政府は外国人労働力活用にかじ、労働力不足で政策転換

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都内の風景

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自民党の特命委員会は今週中にも、介護・旅館・農業など労働力不足が予想される分野で、外国人を労働力として受け入れるよう政府に求める提言をまとめる。急速に進む少子高齢化で労働力不足が深刻化し、「移民政策は採らない」と否定してきた安倍晋三内閣も、本格的な外国人労働力の受け入れに政策転換する可能性が高まっている。

<自民党特命委が外国人受け入れを提言へ>

自民党は今年3月、「労働力確保に関する特命委員会」を発足させ、外国人労働者の受け入れを中心とした議論を開始した。これまで5回の会合で議論を進めてきたが、今週中にも提言をまとめ、政府に提出する。

同委員会の発足にあたり、木村義雄委員長は「50年来のタブーを破って、外国人の労働力としての受け入れに関する議論に踏み込む」と述べていた。

特命委の初会合に講師として参加したモルガン・スタンレーMUFG証券チーフ・アナリストのロバート・フェルドマン氏は、ロイターの取材に対し「日本政府は、実質的な移民政策に向かっている。『移民』という言葉には慎重だが、優良な住民となる可能性の高い、定住を希望する外国人を受け入れたいと思っている」と指摘する。

同委員会の最高顧問である村上誠一郎衆院議員は、ロイターに「日本経済の問題は、潜在成長率が低いことにある。潜在成長率を高めるためには、人口政策や移民政策を含めて、大胆な構造改革や規制改革が必要」と述べた。

<すでにかじを切った政府のスタンス>

菅義偉官房長官は今月、ロイターとのインタビューで「日本経済が中長期的に成長していくためには、労働人口を維持し生産性を上げていかねばならないということが一番の鍵だ」としたうえで、「外国人受け入れについても大きな問題だと認識している」と述べている。

政府が昨年6月に発表した日本再興戦略改訂2015は「中長期的な外国人材受け入れ」について検討を進めると明記した。内閣府関係者によると、これは政府のスタンスの変更を示すものだという。

昨年6月に内閣府から呼ばれ「日本型移民国家への道」というテーマで講演した元法務省東京入国管理局長で移民政策研究所所長の坂中英徳氏は「政府は移民政策は採らないと相変わらず主張しているが、言葉はどうあれ、人口減少問題の深刻さを受けとめ、従来の姿勢をすでに変更し、実質的な移民政策に向かって動き始めている」と主張する。

<移民に対する強いアレルギー>

一方、「移民」という言葉や概念に対する拒否反応は、自民党内、労働組合、業界団体などに根強く存在する。

上記の再興戦略は「移民政策と誤解されないような仕組み」を含め必要な検討を進めると続く。今週とりまとめられる自民党特命委員会の提言でも「移民政策ではない」ことが明記される。

同委員会の事務局長である柴山昌彦衆院議員(首相補佐官)も「まず治安に対する不安がある。また、国内の雇用を食ってしまうのではないかという不安。そういうことも含め、まだ移民という言葉に対するアレルギーがある」と述べている。

厚生労働省によると、外国人労働者数は、2013年の71万人から15年には90万人に増え、3年連続で過去最高を更新した。16年は初めて100万人を超える可能性が高いという。

しかし、総労働人口に占める割合はわずか1.4%程度で、国際通貨基金(IMF)のレポートによると、主な経済協力開発機構(OECD)諸国の5%超と比べ、最も低い水準にある。

<人手不足に悲鳴あげる現場>

大手町にあるオフィスビルの地下で理容室「バーバー井上」を営む五十嵐光男さん(40歳)は、理容師不足に悩んでいる。店には4台の椅子があるが、理容師は五十嵐さん1人。「日本人の若い人で、理容師のなり手がいない。外国人でも人を増やさないと、このままではやっていけない」と話す。五十嵐さんによると、理容師を養成する学校でも生徒不足が深刻になっているという。

だが、自民党の特命委員会では、出席した議員から「野放図に外国人(美容師)が入って来るのは問題。国内の美容師の雇用に影響すると困る。入れるのなら、外国人を専門に扱う美容師に限定すべきだ」との意見が出た。

移民政策研究所の坂中所長は人口減少が日本経済に与える影響を最小限に抑えるため「50年間で移民1000万人を入れる」政策を提唱している。この数字は、2014年2月に内閣府が示した「外国からの移民を毎年20万人ずつ受け入れることで、日本の人口1億人を100年後も維持できる」という試算と不思議なことに一致している。