トルコが「事実上の大統領制」移行、EUとの関係悪化も

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トルコのエルドアン大統領

トルコのエルドアン大統領

ロイター

トルコでは、ダウトオール首相の辞任に伴い、エルドアン大統領の長年の側近であるユルドゥルム首相の新内閣が間もなく発足する。新政府の最優先課題は明らかだ。エルドアン大統領が悲願とする強い権限を持った大統領制の導入だ。

エルドアン大統領は22日、辞任を表明したダウトオール首相の後任に、20年来の側近で与党、公正発展党(AKP)を共に設立したユルドゥルム運輸海事通信相を指名した。

AKP幹部は、ユルドゥルム氏が新首相に指名されたことで、今後エルドアン大統領の方針に対する党内のわずかな抵抗も完全に排除されると指摘。新内閣の顔ぶれは、エルドアン大統領に忠実な人のみになるとの見方を示した。今後の政策には大統領の意向がこれまで以上に強く反映されるとみられる。

ある関係者は「トルコはエルドアン大統領の政策が確実に実行される『事実上の大統領制』の時代に突入した」と指摘。閣僚のうち5、6人が入れ替わるとの見方を示した。

一方、大統領への権力集中を警戒する声もある。エルドアン大統領が2014年に就任して以降、大統領侮辱罪の立件は1800件に達している。大統領の政策に反対する新聞社は閉鎖され、政権を批判する学者やジャーナリストの摘発が相次いでいる。

<難民問題でEUとの関係悪化も>

欧州議会のシュルツ議長は23日、エルドアン大統領の権力拡大を警戒するコメントを発表。欧州連合(EU)の加盟交渉を進めるトルコが「欧州の価値観から大きく逸脱している」と指摘。「エルドアン大統領下でトルコは独裁的な国への道を進んでいる」と批判した。

議長は、EUへの難民流入抑制の見返りとしてトルコ国民へビザ免除措置を与える合意について、エルドアン大統領が断固として拒否している反テロ法改正など、トルコ側が全ての条件が満たさない限り交渉を始めない方針を示した。

ドイツのメルケル首相は23日、トルコのイスタンブールで開いた「世界人道サミット」に合わせ、エルドアン大統領と会談した。

首相は、クルド系野党を標的にしたとされる国会議員の不逮捕特権剥奪問題に「深い懸念」を表明。首脳会談後記者団に対して、「トルコには司法制度やメディアの独立、強い議会が必要であると伝えた」と語った。

一方、エルドアン大統領の経済顧問は、難民流入の抑制に関するEUとの合意撤回も辞さない考えを表明。難民問題をめぐり、EU・トルコの協力関係が悪化する恐れが強まった。

<憲法改正目指す>

エルドアン大統領は、大統領制移行に向けた憲法改正を問う国民投票の実施を目指している。それには、国会議員(550人)中少なくとも330人の賛成と、AKP内の確固たる支持が必要。

大統領の権限強化に否定的だったダウトオール氏が辞任し、より忠実なユルドゥルムが首相に就くことで、党内の結束は強まるとみられる。あるAKP幹部は「これで憲法改正への道が開けた」と語った。

一方、憲法改正をどの程度国民が支持しているかは不明。IPSOSの最近の世論調査によると、憲法改正の賛成派は36%にとどまっている。一方、ORCの調査によると、賛成派は58%と半数を上回っている。

調査会社メトロポールのディレクター、Ozer Sencar氏は「憲法は改正されていないものの、事実上の独裁的な支配は始まった」と述べた。