投資はもう億万長者だけのものではない、米国で新たなクラウドファンディング

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ウーバー
投資家は現在、年間20万ドル(約2,000万円)以下の収益でウーバー(Uber)のような非公開会社に投資できる。 ジェフロワ・バンダー・ハッセルト(GEOFFROY VAN DER HASSELT)さん/ AFP /ゲッティイメージズ

マーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)氏(32歳)は米国の実業家で、ハーバード大学在籍中にフェイスブックを開設した。次のザッカーバーグ氏を夢見る人はいずれも、これまでは、悪名高いベンチャーキャピタルの苦しい試練を越えなければならなかった。巣立ちしたばかりのスタートアップ企業が「ユニコーン」と呼ばれるベンチャー企業へ変化するためには、億万長者からのいちかばちかの掛け金の高い投資を呼び込むしか道がなかった。

しかし16日、起業者は、大切な創業資金を勝ち取るために、億万長者の前でひれ伏す必要はなくなった。米国で新たに制定された規定によって、普通の米国人が、スタートしたばかりの非公開会社の株式を購入できるようになった。つまり、スタートアップ企業に投資できるのは億万長者だけではなくなった。

しかし、このプログラムにもリスクと制限がある。エクイティ・クラウドファンディング(株式型クラウドファンディングとも呼ばれる)について知っておくべき点を以下に挙げた。

投資できるのは誰か?

その気があるなら誰でもできる。

米国企業ウーバー・テクノロジーズ社は自動車配車ウェブサイトおよび配車アプリ「ウーバー(Uber)」を運営する。「スナップチャット(Snapchat)」は動画や写真を共有できる画像チャットアプリで、スタンフォード大学のエバン・シュピーゲル(Evan Thomas Spiegel)さん(25歳)らが2011年にサービスを開始した。現在では米国の若者を中心に、一日4億枚以上の画像や動画がスナップチャットによって交換されている。

ウーバーなどのベンチャー企業への投資は、米アップル社やIBM社のような社会的な企業とは対照的に、これまでは投資家として認められた人々だけに投資権限があった。ここで言う「認められた投資家」とは、100万ドル(約1億円)以上の資産を持つ投資家、または年間20万ドル(約2,000万円)以上の収益を上げている投資家を指す。

2012年4月、米国でオバマ(Barack Obama)大統領がJOBS Act(Jumpstart Our Business Startups Act:「新規事業活性化法」あるいは「起業促進支援法」などと訳される)に署名し同法が成立、誰でも次なるフェイスブックのような新興企業に投資できるようになった。この法律は米国での新興企業の育成を図ることを目的としている。しかし、際限なく賭けてもよいという意味ではない。年収10万ドル(約1,000万円)以下の人は年間最高2,000ドル(20万円)の投資、あるいは、収入または純資産の5%までの投資ができる。

米国では企業が一般投資家から資金を調達する場合、さまざまな条件がある。例えば、募集を開始するにあたり、証券取引委員会(SEC)に開示情報を登録する必要がある。また、資金を速やかに集めることができても、最低21日は募集を終了することはできないなど時間がかかる。

米クラウドファンディングのガイドライン  IBT

10万ドル以上の収益を上げている人は、2つの選択肢、つまり、年収の10%または純資産の10%のうち、少ない方に投資が限定される。参加している企業は、このルールの下で、12か月間で最大100万ドル(1億円)を集めることができる。

キックスターターと、どこが違うのか?

