ゴリラ射殺:シンシナティ動物園「ハランベ」対応に波紋

  on
ニシローランドゴリラの「ハランベ」
射殺されたオスのニシローランドゴリラ「ハランベ」17歳、シンシナティ動物園から資料として日付のない写真が提供された。 ロイター/シンシナティ動物園

5月28日、米オハイオ州シンシナティ動物園がゴリラ舎に入り込んだ4歳の男の子を救うために絶滅危惧種のゴリラ1頭を射殺した。動物園の対応を巡り、米国内で波紋が広がっている。男の子は柵や鉄線をくぐってゴリラ舎に入り込んだ。インターネットでは動物園の対応を非難する声が広がり、子どもから目を離した保護者の責任を問う声も挙がっている。インターネットの嘆願サイトには多くの意見が寄せられた。

射殺されたのは絶滅危惧種とされるオスのニシローランドゴリラ「ハランベ(Harambe)」17歳、体重約200キロである。事件を目撃した人によって撮影されたビデオには、ハランべが男の子の前に立ち、ゴリラ舎の中にある堀の水辺で男の子を引きずり回す様子が撮影されていた。事件発生から10分後、動物園の対応チームが、事態は人命にかかわると判断し、ハランベをライフル銃で射殺した。その後、男の子は病院に搬送された。怪我はしているものの、命に別状はなかった。男の子は攻撃はされていなかったとの見方も出ている。

ハランベと男の子を撮影したビデオより。  IBT

セイン・メイナード(Thane Maynard)園長は記者会見で、動物園の対応について「男の子は攻撃は受けていなかったが、あらゆる事態が発生する可能性があった。確かに危険だった」と語り、対応の正当性を主張した。

また、メイナード園長は、この状況下では、精神安定剤(トランキライザー)は効果が出るまでに時間がかかりすぎるため使用できなかったと説明した。さらに、メイナード園長は、男の子の命を救うために動物園は正しい選択をしたと述べる一方で、動物園のすべてのスタッフが、希少種を失ったことに深い悲しみを感じていると加えた。

少年の家族は29日に声明を発表した。その中で「シンシナティ動物園スタッフによる迅速な行動に心から感謝します。これが非常に困難な決断だったことも、ゴリラの死を悲しんでいることも承知しています」と述べたとニューヨーク・デイリー・ニュースが報じた。

しかし、この動きは、ソーシャルメディア上で厳しい批判を集めた。Change.orgは、様々なキャンペーンへのオンライン署名収集を行うウェブサイトである。Change.orgではこの件に関して既に7つの嘆願サイトが作られ、2日間で10万を超す署名が集まった。そのほとんどが男の子の両親が子どもから目を離したために事件が発生したとして、処罰を求めるものだった。これらの嘆願サイトの中で二つのサイトには、ハランベ射殺に対して、動物園の従業員を処罰するように求めたものや、動物園のボイコットを望むものもあった。また、少なくとも2つのフェイスブックのページで、責任者に代価を求めるべきだという意見に約3万の「賛成」が寄せられた。

より激しい反響がツイッターで展開された。

「ゴリラが子どもを守っているように見える。本当に射殺する必要はあったのか」「子どもの母親が不注意だった」などのツイッターが寄せられた。  ツイッター ゴリラ射殺についてのツイッターより。  ツイッター 両親や子どもに対するツイッターが寄せられた。  ツイッター

雄のゴリラ「ハランベ」は、射殺された前日の27日に17歳の誕生日を迎えたばかりだった。テキサス州ブラウンズビルにあるグラディス・ポーター動物園からやってきた。誕生以来ハランベを飼育してきたジェリー・ストーンズ(Jerry Stones)飼育員は、ニューヨークデイリーニュースに「私の人生で特別な存在だった。ハランベは私の心であり家族の一員を失ったようなものだ」と語った。

2頭のメスゴリラとの間でハランベは父親として一層の活躍が期待されていた。この事件が発生したとき、2頭のメスゴリラは動物園の係員によって連れ出されていたため柵の中にはいなかった。その間にハランベが男の子に近づいた。

29日、動物園は一般公開されたが、ゴリラの展示は無期限に閉鎖されたままである。

30年前、当時5歳だったレバン・メリット(Levan Merritt)さんが、フランスと英国の間に位置するチャンネル諸島のジャージー島にあるジャージー動物園で、ゴリラの柵の中に落ちた事件が思い出される。男の子が飼育係によって救助されるまで、「ジャンボ」という名前のオスのゴリラが、他のゴリラからメリットさんを守った。10年後、別の事件では、シカゴ郊外ブルックフィールド動物園で、ビンティ・ジュア(Binti Jua)というメスのゴリラが、囲いの中に落ちた3歳の子どもを守った。

成長したオスのニシローランドゴリラはその背中にある独特の毛並みのため「シルバーバック」と呼ば​​れる。2007年以降、絶滅危惧種として登録され、わずか10万頭のみが生息していると世界自然保護基金(WWF)は推計する。野生種のほとんどはコンゴ共和国の森林にいると見られている。

*この記事は、米国版 International Business Times の記事を日本向けに抄訳したものです。(原文: HIMANSHU GOENKA 記者「Gorilla Killing: Harambe’s Shooting In Cincinnati Zoo Triggers Backlash」)