中国「ゾンビ」製鉄所が復活、過剰生産やまず

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上海自由貿易試験区(FTZ)を背景にはためく中国国旗

上海自由貿易試験区(FTZ)を背景にはためく中国国旗

ロイター

中国鉄鋼メーカーによる輸出攻勢が世界的な供給過剰を引き起こしたとして、国際社会は中国政府に余剰生産能力を減らすよう迫っているが、中国の鉄鋼都市では逆の現象が起きている。

今年に入って国内の鉄鋼価格が急上昇したため、中国政府が掲げる方針とは裏腹に、製鉄所は生産を加速させている。生産停止に追い込まれて閉鎖寸前だった「ゾンビ」製鉄所も息を吹き返しつつある。

中国の鉄鋼(鉄筋)価格SRBcv1は、年初から77%上昇。昨年相次いだ工場閉鎖で需給が引き締まり、消費側の在庫補充や、春節(旧正月)休暇後の需要の高まりなど、いくつかの国内の要因が重なったとみられる。

鉄鋼生産が盛んな河北省唐山市では今月29日、10月までの予定で世界園芸博覧会が開幕する。一定期間中は製鉄所の稼働を縮小して排気を半減させるよう求められており、それを前に一部で生産を加速させる動きが出ている。

中国は、世界の鉄鋼生産の半分を占め、その余剰生産能力は米国の生産量の4倍に達している。しかし過剰生産解消の掛け声をよそに、鉄鋼情報サイトの中国聯合鋼鉄網(Custeel.com)によると、68カ所の溶鉱炉(推定生産能力5000万トン)が生産を再開したという。また我的鉄鋼網の調べでは、小規模な鉄工所の1月の設備稼働率は51%から58%に、大手では84%から87%にそれぞれ上昇した。

<次々と生産を再開>

鉄鋼価格の回復は「ゾンビ」製鉄所に命綱を投げ込んだ。そのため「生産能力の削減はもはや考えられない」と、マッコーリーのアナリスト、イアン・ローパー氏は話す。

年間300万トンあった鉄鋼生産を昨年8月に停止した山西文水海威鋼鉄の幹部は、近く生産を再開すると語った。

同程度の規模の江蘇申特鋼鉄も、昨年12月に生産を停止したが、価格の上昇を受けて今年3月に生産を再開したという。

中国聯合鋼鉄網のHu Yanping氏によると、鉄鋼生産の利益率は平均で1トンあたり500─600元(77─93ドル)と約2年ぶりの高水準にある。Hu氏は「政府は景気を浮揚させ、鉱工業セクターの需要を押し上げる一方で、供給サイドの改革も推進したいという、ジレンマに陥っている」と述べた。

<重要なのは輸出量>

中国など主要な鉄鋼生産国は18日、世界的な供給過剰の解消に向けて協議したが、具体的な対策での合意に至らなかった。米国や欧州連合(EU)などは19日、合意できなかった責任は中国政府にあるとし、緊急に対策を講じることを求めた。

英国は、インド鉄鋼大手タタ・スチール(TISC.NS)が、中国製を含む安い輸入品の大量流入が原因で英事業の一部売却を決めたことで、1万5000人の雇用が危機に瀕している。ドイツでは4万人を超える鉄鋼労働者が、中国からの輸入製品安売りなどに抗議する街頭デモを行った。

ただ、昨年は中国の鉄鋼輸出が過去最高の1億1200万トンに達したことで、中国に対する怒りが高まったが、今年は国内価格の上昇によって、海外への輸出が抑えられる可能性がある。

BMIリサーチの商品ストラテジスト、ミッチェル・ヒューガース氏は、中国の鉄鋼生産が2011年の水準を回復しても、生産と消費の差である過剰生産量が当時のように低水準にとどまれば、世界は恩恵を受けるはずだと指摘する。「重要なのは生産能力の削減ではなく、輸出される量なのだ」と同氏は話す。