インターネットを使って個人などから資金を募りプロジェクトを遂行させる「キックスターター」は、クラウドファンディングの構造と似て見える。法律制定者は、新しい投資ルールを切り開くよう刺激を受けているかもしれない。しかし、キックスターターとクラウドファンディングが提供するサービスは根本的に異なる。

キックスターターキャンペーンに参加すれば、何らかの報酬を手に入れることができる。それはシンプルなサンキューギフトかもしれないが、完全な機能を備えた最終製品かもしれない。だが、会社の株式を手に入れることはできない。キックスターターキャンペーンでは、株式は提供しない。

証券取引委員会(SEC)による新たなエクイティ・クラウドファンディングのルールの下で、一般投資家は一旦、企業内の関係者や、多額の資金管理者や、富裕層のために用意した株式を積み上げることができる。株式を購入した企業が軌道に乗った場合、その企業が創業初期に発行した株式で巨大な配当を獲得できる。

キックスターター(Kickstarter)とは2009年に設立された米国の民間営利企業で、クリエイティブなプロジェクトに向けて、クラウドファンディングによる資金調達を行う手段を提供している。キックスターターのプラットフォーム上でエクイティ・クラウドファンディングは許可されていないと述べたが、過去数年間で少なくとも数十社に上る同様な企業が、新たな市場を形成するために生まれた。その中には、スタートアップに投資をしたい人たちと、投資を受けたいスタートアップとを結びつける新しい形のクラウンドファンディングのプラットフォームである「ウィーファンダー(Wefunder)」や「ネクストシード(NextSeed)」、「スタートエンジン(StartEngine)」などがある。

リスクは何か?

多くの場合、スタートアップに投資するのは持ち金を捨てるのに近いものがある。

必ずしもすべてのスタートアップが成功するわけではない。実際、新たに立ち上げられた企業の大半が、少なくとも投資としては失敗に終わっていることが調査によって明らかになった。昨年行われたハーバード・ビジネス・スクールの研究によると、新しい企業の70~80%が投入された資本の返済に失敗していると発表された。勝算は抽選と同じというわけではないが、いずれにしてもあなたの望むとおりに収まるわけではない。

さらに悪いことに、いくつかの規制緩和によって、未熟な投資家を餌食(えじき)にするような土壌が形成されていると懸念される。「99%の投資家が採算がとれないことを証明している」と証券関連の弁護士であるアンドリュー・ストルトマン(Andrew Stoltmann)さんはニューヨーク・タイムズ紙に語って、「災難が待ち構えているプログラムである」と加えた。

論議の一部は、情報開示に関するものである。規定によると、若い企業が資金を獲得するために、潜在的な投資家に帳簿を開示する必要があるとしている。新興企業は12か月で最大100万ドルを集めることを望んでいる。そのためには、新たな投資家と、監査済み財務諸表を新興企業が共有する必要がある。もっと若い企業のために監査する必要がない例外が設けられているものの、情報開示によって問題を明らかにできる。

雇用創出率: 緑 エントリー(侵入)率: 黒  U.S. Census Bureau Get the data

重要なことは?

議会は新しい事業創出を促進するためにJOBS法を可決した。最新かつ活発なシリコンバレーのユニコーンへの定期的支援にもかかわらず、米国のビジネス部門は過去数十年間、決して豊かに成長してきたわけではない。

新事業が創出される割合は、過去40年の中でも最低水準あたりを低迷していると米国国勢調査局は発表した。スタートアップに関連した雇用創出の割合も同様に低下している。二元的な動向に対する非難によって、産業の過剰規制から巨大企業への集約化の傾向が高まった。

理由はともあれ、希望するところは、中小企業の資金調達を一般に開放することで、新たに立ち上げられた企業が収益を得るに至るまで支援することである。

「この規定によって、スタートアップや小規模企業が、大きくて新しい資金プールの可能性がある投資にアクセスできるようになるだろう。すなわち、初めて、普通の米国人がオンラインを通じて信頼できる起業家に投資できるようになった」と2012年にオバマ大統領はJOBS法に署名する際に述べた。

米国では16日、より多くの投資家が経済を再生してくれるように期待が高まった。

*この記事は、米国版 International Business Times の記事を日本向けに抄訳したものです。(原文 :OWEN DAVIS 記者「Equity Crowdfunding: You Don’t Have To Be A Millionaire To Be A Venture Capitalist Anymore」)