トランプ氏の課税政策、ウォール街や共和党と対立

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トランプ氏
ドナルド・トランプ氏は2016年5月7日、米ワシントン州東部に位置するスポケーン市の選挙集会で講演した。 ジェイク・パリッシュ(JAKE PARRISH)さん/ロイター

ドナルド・トランプ(Donald Trump)氏は実質的に共和党の富裕層を敵に回すかのように見える政策を表明し続けている。過去数週間のうちに、トランプ氏は自分が大統領になれば富裕層に増税すると表明した。トランプ氏は、昨年9月に発表した税制改革案では、富裕層を含む全国民に減税を表明していた。これまでは選挙戦の一環として高額な政治活動資金を寄付する富裕層に手を差し伸べたかのようにも見えたが、その立場を反転させた。トランプ氏は、米国の自治領プエルトリコが債務不履行を表明したときには公債所有者に「痛手を受ける」と呼びかけ、自分のことは「わたしは借金王だ」と語り、一方で連邦政府の債務について論戦を続けている。

トランプ氏が共和党の大統領候補として指名獲得を確実にして以降の発言が明らかになった。9日、トランプ氏は富裕層への増税を受け入れる可能性を示した。議会で確実に実現するためとも見られる。しかし、トランプ氏のこのような政策提案はダメージとなって既に影響を及ぼしている。

トランプ氏が表明してきた政策提案によって注意すべきことは、保守的なウォール街の支援者らが、民主党の大統領候補として指名確実と見られているヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)氏の支持へと既に移行し始めていることである。最近のウォールストリート・ジャーナルの分析によると、クリントン氏は寄付金総額の半分以上を金融街であるウォールストリートから受け取っていることが分かったと報じている。同大統領候補は、最近の選挙資金に関する金融情報の開示書類を提出している。

ニューヨークの金融会社、スカーズデール・エクイティ(Scarsdale Equities)のウェイド・ブラック(Wade Black)最高執行責任者(COO)は「ウォール街の多くの資金はトランプ氏ではなく、その代わりに共和党に属する党の下流の候補(州議員など)に流れていくだろう」とIBTimesに語った。

「長期的に見れば、ウォール街は現実主義者だと思う」とブラック氏は金融業界の保守的な支援者について語った。「金融街は、おそらく、ホワイトハウスと共和党が優位な議会においてヒラリー氏を支持するだろう。それは現状を維持するためである」とブラック氏は説明した。

トランプ氏は、以前にも増して予測不可能である。最近のトランプ氏は、米国の借金を解消できると主張し、経済危機が発生した際には同氏の方法で切り抜けるとしているが、経済については完全に理解不足であるとブラック氏は指摘した。一方、クリントン氏は、民主党の指名候補選で対戦相手であるバーニー・サンダース(Bernie Sanders)氏から繰り返し攻撃されてはいるものの、いくつもの主要な金融政策を経験してきた経緯がある。

クリントン氏はゴールドマン・サックス証券会社などのウォール街の金融機関から、高額の資金援助を受けているとして、サンダース氏などから非常に厳しい批判を受けている。

「クリントン氏は、オバマ氏よりウォール街と親密であるという実績がある」とサンダース氏を支持するブラック氏は語り「これが2008年の大統領選挙と明らかに異なる点である」と説明した。

ウォール街が今回の選挙運動でトランプ氏ではなくクリントン氏寄りに傾いた場合、オバマ氏によって定められてきた流れに大きな変化を与えることになる。オバマ大統領の選挙の何年も前は、米国の金融業界は民主、共和両党の大統領候補にほぼ同じぐらいの活動資金を与えていた。ブッシュ大統領(共和党)の選挙戦以降、実際には民主党が共和党よりも若干多くの活動資金を金融街から得てきたと非営利リサーチ組織の「センター・フォア・レスポンシブ・ポリティックス(Center for Responsive Politics)」は報じている。しかし、オバマ氏による大統領選挙以降、状況は逆転し、共和党が民主党よりも若干多くウォール街から資金援助を得ることになった。2012年の大統領選挙時には、ウォール街から選挙活動への寄付金全体の79%が、共和党の財源へと流れ込み、ウォール街からの選挙献金は明確な支援となった。

トランプ氏への支持の高まりと、クリントン氏が金融街と近しい関係であること、一体どちらが金融業界のトレンドに影響を与えるのか? それを見極めるのは時期尚早である。

共和党の候補者であるトランプ氏はウォール街にいくつかの重要な提案を行った。先週、トランプ氏は、同氏が大統領になった場合、金融庁の要職にヘッジファンドマネージャーのスティーブ・ムーチン(Steve Mnuchin)氏を起用すると発表した。しかし、税金に関するトランプ氏の最近の発言が、米国の税制改革における最大の反税金ロビー活動グループを退けたようには見えない。IBTimesがこの件を取材したが、共和党最大の支持母体である全米税制改革協議会(ATR)会長のグローバー・ノーキスト(Grover Norquist)氏は、トランプ氏には税金を上げさせないと自信を示した。

「トランプ氏による減税は、すべての米国人に対する減税となる」とノーキスト氏は述べた。トランプ氏は2015年9月に発表した税制改革案で、富裕層を含む「全国民の減税」を掲げ、所得税の最高税率を現在の39.6%から25.0%に引き下げると表明している。これまでの選挙戦では企業の負担増になる最低賃金の引き上げに反対してきた。しかし、9日に米メディアが伝えたトランプ氏の発言によると、大統領になれば富裕層への課税を強化し、労働者の最低賃金を引き上げる考えを表明しており、同氏は経済政策を変化させた。「誰だって本当は増税を望んでいないということは、どうすることもできない」とノーキスト氏は述べている。

*この記事は、米国版 International Business Times の記事を日本向けに抄訳したものです。(原文: NED RESNIKOFF 記者)「Donald Trump's Remarks On Taxes, Debt Put Him At Odds With Wall Street Republicans」)