米利上げの憶測広がる――6月か? それとも英国のEU国民投票見据えて7月か?

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ジャネット・イエレン氏
米連邦準備制度(FRB)のジャネット・イエレン議長(2016年3月16日撮影) ロイター

米連邦準備制度理事会(FRB)は、来月に利上げする可能性を肯定した。米国経済の見通しが明るいと考えてのことである。

しかし、FRBが好む数値(雇用者数がインフレ)は芳しくない。失業率は5%と健全であるが、6か月間動きがない。パートタイム雇用のような調整労働力も停滞してきた。企業収益は3四半期連続で低下し、世界需要は不透明である。

米国みずほ証券のチーフエコノミストであるスティーブン・リッチウト氏は、「FRBは、経済について、実情よりもずっと楽観的な予想をしていた。ウォール街が想定する世界と現実の間には、差異が潜み続けている」と述べた。

FRBメンバーたちは今週、6月に利上げが実施される可能性を高めるような発言をした。フィラデルフィア連邦準備銀行総裁のパトリック・ハーカー(Patrick Harker)氏は23日、「経済に対する見解が、実際の数値と異なった場合、私は立ち止まるだろう。しかし私は、6月の利上げは適切だと考えている」と述べた。

セントルイス連邦準備銀行総裁のジェームズ・ブラード(James Bullard)氏は「6月を前もって判断する理由はない」とCNBCでコメントした。同氏は、FRBが来月にベンチマーク金利を0.5%から0.75%に引き上げるかもしれないと考えている。

投資家たちの期待は高まっている。4月、FRBが金融引き締めを行う可能性はわずか4%であると言われていた。しかし、現在では、市場における3人に1人はFRBが行動するであろうと考えている。

FRBメンバー全員の意見が同じというわけではない。アトランタ連邦準備銀行のデニス・ロックハート(Dennis Lockhart)総裁は今月初め、「市場は私よりも悲観的である」と述べた。

28日に発表された第1四半期の米GDP改定値は、FRBが利上げをする可能性を高めたかもしれない。速報値は0.5%であったが、0.8%へ上方修正された(市場では0.9%と予想されていた)。

GDP成長率について見識が深いリッチウト氏は、「0.5%という数字は理に適っていなかった」と述べた。同氏は、GDP成長率が1%まで引き上げられるべきであると考えていた。

第1四半期については、在庫と個人消費が予想より良かった。しかし、そのことは事業環境が業界によってムラがあることを意味する。

ジェローム・レビー予測センターのシニアエコノミスト、ロバート・キング(Robert King)氏は、「多くのビジネスでは収益面が良いようにみえる。しかしそれは在庫過多かもしれない。在庫は棚卸しされなければならない」と解説した。

商品価格の乱高下は、米商務省による在庫レベルの予想を複雑にした。つまりは、GDP成長率の計算も複雑になった。先行きの見通しは依然不透明である。キング氏は、 製造業が予想を下回ったことを指摘し、「私たちは、在庫を目の当たりにしている。米国経済にはとても深刻な弱さがいくつかあるかもしれない」と述べた。

しかし、FRBは景気を周縁的な事柄と考え、インフレと雇用に集中する傾向がある。一方、企業収益は6四半期連続で下落した。景気後退期以外の下落としては過去最長である。

それでも、年初に金融市場を乱打した逆風は過ぎ去りつつある。ドル高は緩和し、輸出産業への後押しとなった。また1月と2月、雇用水準は概ね堅調に推移した。

コモンウェルス・フィナンシャル・ネットワーク(Commonwealth Financial Network)の投資部門における代表を務めるブラッド・マクミラン(Brad McMillan)氏は、「私たちは折り返し地点を過ぎた」と述べ、堅調な個人消費と賃金上昇の加速を例として示した。同氏は、「つまり、これから今年のうちに、ポジティブな出来事がいくつか起こるかもしれない」と説明した。

マクミラン氏は、利上げの可能性は6月よりも7月のほうが高いと考えている。英国でEUから脱退を問う国民投票が実施されるためである。同氏は、「FRBは利上げをしたいという気持ちがとても強いだろう。しかし、6月頃は不透明が強すぎる。もう1か月待つのが理に適っている」と述べた。

6月に利上げをする経済的正当性があるとは言い切れない。とはいえ、FRBが年4回を見込む利上げの第一弾が行われる可能性はある。リッチウト氏は、「FRBは、昨年の6月から、利率を正常化したがっていた。今、彼らは理屈を見つけた」と述べた。

*この記事は米国版International Business Timesの記事を日本向けに抄訳したものです。(原文記事:OWEN DAVIS記者「Fed Officials Are Signaling A June Rate Hike, But Not Everyone Is Convinced」)