腕ずくの人民元安定化、いつまで続く

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人民元 GETTY IMAGES

中国人民銀行(中央銀行)は昨年8月に予想外の切り下げを実施したが、その後は人民元を安定させるために介入と市場規制を組み合わせた措置を講じて、元安に賭ける投機筋を退散させてきた。米連邦準備理事会(FRB)が利上げに慎重な姿勢であることもプラスに働き、中国からの資金流出は抑えられている。

しかしこうした人民銀行による腕ずくの政策は、オンショアとオフショアの人民元市場の活力を失わせている。今後ドルが上昇した場合、足元の政策を持続できるかどうかは不透明だ。

オンショアとオフショアの人民元レートは2月半ば以降、人民銀行の基準値に足並みをそろえた動きとなり、足元では1ドル=6.5元近辺で推移している。

オフショア人民元オプション市場における1カ月物リスク・リバーサルが示す元売り圧力は2月以来消え失せており、一部のヘッジファンドはロイターに対して人民元安を見越したポジションから手を引いたことを明らかにした。

ロンドンを拠点とするヘッジファンド、ノース・アセットマネジメントのパートナー、Sugandh Mittal氏は「全面降伏の状況に見える」と述べた。同氏によると、ノース・アセットマネジメントは近年、人民元の上昇と下落双方にポジションを構築していたが、今は中国の金利動向を読む戦略を重視する姿勢に方向転換している。

人民元の急落を予想した投資家の中には、カイル・バス氏が率いるヘイマン・キャピタル・マネジメントなどの著名ヘッジファンドも含まれる。バス氏は、人民銀行が国内の銀行の資本増強のために紙幣増刷をすることで人民元は対ドルで30%前後下落せざるを得ないとの見方を示していた。

ヘイマンはロイターのコメント要請には応じていない。

人民銀行は元押し上げのために、3兆ドルを超える外貨準備の中から数千億ドルを投入し、フォワード市場でも活発に介入したとみられている。

さらに中国の銀行がオフショアで保有する元に対して準備金を義務付ける規制を導入したほか、「トービン税」と呼ばれる投機的な国際資本移動を抑制するための措置まで導入する意向まで示唆した。

FRBが昨年12月に開始した利上げをその後実施していないことも、人民元の支えになっている。

SLJマクロ・パートナーズのマネジングパートナー、スティーブン・ジェン氏は「FRBは、ハト派に転じることで中国の火事を消し止めるか、タカ派姿勢を維持して欧州と日本の火事を防ぐかどちらかしかできなかったが、選んだのは前者だった」と指摘する。

<根強い元安予想>

それでも一部の市場関係者は、人民銀行が最終的には元安の大きな流れに屈するのは必至で、それが現実となる時期がやや先のばしされているだけとみる。

セグラ・キャピタル・マネジメントのヘッジファンドマネジャー、アダム・ロッドマン氏は「われわれはエクスポージャーを縮小していない」と強気だ。

ロッドマン氏は、同社は昨年11月に購入したオプションでまだ損失を被っておらず、人民元は向こう1年半から2年で下落するとの予想を変えていない、と強調。「元安に賭ける取引をだれもが極悪非道であるかのように位置づけようとしているが、それは馬鹿げている。中国は資本流出に苦しむとともに全般的な与信と金融は勢いが弱まっており、自国通貨に下げ圧力がかかることを意味する」と説明した。

CLSAのアナリストチームは、人民元が来年後半までに対ドルで変動相場制に移行すると予想した上で、その結果として短期的な資金流出が起きてドル/人民元は9元まで元安に振れる可能性を想定。

「永遠に続けられないものはいつかやめなければならない」とし、資金流出によって中国政府は「介入方針を撤回して人民元が市場に基づいて価値が決まるのを許容する」とみている。