海のシルクロード「インド洋」 陰りがある米国の覇権、次は中国か?

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オバマ政権は、中国とシンガポールに、イランへの経済制裁への例外を認めた。

ロイター

 インド洋において、依然として存在感がある米国。しかし、中国がインド洋の覇権を握りたがっていると考える専門家もいる。

 「海のシルクロード」とも呼ばれることがあるインド洋は、中東地域と経済成長を遂げつつあるアジア諸国を結ぶのに不可欠な航路である。中国、日本、そしてインドは湾岸諸国からの石油に大きく依存してきた。そして近年は、工業製品や食料の輸送、労働力の移動、エネルギー精製のプロセスにおいて、相互に依存関係にある。

 アジア地域と中東地域は、ヒト・モノ・アイディアを交換してきた。イスラムから東南アジアへと移動した流れもあったし、インドやスリランカの労働者が産油国へと働きに出ることもあった。また、イランとトルコ、中央アジアと中国西部は文化的な結びつきも強い。

 しかし、21世紀初頭、これらの結びつきはアメリカの権力の縮小によって、不安定なものとなりつつある。アラブ人とアジア人は、米国の権力と影響力が減少していくことを危惧している。

 今現在、米国は、インド洋において依然として存在感がある。他のどの国よりも、包括的なプログラムを実施している。米国だけが、自然災害やグローバル・コモンズたる地球環境の保護から、貿易や人道面まで、多岐にわたる議題に積極的に取り組んでいる。

 確かに、米国によるアジア地域の調整の仕方は、軍事力主導であるという批判もある。米国は、他の大切な利益を犠牲にしすぎているという声もある。しかし、米国のリーダーシップは激動の時代において不可欠だという見方もある。

 現在、アジア地域には、米国のようにすべてのサービスを提供できる超大国は存在していない。米国の力、存在、影響の大きさを測定するのは困難である。

 中国がインド洋の覇権を握りたがっていると考える専門家もいる。中国が、造船やインド洋近海の港湾建設に力を入れるのは商業目的である。しかし、大規模な投資の結果、いずれは軍事目的に使われると想定するのが道理かもしれない。

 政治的な混乱と、米国の失速を受けて、中国は中東地域における自国の存在意義を高めようとしている気配がある。イランとエジプトは、中国が特に意識している国であろう。

 イランは、中国のエネルギー上の重要なパートナーである。中国は、実利的な意味でも、信条的な意味でも、イランを政治的な混乱に陥れたくない。また、イランの核開発に際して、イランを孤立させようとする西洋の圧力にも屈したくないと考えている。

 エジプトについては、政治を不安定にさせることなく、社会的・経済的発展モデルを見つけるのを助けられると信じている。中国は、エジプトがトルコのように民主化の方向へ進み、西洋との連携を強化していくのを避けたいと考えている。

 確かに、米中関係は複雑で予測することが困難であり、民主化については大きな意見の相違がある。

 しかし両国とも、インド洋はグローバルな商取引のために不可欠な輸送路であると考えている。実際、中国の海洋活動の一部は、国際的な要請に応じるものであり、世界の問題解決に寄与している。例えば、反海賊オペレーションにも参加している。

 米中両国は、インド洋における貿易の安定、テロの防止、海賊の減少を望んでいる。そして、中東諸国が政治的・経済的に安定することを望んでいる。

 ※エレン・ライプソン(Ellen Laipson)氏は、非営利組織であり無党派のシンクタンク「スティムソン・センター(Stimson Center)」のCEOである。同シンクタンクは、世界の安全保障を研究している。

 *この記事は、米国版International Business Times の記事を日本向けに抄訳したものです。