米大統領候補者は税制をどのように変えるのか?

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米国の紙幣
インターネットメディア会社バンクレート(Bankrate)の調査によると、米国人の76%が給料ぎりぎりの生活をしていると報じた。数百ドルが本当に大きな差となっている。 トーマス・トロッシェル(THOMAS TRUTSCHEL)さん/ゲッティイメージズ

投票は無料だがその余波は無料では済まない。「バーニー(サンダース氏)の情熱を感じろ! (feel the Bern)」と米国の大統領指名選で民主党サンダース(Bernie Sanders)候補は語ったが、再び偉大な米国を作り上げたいと思っているのだろうか。次期大統領の税​​務政策は直接、米国民の手取り賃金に影響を与える。大統領選挙の年はいつでも、大統領候補者たちが、いかに米国を再成するのか、理想的​​な未来像を希望一杯に掲げる。しかし米国人の76%は給料ぎりぎりの生活をしているとインターネットメディア会社バンクレート(Bankrate)の調査は報じた。わずか数百ドルの違いが、現実には非常に大きな違いになる。

今シーズンの税制についての議論は、これまでの大統領選挙戦とほぼ同じである。共和党の候補者は一般的に、行政をよりコンパクトにして、より効率的にしたいと述べる。そうすれば税金の多くを維持して、さらに適切に使用できると語っている。一方で、民主党からのメッセージは、誰もが自分に課せられた税金を公正に支払うべきであり、それによって連邦政府のシステムは、さらに大規模な計画を成功させるために十分な資金を獲得できると述べている。

最近、減税か増税かといった政治的綱引きで、富裕層が焦点になる傾向がある。しかし、すべての納税者のうち、自己資金によって自社株を購入したり、事業に投資したりしている人は1%にもならない。将来、各候補者のビジョンが実現すれば将来、どのくらい税金を支払うことになるのかを見積もるために注目すべき重要なポイントは、大統領候補者たちの提案している税金政策である。選挙中の理想の提示が、選挙後に色あせた事例は多い。政策を制定する議会の動向が、実際の法律策定に関わってくる。さらに、候補者の選択は、国民の価値観や生活の中の適切なバランスを打ち崩す場合もある。ここに正しい答えなどない。あるのはただ意思決定だけである。

■各候補の税制改革

クリントン氏の税制が実現した場合: 年収が100万ドル(約1億円)以上でない人にとって手取り給与に大きな変化は見られない。クリントン氏の税制プランは大多数の米国人にとっては現状維持となる。しかし、高所得者の年税は大きく増加する。クリントン氏は7桁(100万ドル)の年収者に30%の最低課税を提案しているが、それと同時に年収500万ドル(約5億4,000千万円)以上の納税者に対して4%の付加税を要求している。

2016年3月6日、民主党の大統領指名候補ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)氏とバーニー・サンダーズ(Bernie Sanders)上院議員が民主党大統領選挙指名選の期間中にミシガン州フリントで一緒に演説した。  ロイター/ジム・ヤング(JIM YOUNG)さん

クルーズ氏の税制が実現した場合: 間違いなく最も創造的である。クルーズ氏は、すべての所得グループに対して一律10%のフラットな税法を要求すると同時に、社会保障と医療税の撤廃も提案している。クルーズ氏は16%のビジネス・フラット税(累進課税とは異なり、税率を一律にした税制)を追加する。これは基本的にはこれまで給与税に支払われてきた金額に取って代わるものである。クルーズ氏の減税政策は米国の富裕層には他の共和党の候補者より受け入れられている。しかし、このような抜本的な変化が議会を通過する可能性は低い。もしクルーズ氏の税制改革案が実現された場合、今後10年間で連邦政府は8兆6,000億ドル(約940兆円)の歳出超過となるだろう。

ルビオ氏の税制が実現した場合: 年収30万ドル(約3,200万円)までの世帯において、子ども一人あたり2,500ドル(約27万円)の税額控除をルビオ氏は提案している。この金額は現状の年収11万ドル(約1,200万円)までの世帯で、子ども一人あたり1,000ドル(約10万円)の税額控除に比べれば大きな飛躍である。ルビオ氏のプランは、少数の富裕層に最も受け入れられるような投資収益、相続に対する減税も行われる。連邦政府は、今後10年間で6兆8,000億ドル(約740兆円)の歳出超過の可能性があるが、ルビオ氏のプランは実際には共和党の他の候補者に比べれば少ない減税額を提示している。

共和党の米大統領候補(左から順に)のマルコ・ルビオ(Marco Rubio)米上院議員、ドナルド・トランプ(Donald Trump)氏、テッド・クルーズ(Ted Cruz)上院議員は2016年2月25日、テキサス州ヒューストンで2016年の共和党米大統領候補として指名を獲得するためにCNN主催の討論会で講演した。  ロイター/マイク・ストーン(MIKE STONE)氏

サンダース氏の税制が実現した場合: 米バーモント州選出のサンダース氏のプランは、15兆ドル(約1,600兆円)の大幅な税収増を今後10年間で連邦政府にもたらす。サンダース氏の増税政策は、収入ごとにではなく、すべての所得グループにわたって影響を与える。高所得者は手取り給料の40%以上に追加税を課せられる。日本の国税庁にあたるアメリカ合衆国内国歳入庁(IRS)が、全納税者に対して相当額の給料の吸い上げをはかることによって、サンダース氏は無料の大学や政府主催のヘルスケアのような政府のプログラムに資金を調達する計画である。

トランプ氏の税制が実現した場合: 他のどの共和党候補よりも、トランプ氏は米国民のポケットへ、政府の予算から巨額の資金を持ち込むことになる。トランプ氏の税制軽減策が承認された場合、労働者に対して毎年約1兆ドル(約109兆円)の負担軽減が追加される。年収7万5,000ドル(約818万円)の家族には、約3,000ドル(約32万円)の取り分となる。もちろん、これらの税金軽減策は高くつく。見積もりはさまざまだが、トランプ氏の税制案は今後10年間で連邦政府の財政赤字を約9兆5,000億ドル(982兆円)増加させる。政府のプログラムを大幅にカットしたとしても、増加した赤字を十分相殺するには至らないだろう。

*この記事は、米国版 International Business Times の記事を日本向けに抄訳したものです。(原文:LAUREN LYONS COLE 記者「Paycheck Calculator: How Will The Presidential Candidates Change Your Tax Bill?」)