不動産「爆買い」するドイツ人、低金利や家賃高騰で

  on
ベルリン
ベルリン ロイター

賃貸住宅で一生を終えた両親と違い、コンサルタントのセバスチャンさん(38)はベルリンにマンションを所有しており、さらに、年金生活に備えた投資としてベルリンで別の不動産を購入することを検討中だ。

ドイツでは長年、貯金を重視する賃貸派が主流だったが、最近は不動産を買う人が急増。所有目的だけではなく、預金しても利子がほとんど稼げない現状に業を煮やして投資リターンを狙う人も多いという。

不動産に対する米英流の姿勢が広がった背景には、欧州中央銀行(ECB)の緩和や、ドイツの主要都市で家賃が高騰していることがある。都市部の人口増や移民・難民の流入も住宅市場を押し上げている。

セバスチャンさんは「民間の年金スキームに入っているが、超低金利のため、堅実に貯金しても利回りはほとんど得られない」と嘆く。

セバスチャンさんは6年前、上昇する家賃から逃れるためマンションを買ったが、引退後に備え2戸目の不動産購入を考えているという。

ベルリンの壁崩壊後数年こそ、ベルリンの不動産価格はロンドンやパリを大幅に下回っていたが、今や割安と言えない水準になっている。

セバスチャンさんは「問題は、割高ではないマンションをベルリンで見つけるのが、非常に難しくなっているという点だ」と語った。

欧州連合(EU)統計局のデータによると、住宅を所有しているドイツ人の割合は2014年は52.5%で、EU平均のおよそ70%を下回っている。しかし、ドイツ連邦統計局の別のデータによると、ドイツの住宅保有比率は、約42%だった2006年から急上昇している。

ドイツでは強い住宅需要を受けて建設ブームが発生、経済を下支えている。ドイツでは伝統的に、輸出が成長のけん引役だったが、中国など一部主要市場の景気減速を背景に、ドイツの輸出は伸び悩んでいる。

2015年第4・四半期を見ると、国内総生産(GDP)への寄与が最大だったセクターの1つに建設が入ったが、純貿易の寄与はマイナスだった。2016年1─2月期は、建設投資は一段と増加している。

一方、少なくともドイツの一部の都市において、不動産バブルが形成されつつある、と懸念も広がっている。金利上昇や失業増、人口動態上の変化などを受けてバブルがはじければ、不動産の所有者や貸し手は打撃を受け、ドイツの中期的な経済成長へのリスクになりかねない。

安価な住宅が不足していることで、経済的に恵まれない層の人々は郊外に追いやられ、格差が拡大する可能性がある。昨年だけで100万人の移民や難民が流入するなか、社会的な緊張感が高まる恐れもある。

<独連銀理事、バブルに警鐘>

こうしたブームの恩恵を受けているのは当然、建設会社や不動産会社だ。パトリツィア・インモビリエン(P1ZGn.DE)株はこの1年で35%も上昇し、ホッホティーフ(HOTG.DE)は同期間に60%近く上昇した。

おそらく、最も大きな恩恵を手にしているのは、住宅建設業界で存在感の大きい中小建設会社と、融資を膨らませている金融機関だろう。

独連銀によると、不動産ローンは2015年は1兆2300億ユーロで過去最高。3.5%増と10年超ぶりの大幅な増加率を記録した。

連銀のドンブレト理事は、少なくとも一部の都市で不動産市場が過熱していると警告。厳格な与信条件を堅持するよう銀行に要請した。

不動産価格が高騰している一因は投機かもしれないが、借り入れコストが高く、優遇税制も縮小された2001─09年に建設活動が低迷した結果、現在でも住宅供給が不足している、という事情もある。

また、ドイツ人が不動産を購入する際には、3分の1近くをキャッシュで賄うのが通例。ドイツの住宅ローン大手によると、不動産購入における債務比率は、2015年は71.7%で、10年の70.3%から若干の上昇にとどまっている。こうした現状を加味すると、「全国的なバブルへの警戒は行き過ぎ」(住宅ローン大手)なのかもしれない。