パキスタンで多発するレイプ犯罪 インドよりさらに深刻

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ムフタール・マイさん(Mukhtar Mai)

パキスタンで最も有名なレイプ被害者はムフタール・マイさんだ。

ロイター

 インドの首都デリーで昨年12月に、医学生の女性(23)の集団レイプ事件が発生した(被害者の女性はその後死亡した)。この事件を契機に、インド国内では性犯罪への罰則強化などを訴える大規模な抗議デモが広がりを見せた。

 しかしレイプは、インドの隣国パキスタンでさらに深刻な問題となっている。

 パキスタン(正式名称:パキスタン・イスラム共和国)は19世紀に英領インドとしてインドと同一の政府下に置かれており、独立運動も本来は同一のものであった。だがイスラム教徒とヒンドゥー教徒との対立が深まり、最終的にはヒンドゥー教徒地域がインドとして、イスラム教徒地域がパキスタンとして分離独立(1947年)した。

 レイプがパキスタン全土で多発している理由は、宗教や民族的理由、結婚を断られた復讐、単に欲望を満たすための残虐行為など様々だ。

 絶え間ない恐怖に加えて、レイプを取り巻く社会的不名誉が、被害者やその家族まで自殺に追いやるケースも多い。家庭内暴力を受けたり、婚前・婚外交渉をした女性を一族の名誉を守るためとして父親や男兄弟が殺害するという習慣も、一部地域では今だに存在する。また家族の名誉を守るために、被害者が加害者と強制的に結婚させられる場合もあるという。

 デリーの女性集団レイプ殺人事件が大きく報じられた直後に、パキスタンの9歳の少女が誘拐され、3人の男に集団レイプされた。この事件では、少女の母親が容疑者への恐怖にひるむことなく直ちに地元警察に通報したため、まもなく犯人は逮捕された。しかし少女は依然として重態である。

 この残虐な事件のわずか数週間後に、6歳のヒンドゥー教の少女がパキスタン南部のシンド地方で集団レイプされる事件も発生した。

 パキスタンではレイプは頻繁に発生しているが、実際には、ほとんど報告されない。このためパキスタンでレイプ加害者が逮捕されるのは稀であり、有罪となり投獄されるのはさらに少ない。

 おそらくパキスタンで最も有名なレイプ被害者は、ムフタール・マイさん(Mukhtar Mai)だろう。マイさんは、2002年に男性14人により集団レイプを受けた。

 マイさんの場合、マイさんの弟が対立する部族の女性と不倫関係を持ったというぬれ衣を着せられたことから、村の評議会の決定で部族間の争いを収めるため、マイさんが公衆の面前で集団レイプという処罰を受けたのだ。

 マイさんはパンジャブ州の村に暮らすの非識字の女性だが、残忍な性的暴行に耐え、裁判所を通じて正義を求め、国からは完全に無視の象徴となっていた性犯罪を訴えた。保守的な家父長制度のパキスタン社会では、レイプの被害者は家族から見捨てられ、自殺することも多いうえ、将来に結婚できる見込みもないという環境にも関わらず、彼女は声を上げた。

 法廷で男たちはマイさんを逆に攻撃した。そんな中、国際人権保護団体がこの問題をとりあげ、国際的な支援が広がり、彼女は逆転有罪を勝ち取った。このような強力な国際圧力が無ければ、恐らく男たちは全員無罪になったと言われている。

 「全世界が私と一緒だと感じていた。しかし、それでも私はなかなか正義を手に入れられなかった」とマイさんは米メディアのグローバル・ポスト誌に語った。マイさんは2005年に英ファッション雑誌グラマーのウーマン・オブ・ザ・イヤーに選ばれ、自叙伝も執筆した。

 彼女は現在パキスタン南部のパンジャブ地方に住み、裁判での和解金で小さな学校を建て、そこで一応幸せに生活している。しかしアルカイダなどのイスラム原理主義者たちがパキスタンで勢力を伸ばせば、彼女はいつアメリカなどの反イスラムの手先として報復されるかもしれないという恐怖はある。

 マイさんの事例にも関わらず、パキスタンで女性に対する性的暴力は衰えることなく続いている。政府の保守派の中には女性保護の法律改善に反対する動きもある。

 パキスタンにおける性的暴力に関するデータは、インドと同様に、大幅に過小報告されている。この2国に共通するのが、男性が大手を振って何世紀も続けてきた女性への残忍なレイプの存在である。

 フリージャーナリストのアイーシャ・ハサンさん(Ayesha Hasan)は「パキスタンでは、毎年約2,900人の女性がレイプされる。1日にほぼ8人が被害にあっている計算になる」とドイツの放送局ドイチェ・ヴェレに語った

 レイプが発生したことを証明するのは非常に困難である。いくつかのケースでは、裁判所は4人のイスラム教徒の男性目撃者の証言を要求した(このような事件では99.99%不可能である)。加えて、納得しがたい成り行きであるが、レイプ被害者の女性は頻繁に逮捕され投獄される。

 インド最大のポータルサイトRediff.comのレポートによると、パキスタン女性の90%が家庭内暴力(必ずしもレイプではない)の被害を受けているとしている。

 パキスタンの英字紙、エクスプレストリビューンのコラムニストによると「パキスタンでレイプや性的暴行に直面している女性の窮状は、時間のかかる裁判、賄賂、さらに暴力を加えるという脅迫、『恥』を避けるために被害者家族が圧力をかけるといった定番の事象に囲まれている」と書いている。

 ヒンドゥー教徒やキリスト教徒など宗教的少数派の女性は、性的暴行やレイプだけでなく、イスラム教へ強制的に転向させられることもあるという。インドを代表する英字紙のインディアン・エクスプレスは、児童の権利保護協会からの調査をあげて、2011年だけでもパキスタンの少数宗教から約2,000人の女性が「強制的にレイプや拷問、誘拐を通じてイスラム教に転向させられた」と報告している。

 また、「誘拐された女性を転向させるためによくとられる方法は、イスラム教徒のコミュニティ内での強制的な結婚だ」とアジア人権委員会は述べている。ボストン大学女性学教授のシャハラ・ハーリさん(Shahla Haeri)は、パキスタンではレイプは「時には慣行化されていて暗黙のうちに是認されてきた」と特徴づける。

 ジャーナリストのマヒーン・ウサミさんは(Maheen Usami)は、およそ2年前にエクスプレス・トリビューンのブログでパキスタンの厳しい現実を述べた。「女性の権利のための言論による抗議にもかかわらず、多くのパキスタン女性の『名誉』は奴隷やゴミとして扱われる。踏みつけられ、つばを吐きつけられ、言葉の上でも物理的にもゴミとして扱われる」とウサミさんは怒りをぶつけた。

 「イスラム社会に女性に対する尊敬の気持ちがあるなら、なぜ彼女たちの身の上にうんざりするほど多くの虐待が日々繰り返されているのか?」とウサミさんは述べた。

 この記事は、米国版 International Business Times の記事を日本向けに抄訳したものです。