット型の物体の前に立つ大はしゃぎの金正恩氏の姿を報じた。

一部のアナリストは、周到に準備された方法で武器実験が行われているようにみえること自体、厳格な技術試験というよりも、政治的な駆け引きを示していると指摘する。

北朝鮮の秘密主義、仰々しいプロパガンダ、そして、写真や映像の捏造の歴史を踏まえれば、同国の主張はいまだ懐疑的に受け止められている。

「北朝鮮が私たちに信じさせようしていることが本当かどうか、私はまだ確信していない」と同国のミサイル開発に詳しいドイツの航空宇宙エンジニアのマーカス・シラー氏は述べた。