円高株安は「日銀プレー」の逆回転、緩和見送り評価の声も

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日本銀行

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ロイター

日銀の追加金融緩和見送りで進んだ円高・株安は、いわゆる「日銀プレー」の巻き戻しだ。失望ムードに広がりはなく、市場では現状維持決定を評価する声も少なくない。

実体経済に対する追加緩和の効果に期待しにくいなか、市場に最大限のインパクトを与えることのできるタイミングは今回ではなかったとの指摘が出ている。

<「失望ムード」はあくまで一部>

日銀の現状維持決定を受け、28日の日経平均.N225は後場に入り600円を超す下落。前場高値からは900円以上の下げとなった。ドル/円JPY=も111円台後半から一時108円台前半へ、3円を超える円高が一気に進んだ。

株式市場で後場に最も下落したのは銀行や証券、保険など金融セクター。追加緩和期待の盛り上がりとともに買われたセクターで、「予想外の追加緩和見送りで海外短期筋などが売りに転じた」(大手証券トレーダー)という。

しかし、市場全体に「失望ムード」が広がっているわけではない。「熊本地震による被災地オペを除くと予想通り」(東海東京証券チーフ債券ストラテジストの佐野一彦氏)との声も出ている。日銀追加緩和を見込んでいた短期筋にとっては見込みはずれの結果となったが、足元の株安・円高は、あくまで彼らのポジションの巻き戻しだ。

実際、4月6─12日にロイターがエコノミストやアナリスト16人を対象に行ったアンケート調査では、今回の追加緩和予想は5割と予想は半々に分かれていた。今回の追加緩和決定が市場の完全なコンセンサスになっていたわけではない。

さらに追加緩和を見送ったことを評価する声も市場には少なからずある。「見送れば失望、追加緩和決定でもサプライズがなければ材料出尽くし。いずれにせよ日銀プレーの巻き戻しで円高・株安が進んだ可能性が大きい。そうなれば緩和限界論の勢いが増すことは明らか」とSMBC日興証券のチーフ株式ストラテジスト、阪上亮太氏は話す。

<期待高まらぬ追加緩和の経済効果>

ただ、追加緩和見送りを評価する声が挙がるのは、経済や物価に対する追加緩和の効果への期待の低さの裏返しでもある。

28日朝に発表された3月全国コアCPIは前年比マイナス0.3%。2013年4月4日に導入された異次元緩和直前に並ぶ下落率となった。黒田東彦日銀総裁は強気を崩さないが、物価のトレンドは弱いままだ。

日銀が発表する貸出・預金動向によると、銀行・信金計の貸出平残の伸び率は今年に入って、1月2.4%、2月2.2%、3月2.0%、と落ちてきている。日銀は、金融緩和効果の波及経路として「実質金利の低下」を強調するが、貸出を大きく押し上げるには至っていない。国内総生産(GDP)も15年暦年でプラス0.5%にとどまっている。

量的・質的金融緩和やマイナス金利政策に対する「結果」が経済データのかたちで次々と表れるなかで、追加緩和による物価押し上げ効果について市場の期待は一向に高まらない。市場では「異次元緩和の失敗は明白」(みずほ証券チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏)と厳しい指摘も出ている。

<残された「ルート」>

残された「ルート」は資産効果による消費刺激や円安による物価の押し上げといった市場を通じた効果だ。市場に与える効果が最大化されるタイミングで追加緩和を決定することが有効な選択肢となる。

実際、「異次元緩和」がもっとも効果を発揮したのは金融市場だ。13年4月のいわゆる「バズーカ1」は日経平均.N225を約1カ月で3867円、ドル/円JPY=を11円押し上げた。14年10月末の「バズーカ2」も日経平均を1カ月強で2372円、ドル/円は12円上昇させた。

しかし、日銀の金融緩和に対する市場の反応はここにきて冷ややかになってしまっている。昨年12月に打ち出した量的・質的金融緩和の補完策、今年1月末のマイナス金利に対する市場の反応は円高・株安。市場の期待を上回る、よほどのサプライズがなければ、かつての「バズーカ」のような効果は期待しにくい。

「アベノミクス相場」をけん引してきた海外投資家は年初から約5兆円、日本株を売り越している。投機筋の円ロングポジションも過去最高に達している。

シティグループ証券チーフエコノミストの村嶋帰一氏は「量・質・金利の3次元セットの追加緩和を実施すれば、円高・株安局面においては、それなりの効果は出る」とみる。ただ、将来的なビジョンをもった財政政策などと組み合わせないと実体経済への効果は乏しく、「日銀の、日銀による、日銀のための追加緩和」にならないよう注意が必要だと指摘している。